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ベルリン市議会選挙 赤い市庁舎陥落か?

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ベルリン市議会選挙 赤い市庁舎陥落か?

今回は裁判所から、

「やり直せ」

と命じられ、2023年2月12日に行われた

「やり直しベルリン市議会選挙」

について紹介します。

2021年ベルリン市議会選挙

ベルリンは伝統的に左派の町。

そのベルリンで、

「これまで負けたことがない。」

と威張っているのが社会民主党(以後、SPDと表記)。

実際、2021年9月26日に行われた市議会選挙では、SPDが第一党となった。

SPDの市長候補が、

「大学の卒論をコピーした。」

としてドクターの学位を剥奪され、大臣を辞職して

「ベルリン市長を目指します!」

という

「いわく付き候補」

だったにも関わらず。

お陰でギファイ女史はドクターのタイトルと大臣のお給料を失ったが、ベルリン市長として政治生命が繋がった。

ところがである。

ドイツらしいことに投票所で

「投票用紙が足りない!」

「この投票用紙、別の選挙のものじゃん!」

という超~間抜けな問題が発生。

危機管理能力の低い公務員が、

「あたふた」

しているともう18時。

まだ投票所に市民が列をなして待っているのに、

「ベルリン市議会選挙 結果速報」

が出て、勝者が発表されてしまった。

裁判所選挙のやり直しを命じる!

その選挙速報を受けて、ギファイ女史は勝利宣言した。

しかし選挙で負けた政党は、

「違法選挙だ!」

と主張した。

市民の多くもこれに同調、ベルリンの司法裁判所で

「ベルリン市議会選挙の正当性」

について争われることになった。

すでに緑の党や左翼政党を

「三党連立政権」

を率いていたSPDは

「不具合があった選挙区だけやり直せばいい。」

と主張したが、司法裁判所は

「ベルリン市議会選挙は、すべてやり直し。」

と判断した。

こうして2月14日、

「やり直し版ベルリン市議会選挙」

が行われることになった。

選挙前夜の政治状況

通常であれば、

「やり直し選挙」

でも大差ない結果になる。

ところが今回は通常ではなかった。

先回の選挙から

  • ロシアのウクライナ軍事侵攻
  • 10%を超えるインフレ

が起きているからだ。

そしてベルリンは左派の町。

質問
それが何の関係が?

 

大ありです。

日本のメデイアが好んで報道している

「今、ドイツで起きている武器供与に反対するデモ」

は、東ドイツ特有の名物なんです。

今度、そんな間抜けな報道があったら、注意して街の名前を聞いてください。

長くソビエトの支配下にあった為、東ドイツ国民は親ロ派。

その

「母なるロシア」

に敵対する国家に武器を送るなんぞ、あり得ない。

加えてインフレで生活が苦しくなると、

「政府が悪い。」

となる。

だから今、政権にある

  • SPD
  • 緑の党
  • FDP

は負け戦になる公算が高かった。

SPD歴史的な敗北 & CDU 大躍進

そしてベルリンの

「やり直し市議会選挙」

は予想していた通り,

  • SPD 歴史的な敗北
  • CDU 大躍進

という結果になった。

 

とりわけ野党のCDUが1年半前から10%も得票率を伸ばし、第一党に躍進したのは注目に値する。

CDUの市長候補ヴェーゲナー氏に魅力があったわけではなく、単に国政への不満の表れだった。

SPDは第一党の地位をCDUに分け渡したばかりか、連立与党の緑の党と同じ得票率。

わずかに52票の差で、かろうじて第二党に留まった。

そして連立政権内で支持層ばかり贔屓しているFDPはベルリン市民から

「総スカン」

をくらって、1議席も獲得できずに姿を消す事になった。

ベルリン 赤い市庁舎陥落か?

ベルリン 赤い市庁舎

ベルリンの象徴のひとつが、この赤い市庁舎。

SPDも赤色を党の色にしているので、まさに赤い市庁舎にぴったりだった。

そして戦後、常にSPDが市長を出してきた。

今度はどうなるだろう?

本来なら、第一党になったCDUが市長になる権利を有す。

なれば赤い市庁舎陥落となる。

戦後のドイツ史で初めてのことだ。

しかしそれは市議会で過半数の賛成票を得ることが条件だ。

その過半数を取るには、SPDか緑の党と組む必要がある。

が、SPDのギファイ女史がCDUと連立政権を組む可能性は低い。

質問
なんで?

 

ギファイ女史は

「ベルリン市長」

の椅子をCDUに譲ることになるからだ。

そうなると、

「負け戦の責任を取れ!」

と言われ、彼女の政治生命は終わる。

残るは緑の党との連立だが、緑の党とCDUの候補はウマが合わない。

政略結婚しても、長続きしそうにない。

結果として、ギファイ女史は選挙で大敗を喫したのに、緑の党と左翼政党と

「これまで通り」

政権運営ができる可能性が高い。

もっともそうなると市民から最も支持を受けた党が、

「蚊帳の外」

になるわけで、SPDの政権運営は難しくなる。

SPD まずはCDUと連立協議か?

という記事を書いた翌日、

「SPD まずはCDUと連立協議か?」

と報道された。

まだ協議をするだけで、連立政権を組むとは決まってない。

最大の得票率を取った政党を、

「最初の話し合い先に選ぶ」

というのは、

「民主主義の礼儀」

でもある。

果たしてギファイ女史は、短い期間だったとは言え、ベルリン市長の座を本当に譲る気があるのだろうか?

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執筆者:

nishi

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