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セベロドネツクの消耗戦 ウクライナ参謀本部の誤判断?

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ウクライナ軍はこれまで、

「押せば引き、引けば押す。」

という賢い戦術を採用。

ロシア軍に大きな人的 & 物質的な損失を被らせることに成功した。

ところがである。

そのウクライナ軍は

「今にも包囲されそうな」

セベロドネツクから撤退しないで、ロシア軍と消耗戦を展開している。

何故、これまでの戦術から大きく逸脱した行動に出たのだろう?

消耗戦とは?

消耗戦とは、どちらかの軍勢が明らかに優勢になることがなく、物資と兵士を大量に消耗していく戦闘を指す。

典型的な例が、第一次大戦の塹壕戦。

ドイツ軍と対峙しているフランス & 英軍は共に、日々10万人の戦死・戦傷者を出した。

頭がおかしい(としか思えない)ドイツ軍の将官は、この事態にいたくご満悦、

「このままいけば、人口で優るドイツが最後には勝つ。」

と状況を楽観していた。

狂喜さの点ではヒトラーも同じで、

「この戦争で100万人が死んでも、私の政策でその数倍の人口が増えた。全体としてみればプラスだ。」

と、毛沢東よりも10年以上も先に有名なセリフを言った(*1)。

このように消耗戦では物資と兵士を一気に消費するので、

“Materialschlacht”(物量戦)。

ともドイツでは言う。

大包囲戦の失敗

そもそもロシア軍は4月攻勢で、ウクライナ軍をドンバス地域で

「一網打尽」

にする大包囲戦を開始した。

これがうまくいかなかった。

少ない兵力を、

「これも欲しいし、あれも欲しい。」

と、ハリコフからオデッサまでに分散して軍を進めたのが原因だ。

5月中旬には作戦の失敗が明らかになった。

ここで

「やっと学んだ」

ロシア軍。

軍を不必要な地域から撤収すると、

「ルガンスク州全土の確保」

に向けて集中攻勢を開始した。

これがうまく行った。

プーチンの戦争開始以来、初めて空軍と陸軍が共同作戦を展開、前線のウクライナ軍に

「雨あられ!」

とミサイルと砲弾を降り注いだ。

流石のウクライナ軍も、ロシア軍の集中攻勢には歯が立たず、後退を仕入れられた。

結果としてルガンスクは、セベロドネツクを除き、ロシア軍に占領された。

セベロドネツクの消耗戦

ロシア軍がセベロドネツクを落とせばプーチンは、

「ルガンスクを完全に掌握した。」

と勝利宣言できる。

これまでお世辞にも、名前をあげることがなったロシア軍とその独裁者にとっては、この上ない名誉挽回のチャンス。

まさに

「イケイケドンドン」

で、ロシア軍はセベロドネツクに東、北、そして南の三方向から攻勢をかけた。

防戦一方のウクライナ軍は市内中心部を明け渡して、

「最後の陣地」

を築いていた郊外に撤退。

本来であれば攻勢をかけてくるロシア軍に野戦砲と対戦車弾で損害を与えると、撤退するのがこれまでのウクライナ軍。

ところがウクライナ軍は、

「包囲されるのも時間の問題」

と思われるセベロドネツクに3~4個旅団を派遣して、攻勢に出た。

これに驚いたのは、私だけではない。

ロシア軍はもっと驚いた。

兵士の数、武器の上をで圧倒的に劣勢で、制空権もない軍隊が攻勢に出るなど、日本軍のガダルカナル島での

「万歳突撃」

の二の舞だ(*2)。

が、当初ロシア軍はウクライナ軍に押し返され、

「セベロドネツクを半分取り戻した。」

とウクライナ軍は意気揚々。

が、ロシア軍が予備軍を投入して、ウクライナ軍をまたしても郊外にまで押し返した。

これがセベロドネツクの消耗戦だ。

消耗戦を行う利点・理由

消耗戦はどちらの側にも多大な損害が出る。

その割に

「取り分」

が少ないので、一見すると何も利点がない。

もっともそれは一般人の考え方。

ヒトラーやプーチンのような独裁者であれば、話は別。

だからプーチンは

「目先の勝利宣言」

のために、ロシア兵を大砲の餌食にする用意があった。

しかしウクライナ軍は何故、兵士の数、兵器の上で圧倒的な敵に対して消耗戦なんぞ、する気になったのか?

ウクライナ軍の、

「日々の約100名の戦死者」

は、あまりにも多すぎる。

我慢比べになれば、負けるのは目に見えている。

南シュレージエンの要害都市 ブレスラウ

1944年、怒涛のようにドイツ国境に向かい押し寄せるソビエト軍。

南シュレージエンの要害都市、ブレスラウを迂回して、進撃した。

「ベルリンまであと一息なのに、ここで兵力を無駄使いするなんてばからしい。」

というジューコフ将軍の賢い判断だ。

するとヒトラーは、

「ブレスラウがまだ失われていない限り、シュレージエンはまだ失われていないと国民に言える。」

と体裁を気にしていた。

ウクライナ参謀本部の誤判断?

ウクライナ参謀本部、おそらくはゼレンスキー大統領が同じことを考えた。

「セベロドネツクがまだ占領されていない限り、ルガンスク州はまだ失われていない。」

と国民に言える。

又、ウクライナ軍は将来の攻勢について考慮した可能性もある。

本来であれば、包囲される危険があるセベロドネツクから撤退、対岸のLyssytschanskで防衛したほうが遥かに楽。

が、将来攻勢に出る場合、危険な渡河作戦が必要になる。

多くの犠牲を払って渡河作戦を決行するなら、

「多少の犠牲を払ってもセベロドネツクを維持する。」

と参謀本部が考えたのかもしれない。

軍事作戦は、

「結果、オーライ」

なので、もしウクライナ軍がセベロドネツクを死守できれば、

「正しい判断だった。」

と歴史家が言うかもしれない。

が、戦術上はセベロドネツクの消耗戦は誤りだ。

ウクライナ軍はこの消耗戦で失われた戦力を回復するのに、半年かかる。

その間、ロシア軍が攻撃の手を緩めてくれるとも思えない。

6月攻勢はどうなった?

プーチンとロシア国民を除けば、誰もが期待していた

「ウクライナ軍の6月攻勢」

は、まだ始まっていない。

南部のケーソン州での局地的な攻勢を除けば。

その理由は簡単。

西側諸国が約束した兵器が届いていないからだ。

質問
米国の777りゅう弾砲は?

 

確かに届いたのだが、こちらも性能が大きく限られている。

米軍がアフガニスタンで使用している時と、

ウクライナ軍の使用時を見比べて欲しい。

ウクライナ軍に提供されたりゅう弾砲では、照準装置の一部が欠けている。

この榴弾砲はGPSで誘導された特殊な弾薬を使う。

だからGPS装置が欠かせない。

これがないと精度ががっくり落ちる。

あの米国でさえも、

「ウクライナが勝っては困る。」

と思っているようだ。

長距離ロケット HIMARS

長距離ロケット HIMARS 

ドンバスで劣勢になったウクライナ軍、西側に長距離ミサイルシステムを要求した。

バイデン大統領の答えは、

“No”

だった。

これが米国政府の

「ウクライナ支援」

の本当の姿だ。

もっともすぐ翌日には、側近に説かれて意見を変えた。

すると西側、とりわけ日本では、

「これで戦局が変わる。」

と、まるで真珠湾攻撃のような報道。

米国が提供するのはたったの4台だ(*3)。

焼け石に水。

4台のロケットシステムが戦局を変えるなんぞ、夢また夢(*4)。

おまけにウクライナ兵の訓練に4週間、武器の輸送と配置に2週間かかる。

たった4台のロケットシステムが実戦に導入されるのは、8月になる。

ドイツ 最新鋭の対空防衛システムを提供!

そうこうするうちに、

“Der Zauderer”(迷える者)

のあだ名がついたドイツのショルツ首相が、

「ウクライナにドイツが持つ最新の対空防衛システムを提供する!」

と言った。

ドイツと言えば、これまで約束した

「重火器」

を何ひとつ、ウクライナに提供していない。

そのドイツが最新の対空防衛システムを提供する?

まるで、

「仮想通貨に投資すれば、自営業者として持続化給付金を申請できる!」

という支離滅裂な理屈で何も知らない無垢な大学生を騙したような、

「ウマイ話」

だ。

「そうなんですか?」

と、安直に納得するわけにはいかない。

なのに疑う事を知らない日本人は、

「ドイツが最新の対空火器をウクライナに提供する!」

と、まるで東郷元帥がバルチック艦隊を沈めたようなお祝い騒ぎ。

日本人は日本独特の学校教育のせいで、疑う事を知らない。

ドイツが持つ最新の対空防衛システム Iris-Tとは?

ショルツ首相の言う、

「ドイツが持つ最新の対空防衛システム」

とは

“Iris-T”

ミサイルの事。

参照 : Iris-T

 

製造元のホームページに説明されている通り、空対空ミサイルだ。

赤外線レーダーは

「ミリ波」

で目的を追尾するので精度が高く、世界で一番進化した空対空ミサイルとも言われている。

ドイツ軍の戦闘機が搭載している。

あまりに性能がいいので、

「改良型」

として地対空モデルもある。

射程距離は35km、最高高度20Km。

敵の戦闘機は勿論、巡行ミサイルも標的にできるとされている。

ドイツの次の嘘

性能だけ聞けば、

「それは素晴らしい!」

「これで戦局が変わる。」

と、純真無垢な日本人が喜ぶのもわからないではない。

問題はこの”Iris-T”、とりわけ地対空ミサイルは、何処にも配備されていない事。

これから政府が国会で法案を出して、予算を議論するところから始まる。

数か月後、国家で予算案が通ると製造元に注文を出す。

戦争体制にない製造元は、1年に20基も注文がくれば、

「やった!」

と大喜び。

1~2年かけて、製品を納入する。

ドイツ政府から注文が来て、ドイツが持つ最新の対空防衛システムがウクライナに届けられる頃には、

「ソビエト共和国ウクライナ」

になっている。

これでは意味がない。

もしウクライナ全土をロシアの攻撃から守るなら、数万基が必要だ。

そんな数のミサイルを生産する能力はない。

なんでドイツ政府は毎回、こんな見え透いた嘘をつくのだろう。

注釈 – セベロドネツクの消耗戦

*1    毛沢東はフルシチョフ書記長との会談で、「核兵器で100万人が殺されても、また次の100万人を投入するだけの事。恐れるに足らず。」と豪語した。

*2    ボコボコに叩かれて、命からがら撤退しました。

*3   ドイツも長距離ロケットを4台提供すると発表した!が、翌日、3台に減らした。プーチンへの配慮の為だ。情けない、、。

*4    ドイツ軍が第二次大戦中に開発したキングタイガー戦車。素晴らしい戦車だが、製造台数はわずかに500台+。T-34の2万台には叶わなかった。

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執筆者:

nishi

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