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ドイツ海軍 汚職疑惑で非難の集中砲火に遭う – Gorch Fock

投稿日:2019年4月9日 更新日:


問題になったドイツ海軍の練習帆船 Gorch Fock

日本ほどではないが、ドイツ軍も伝統を大事にする傾向がある。両方の軍隊、威張れる過去があるわけでないが、伝統を新兵に押し付けることである種の価値観を創出しようとしている。

するとその価値観の中で育てられた兵隊は、この伝統を次いでいくことに熱心で、その伝統に意味があるのか考えない。部隊内の新兵いじめが、世代が変わっても受け継がれていくのがいい例だ。稀に伝統を重んじない輩がいても、「過去70年もやってきたのだ。それをお前が終わらせるのか」と、論争に終止符を打つ。

このような慣習がどんな悪影響を及ぼすか、まさにパレードのような事件が起きた。それがドイツ海軍の練習帆船、”Gorch-Fock”に関する汚職問題だ。

Gorch Fock とは?

ゴルヒホックはドイツ帝国海軍で、士官候補生の練習船として使用された帆船だ。

参照元 : Wikipedia

朝鮮戦争がきっかけになり、ドイツ軍の再軍備が始まると、かって帝国海軍で勤務して(生き延びた)士官が再び採用された。彼らの頭にあったのは、伝統を守ること。海軍は「ゴルヒ フォックを再び海軍士官の練習船にする。」と決定、初代ゴルヒ フォックを建造した造船所に建造を委託した。

以来、60年以上に渡って海軍士官候補生の練習帆船として利用されていた。この時代に帆船を練習船として使用するなど、あの自衛隊でも有り得ない慣習だが、伝統は守られなければならなかった。

しかし全く批判がなかったわけではない。今の時点に帆船を練習船として使用することの意義を問う声は大きかった。さらにはこの船の安全性が度々問題になった。この帆船に乗って練習をしていた女性士官候補生が、マストから転落して死亡した。

参照元 : Welt

Ausbilder(意地悪な教官)が、「マストに登らないと、士官にさせないぞ!」などと脅した結果の事故だった。事故後、船内では士官候補生と教官の仲が完全に悪化、船は訓練をやめてドイツに戻るうように命じられた。船長はその後、練習船の船長から解任された。

死亡事故はそれだけではない。訓練に批判的な女性士官候補生が航海中、行方不明になった。遺族は「殺人だ。」と警察に届け出たが、海軍は「事故」として処理した。

参照元 : Spiegel

そのいわくにつきまとわれた帆船が、60年もの使用でボロボロになった。外装には穴が空き、骨組みはボロボロに錆びていた。この機会に問題の多い帆船を廃棄処分するか、どこかに展示して、もっと意味のある練習船を調達すべきだったが、ここでも伝統が勝った。ドイツ海軍は、ボロボロになった帆船を修理に出した。

爆発した修理費用

ドイツ海軍はゴルヒ フォックの修繕期間を17週間、費用を1000万ユーロと見積もっていた。ところが造船所に修理に出すと、修繕費は1億3500万ユーロと13倍+に爆発した。そして修理開始から3年経っても、修理は終わらなかった。

参照元 : NDR

民間企業ならこの時点で計画にストップがかかるが、そこは海軍。この修繕案にハンコを押して(ドイツだからサインです。)しまった!これが年次報告書で報告されると、”der Rechnungshof”(税金の無駄使いを監視する機関)がこの修繕費の爆発を発見して、ドイツ海軍のだらしない管理を非難した。

汚職疑惑に発展

この機関は過去、何度も政府の失態を暴露しており、その発表はドイツでは重みを持っている。この発表によりドイツの各メデイアは、日本のメデイアが芸人の浮気の噂にとびつくように、この批判の是非を洗い始めた。すると出てくるわ、出てくるわ、目も覆いたくなるような事実が出てきた。

ことの発端は北ドイツに計画中の、250万ユーロの建設プロジェクト。投資家を集めて建設計画を進めていたのだが、土壇場になって投資家が船から下りた。こうしてこの計画は風前の灯になり、このプロジェクトの責任者は破産に直面した。

困り困ってこの責任者、かっての知り合いである造船所職員に、この話を持ちかけた。知り合いが、「助けてくれないと、破産する。」と語ると、職員は人もうらやむ低金利でお金を貸してやることにした。

問題なのはこの職員。億万長者でもなければ、そんなクレジットを出す立場にもない。しかし彼の職務は人も羨むドイツ海軍の調達局の査定室長だった。彼が調達、修繕にかかる額を決めると、防衛省がこれを認可するので、ほぼ無尽蔵の資金源を自由にすることができた。

この立場を利用して知り合いにクレジットを与え、必要な金は修繕費に上乗せしていたことが推測された。

ドイツ海軍 非難の集中砲火に遭う

ゴルヒ フォックの修繕費で大きな非難にさらされていたドイツ海軍、このニュースが各紙で報道されると、四面楚歌、非難の集中砲火に遭った。ここまでくると下手ないい訳は火に油を注ぐと考えた国防省、珍しく素直に謝りを認めた。

参照元 : ZDF

問題がここまでくると、国防大臣の責任問題にも発展する。大臣は、「新しい船を買うより、修繕したほうが安い。」とこれまで何度も国防省の決定を正当化していたからだ。どころが現状では、新しい船を作ったほうがはるかに安かった。

が国防大臣は、「そのような報告書が上がっていた(ので私には責任がない。)」で、まんまと逃げおおせた。部下の責任にするのは、ドイツでも日本でも同じである。

造船所倒産

ドイツ海軍の悪夢は、まだまだ終わらなかった。今度はゴルヒ フォックの修繕を委託されていた造船所が倒産した!

参照元 : ntv

ドイツ海軍はすでに7000万ユーロもの大金をこの造船所に払っているが、ゴルヒ フォックは解体された状態で修繕が止まっている。帆船の状態を確認した海軍は、修繕はほとんどされていないことをむなしく確認した。造船所が資金難に苦しんでおり、ドイツ軍が払った7000万ユーロもの金は修繕にではなく、同社の債務を払うために使われたようだった。

こうして7000万ユーロもの金は、無駄になった。今度こそドイツ海軍は伝統の束縛から抜け出して、ゴルヒ フォックを廃船にする勇気を見つけてもらいたい。

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執筆者:

nishi

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