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22世紀の社会モデル?- 条件なしの基本給

投稿日:2018年7月2日 更新日:


ゴミ箱を漁るドイツ人。

16年前、最後のSPD政権が構造改革を実施した。目的は肥大していた社会保障費を削ること。社会保障費は税込みのお給料として会社が払うで、社会保障費を削減すれば、会社の人件費が下がる。すると製品を安く製造でき、”made in Germany”の競争力が増す。このプランが効果を発揮するまで4年ほどかかり、構造改革を実施した政権は改革の成果を収穫する前に選挙で負けてしまった。

この遺産をタダで受け継いだのがメルケル政権で、好景気に支えられてかってない長期政権となった。しかし社会のひずみ、貧富の差は広がるばかりだ。街中を歩いていると、ゴミ箱を漁って金目の物を探しているドイツ人の姿を頻繁に見かけるようになった。日本の財務大臣の台詞を借りれば、「こんなに好景気なのに収入が上昇しないなんて、その人物の資質に問題があるんじゃないか。」ということになるが、本当の問題は別の所にある。

悪の根源 – 派遣

諸悪の根源は日本で言う派遣、ドイツでは”Leiharbeit”にある。メルセデスの組立工場で1日8時間働いても、派遣なので収入は生活保護の額を下回る。このような搾取を禁止するために派遣は18ヶ月まで、さらには9ヶ月目以降は正規社員と同じ給料を払うことが法律で決まっている。しかしその法律はご丁寧にも抜け穴、”Werkvertrag”を用意している。

この法律は企業が仕事を自分で遂行できない場合に、仕事を第三者に移管することができるというもの。例えば建設会社は浴室のタイル貼りをタイル貼り職人(の会社)に委託することができる。この抜け穴を利用して、宅配業者や屠札業者、さらにはスーパーマーケットは独自の人材派遣会社を創設、ここで従業員と契約すると、本社の仕事場に派遣することで、正規の労働者に払う賃金を削っている。

ペストとコレラ

労働者にとっての選択肢は、ペストとコレラに絞られる。「派遣なんて嫌だ!」と仕事をしないと、ドイツでは貧困の代名詞となっている「ハーツ4」という生活保護を受けて生活をすることになる。その額わずか416ユーロ(家賃は別)。しかし「ハーツ4なんて嫌だ!」と重い腰を上げて仕事を探しても、派遣しか仕事が見つからない。

1日8時間、ひどい場合は宅配業者に派遣されて1日10時間働いて、生活保護と同額の収入しかない生活をするか、それとも家にこもってハーツ4で生活をするか。どちらにしても魅力がないので、長期失業者が生活できる職に就けるケースはほとんどない。

理由なき収入

ここでよりによってそのハーツ4を導入したSPD(の議員)が、ハーツ4を廃止して”grundlose Einkommen”を導入することを提唱した。

参照元 : Frankfurter Allgemeine

“grundlose Einkommen”(理由なき収入)とは、その名の通り毎月、国(あるいは地方自治体)が失業者の口座に1200~1500ユーロ払い込む。失業者はこの金でこれまで通りの生活を続けてもいいし、これまではやってみたかったが、収入が低すぎてやる気にならかった仕事に就いて社会に貢献することができる。

追加の収入には一般税率が採用されるので、まるまる収入になるわけではない。それでも仕事に就けば収入があがることになるし、失業者が仕事について社会保障費(健康保険費、失業保険、税金など)を払ってくれる。結果として、国、あるいは地方自治体への負担は、うまくいけば減額されるかもしれない。

22世紀の社会モデル?- 条件なしの基本給

日本では、「馬鹿馬鹿しい。」と思われる方も少なくないに違いない。これは夢物語りではなく、北欧(フィンランド)では(試験的に)導入されているシステムだ。もっともフィンランド版は”bedingungsloses Grundeinkommen”(条件なしの基本給)と呼ばれる。支給額は560ユーロ/月で、この金を何に使っても構わない。

仕事をして金を稼いでも、”bedingungsloses Grundeinkommen”(条件なしの基本給)は減額されない。だから仕事をすればするほど、収入が増える。このプログラムは2017から2000人を対象にスタート、世界中の社会学者から注目されていたがその成果は予想(期待)を上回った。多くの長期失業者が仕事を始めたり、自分の会社を設立して、社会に復帰してきた。

参照元 : Berliner Morgenpost

これまでは失業者を罰する、「働いていないものが、楽な生活をするなんて許されない。」という考え方が一般的だった。しかし失業者を罰しても、社会にとって何の得もない。失業者にして仕事をしても、生活保護と同額の収入しかないのなら、仕事をする気にならない。そこで考え方を変えて、「仕事をすれば、それだけ収入が増える。」というシステムにすると、失業者、それとも最も難しい長期失業者がもっといい生活を求めて仕事を始める。

これはフィンランドでの実験が実施されるまでは、「ユートピア論」とされてきた。しかし実験で、ユートピアどころか大いに現実的なプランであることが立証された。スイスでもフィンランドの結果に勇気づけられて、この実験をすることになった。

参照元 : Blick

細かい部分でまだ調整が必要だろうが、これまでの生活保護に代わる画期的な社会保障プランになるかもしれない。少なくても欧州では。日本では夢物語にしかならないだろう。

 

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執筆者:

nishi

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