2025年2月23日、ドイツで総選挙があった。
もっとも勝者と敗者は予想(世論調査)通り。
ある意味、退屈な選挙だった、、
問題は日本の
「極右政党の躍進!」
という報道。
そんな偏った報道を正すため、ドイツの達人が正しい2025年総選挙の選挙結果を解説します。
この記事の目次
総選挙のテーマ
今回の総選挙の
「メインテーマ」
は
- 移民問題
- 停滞するドイツ経済
です。
その下にある
「サブテーマ」
は
- 物価高
- ロシアのウクライナ侵攻
- 慢性的なアパート不足
大きな政党と極右はメインテーマに集中した。
小さな政党は国民民主党のように、
「既成政党があまりテーマにしないサブテーマ」
を選挙公約に上げた。
2025年総選挙 予想通りの勝者と敗者?
まずは総選挙結果から紹介します。
御覧の通り第一党になったのは、CDU/CSUです。
日本の大手メデイアは
「CDU/CSUはドイツ総選挙の勝利者!」
と言ってました。
CDU/CSUのこの選挙結果、
「過去2番目に悪い選挙結果」
なんです。
私に言わせれば
「敗者の一人」
です。
さらに!
そもそも選挙前の世論調査では
「毎回30%以上」
あったんです。
なのに極右と組んで国会で
「移民法の改正」
を試みて失敗。
これが原因で
「2%」
もの得票率を失いました。
極右政党第二党に
今回、極右政党は総選挙で
「第二の政党」
に躍進。
その得票率が示す通り、極右政党に投票するのは、
「頭の悪いスキンヘッド」
だけではありません。
既存政党にがっかりした
「保守層」
も、極右政党に投票します。
何故か、お金持ちが少なくない。
でも一番の
「票田」
は、生活保護を受けている社会的弱者です。
彼らは
「不満の意味」
を込めて、極右政党に投票します。
この為、
「経済発展から取り残された東ドイツ地域」
では、得票率が30%に達して第一党です。
そう、
さもなきゃ極右が、ここまで得票率を伸ばすことはなかったです。
ちなみに2025年総選挙の投票率はなんと84%。
日本はたったの55%。
これが極右政党の躍進に一役買った。
左翼政党の復活
もうひとりの勝者は左翼政党。
地方選挙では
「左翼政党の地盤」
の東ドイツで大敗を喫し、州議会の議席は
「片手で数えられる数」
にまで減少。
党首は引責辞任。
そこで空席になった党首を
「公募」
しており、
「左翼政党はもう終わった。」
と誰もが思ってました。
ところが得票率を先回から伸ばして8.7%。
“Hut ab.!”(敬意)
勝利に貢献したのは、真ん中で一番喜んでいる
「入れ墨だらけの女性」
です。
彼女は空席になった党首の席に治まったReichinnek女史。
TikTokを利用して
「選挙に関心のない若年層」
のハートをとらえたんです。
そもそも
「Z世代」
は、左翼政党の選挙プログラムさえ読んでない。
にも拘わらず、若者のハートをがっしり掴み、投票所まで行かせたのは彼女の手柄です。
社会民主党 過去最低の得票率
一番の敗者はいわずもがな、社会民主党だ。
わずか16.5%の得票率。
これは
「党の結成以来、最悪の結果」
です。
すなわち!
社会民主党は
「ビスマルクの時代」
からある党なので、
理由はここで何度も解説している通り、
仏頂面のシュルツ首相。
党内からは、
「人気のある国防大臣が出るべきだ!」
との声があがったが、
「俺に任せておけ!」
と出陣。
神風を待ったが、
「そよ」
さえふかなかった。
自意識過剰で大敗を喫する前線司令官のようなもの。
Auf Wiedersehen FDP
今回の総選挙で
「ざまあみろ!」
と思ったのはFDPが
「5%の最低得票率」
に達せず、国会から姿を消すこと。
FDPはお金持ちを支持層にする政党だ。
しかし財務大臣に就いたら、
「お金持ちの為の財務大臣」
ではなく、
「ドイツの財務大臣」
として判断を下すべきだ。
これができなかった。
お金持ちを優遇するために、信号政権を破綻に追いやった。
ちょうど先の岸田首相が、
「なにかあれば毎回、広島で国際会議を開催」
したのと同じ。
岸田(前)首相が
「広島の首相」
ならいい。
日本国の首相なら、
「地元びいき」
はやめるべき。
これができないのが日本の首相、ひいてはFDPの政治家だ。
リントナー(前)財務大臣は総選挙での敗退を受けて、政治からの引退を発表。
これが今回の総選挙結果で、一番いいニュースだった。
BSW あと一歩で届かず
2024年、BSWという政党が結成された。
自我の塊であるSara Wagenknecht女史が左翼政党を離れ、結成した政党だ。
彼女のコメントは
「ウクライナ侵攻の責任は西側にある。」
「まずはウクライナへの武器提供を辞めろ!」
とプーチンの主張と100%一致。
日本の共産党よりもひどいです。
当初、
「破竹の快進撃」
でEU議会選挙、地方選挙で勝利。
総選挙でも勝利する筈だった。
が、Wagenknecht女史の独裁者のような振る舞いに我慢できず、党結成時の仲間が離脱。
常に仲違い。
結果、得票率は4.972%。
5%の壁に13万票届かなかった。
Wagenknecht女史は、
「5%に届かなかったら責任を取る。」
と大見得を張ったので、ヤバイ。
総選挙後、
「票を盗まれた。」
と言い出して、訴えると言っている。
総選挙 連立政府の可能性
破綻した信号政権が
「見本」
を示した通り、3党からなる連立政権は
「喧嘩ばかり」
していて、必要な政策・改革が全く進まない。
今回も
と大いに心配された。
とりわけCDUのメルツ党首の
「極右政党とのランデブー」
で落とした得票率は、国会での10議席に匹敵する。
「ヤバイ!」
と心配。
ところがここで神風が吹いた。
FDPとBSWが議席を取れなかった事で、
CDU/CSU とSPDで過半数の議席を確保できることになった。
さらにいいのは、
「過半数の議席を取る他の可能性がない。」
という厳しい事実。
すなわち!
株式市場はこれを見て、
- ユーロ高
- 株高
に振れている。
一体、誰がこんな結果を予想できたろう。
今回の総選挙、日本のメデイアが主張するほど
「悪いことばかり」
ではない。
用語の解説
「それは違うよ!」
という
“Kleinkrämer”(枝葉の事にこだわる人)
のために、お断りをしておこう。
ドイツには総選挙がない。
“Bundesrat”(上院)は州選挙で勝利した党が議席を確保する。
この為、総選挙という言葉を使ったが、今回選挙があったのは
“Bundestag”(下院)
のみ。
一部の日本のメデイアは正しく
「連邦議会選挙」
という正しい言葉を使用していた。
が、それでは
となる。
そこで
「総選挙」
という言葉を使用しました。
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