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2025年総選挙 予想通りの勝者と敗者?

投稿日:2025年2月24日 更新日:

2025年総選挙 予想通りの勝者と敗者

2025年2月23日、ドイツで総選挙があった。

もっとも勝者と敗者は予想(世論調査)通り。

ある意味、退屈な選挙だった、、

問題は日本の

「極右政党の躍進!」

という報道。

そんな偏った報道を正すため、ドイツの達人が正しい2025年総選挙の選挙結果を解説します。

総選挙のテーマ

今回の総選挙の

「メインテーマ」

  • 移民問題
  • 停滞するドイツ経済

です。

その下にある

「サブテーマ」

  • 物価高
  • ロシアのウクライナ侵攻
  • 慢性的なアパート不足

大きな政党と極右はメインテーマに集中した。

小さな政党は国民民主党のように、

「既成政党があまりテーマにしないサブテーマ」

を選挙公約に上げた。

2025年総選挙 予想通りの勝者と敗者?

各党の得票率

抜粋元 : tagesschau.de

 

まずは総選挙結果から紹介します。

御覧の通り第一党になったのは、CDU/CSUです。

日本の大手メデイアは

「CDU/CSUはドイツ総選挙の勝利者!」

と言ってました。

質問
何が不満なの?

 

CDU/CSUのこの選挙結果、

「過去2番目に悪い選挙結果」

なんです。

私に言わせれば

「敗者の一人」

です。

さらに!

そもそも選挙前の世論調査では

「毎回30%以上」

あったんです。

なのに極右と組んで国会で

「移民法の改正」

を試みて失敗。

総選挙戦の新たな争点 移民問題

これが原因で

「2%」

もの得票率を失いました。

極右政党第二党に

今回、極右政党は総選挙で

「第二の政党」

に躍進。

その得票率が示す通り、極右政党に投票するのは、

「頭の悪いスキンヘッド」

だけではありません。

既存政党にがっかりした

「保守層」

も、極右政党に投票します。

何故か、お金持ちが少なくない。

でも一番の

「票田」

は、生活保護を受けている社会的弱者です。

彼らは

「不満の意味」

を込めて、極右政党に投票します。

この為、

「経済発展から取り残された東ドイツ地域」

では、得票率が30%に達して第一党です。

そう、

日本の低取得層は選挙に行きませんが、ドイツの低所得者は投票に行きます。

 

さもなきゃ極右が、ここまで得票率を伸ばすことはなかったです。

ちなみに2025年総選挙の投票率はなんと84%。

日本はたったの55%。

これが極右政党の躍進に一役買った。

左翼政党の復活

もうひとりの勝者は左翼政党。

地方選挙では

「左翼政党の地盤」

の東ドイツで大敗を喫し、州議会の議席は

「片手で数えられる数」

にまで減少。

党首は引責辞任。

そこで空席になった党首を

「公募」

しており、

「左翼政党はもう終わった。」

と誰もが思ってました。

ところが得票率を先回から伸ばして8.7%。

“Hut ab.!”(敬意)

勝利に貢献したのは、真ん中で一番喜んでいる

「入れ墨だらけの女性」

です。


彼女は空席になった党首の席に治まったReichinnek女史。

TikTokを利用して

「選挙に関心のない若年層」

のハートをとらえたんです。

そもそも

「Z世代」

は、左翼政党の選挙プログラムさえ読んでない。

にも拘わらず、若者のハートをがっしり掴み、投票所まで行かせたのは彼女の手柄です。

社会民主党 過去最低の得票率

一番の敗者はいわずもがな、社会民主党だ。

わずか16.5%の得票率。

これは

「党の結成以来、最悪の結果」

です。

すなわち!

社会民主党は

「ビスマルクの時代」

からある党なので、

ヒトラーが首相になった時の総選挙の得票率よりも悪い数字です。

 

理由はここで何度も解説している通り、

極右政党 AfD 躍進中! その原因は何所(誰)に?

仏頂面のシュルツ首相。

党内からは、

「人気のある国防大臣が出るべきだ!」

との声があがったが、

「俺に任せておけ!」

と出陣。

神風を待ったが、

「そよ」

さえふかなかった。

自意識過剰で大敗を喫する前線司令官のようなもの。

Auf Wiedersehen FDP

今回の総選挙で

「ざまあみろ!」

と思ったのはFDPが

「5%の最低得票率」

に達せず、国会から姿を消すこと。

FDPはお金持ちを支持層にする政党だ。

しかし財務大臣に就いたら、

「お金持ちの為の財務大臣」

ではなく、

「ドイツの財務大臣」

として判断を下すべきだ。

これができなかった。

お金持ちを優遇するために、信号政権を破綻に追いやった

信号政権 遂に崩壊 悪者は誰だ!?

ちょうど先の岸田首相が、

「なにかあれば毎回、広島で国際会議を開催」

したのと同じ。

岸田(前)首相が

「広島の首相」

ならいい。

日本国の首相なら、

「地元びいき」

はやめるべき。

これができないのが日本の首相、ひいてはFDPの政治家だ。

リントナー(前)財務大臣は総選挙での敗退を受けて、政治からの引退を発表。

これが今回の総選挙結果で、一番いいニュースだった。

BSW あと一歩で届かず

2024年、BSWという政党が結成された。

自我の塊であるSara Wagenknecht女史が左翼政党を離れ、結成した政党だ。

彼女のコメントは

「ウクライナ侵攻の責任は西側にある。」

「まずはウクライナへの武器提供を辞めろ!」

とプーチンの主張と100%一致。

日本の共産党よりもひどいです。

当初、

「破竹の快進撃」

でEU議会選挙、地方選挙で勝利。

総選挙でも勝利する筈だった。

が、Wagenknecht女史の独裁者のような振る舞いに我慢できず、党結成時の仲間が離脱。

常に仲違い。

結果、得票率は4.972%。

5%の壁に13万票届かなかった。

参照: mdr.de

 

Wagenknecht女史は、

「5%に届かなかったら責任を取る。」

と大見得を張ったので、ヤバイ。

総選挙後、

「票を盗まれた。」

と言い出して、訴えると言っている。

総選挙 連立政府の可能性

破綻した信号政権が

「見本」

を示した通り、3党からなる連立政権は

「喧嘩ばかり」

していて、必要な政策・改革が全く進まない。

今回も

小さな政党が林立すると、同じ羽目になる。

 

と大いに心配された。

とりわけCDUのメルツ党首の

「極右政党とのランデブー」

で落とした得票率は、国会での10議席に匹敵する。

「ヤバイ!」

と心配。

ところがここで神風が吹いた。

FDPとBSWが議席を取れなかった事で、

議席分配図

抜粋元 : tagesschau.de

 

CDU/CSU とSPDで過半数の議席を確保できることになった。

さらにいいのは、

「過半数の議席を取る他の可能性がない。」

という厳しい事実。

すなわち!

どんなに嫌でもCDU/CSU はSPDと同意する必要がある。

 

株式市場はこれを見て、

  • ユーロ高
  • 株高

に振れている。

DAXチャート

一体、誰がこんな結果を予想できたろう。

今回の総選挙、日本のメデイアが主張するほど

「悪いことばかり」

ではない。

用語の解説

「それは違うよ!」

という

“Kleinkrämer”(枝葉の事にこだわる人)

のために、お断りをしておこう。

ドイツには総選挙がない。

“Bundesrat”(上院)は州選挙で勝利した党が議席を確保する。

この為、総選挙という言葉を使ったが、今回選挙があったのは

“Bundestag”(下院)

のみ。

一部の日本のメデイアは正しく

「連邦議会選挙」

という正しい言葉を使用していた。

が、それでは

質問
連邦議会選挙って何よ?

 

となる。

そこで

「総選挙」

という言葉を使用しました。

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執筆者:

nishi

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