日本で家を買う/建てる場合、その費用は全部自分で払うもの。
「そんなの当たり前。他に誰が払うのよ!」
と思いますよね。ドイツでは国が、マイホーム購入補助金を出しています。そう、家を建てると、お金がもらえるんです!
この記事の目次
Eigenheimzulage
復活した購入補助金の正式な名前は、”Baukindergeld”。まずはその歴史から。1995年、好景気に沸くドイツでは、マイホームを建てると補助金が出る “Eigenheimzulage”という法律が施行されました。新築すると2556ユーロ/年まで、中古物件だと1278ユーロ/年まで国から補助金が出るのが、この政策の骨子。
日本で補助金が出ると、「日本国籍者に限る。」という制限が付きますが、ドイツでは制限なし。ドイツに住む外国人、日本人でも申請する資格がありました。条件は「ドイツ国内の物件に限る。」、「申請は一人一回」というもの。ふたつもマイホームを建てるわけもなく、ほぼ誰でも条件をクリア。
でもまだお金がないので、「いずれはこのシステムを使って家を買おう。」と夢を見ていました。ところが2004年12月末日をもってこの法律は廃案になることに。当時は大不況のど真ん中。政府は赤字財政を立て直すため、この太っ腹の補助金を廃止することに。
「どうする?今ならまだ間に合うぞ。」と考えたものの、2年前に会社を作ったばかり。まだ事業が起動に乗っておらず、自営業者補助金をもらって生活している状態(注1)。とてもアパートなんて買う余裕なんてないっ!こうして国からの補助金をもらう夢は実現ならず。
あれから14年後、ドイツの景気は完全回復、マイホーム購入補助金が復活しました!
マイホーム購入補助金 復活!その名は建築児童手当
復活した購入補助金の正式な名前は、”Baukindergeld”。直訳すると、建築児童手当。なんでこんなおかしな名前になったのか?それにはこの補助金が導入された背景を説明する必要がある。
何度も書いたのでご存知の方も多いが、ドイツはもう10年以上も続く空前の不動産ブーム。ベルリン、ミュンヘン、ハンブルク、ケルンなどの大都市は言うに及ばず、ブームの波は人口30万人程度のアウグスブルクまで波及している。
4年前にアウグスブルク市内でアパートを買った知人、「資産価値がほぼ倍になった。」と言って渋い顔をしている。「もっと喜んだらどうだ。」と言えば、「アパートを売ったら、何処に住めばいい?」と言う。子供部屋付きのアパートなんぞ、探すのに1年かかる。そして高い家賃。資産価値が上がっても、アパートを売れないから全然嬉しくない。上がるのは税金だけ。」と、ごもっともな話。
市内の賃貸物件の競争率は、日本の優秀大学のそれをはるかに超える。アウグスブルクで「入居人募集」の広告を見て翌日、物件を見に行くと、すでに6組のペアが見学の順番を待っていた。これが4年前の状況なので、今の状況はもっと悪化している。
これがミュンヘンやハンブルクになると、入居希望者の列がアパートの外まで続いている。多いときには50人を越える入居希望者が居る中、希望のアパートを借りれるチャンスは大きくない。
さらなる問題は家賃の上昇だ。大都市では収入の1/3が家賃で消えていく。カップルが子供を授かると、状況はさらに悪化する。子供部屋があるアパートは、数が少ない。そして80平米を越える3部屋アパートの家賃は、雑費を含めると4桁。ただでさえ子供のために出費が増え、将来の学費をためる必要のあるカップルにとって、大きな負担になる。この状況では、「子供のためにマイホームを。」という人は、ごく少数派に限られてしまう。
そのようなカップルを後押しする目的で、建築児童手当という名前になった。
建築児童手当の中身
「じゃ、なんぼもらえるんですか。」とストレートに聞きたくなるに違いない。ストレートに回答すると、子供一人頭、1200ユーロ/年の補助金が出る。期間は10年間。
「じゃ、子供が5人いたら6000ユーロ/年なんですか。」に聞きたくなるに違いない。これが、その通りなんである。10年間でなんと6万ユーロ、邦貨にして800万円近くが補助金として出ることになる。
「でも、きっといろんな制限があるんでしょ!」と信じられない方もいるに違いない。当初、「補助金の対象は80平米までのアパートにしよう。」などという意見もあったが、「子沢山の家族を除外することになる。」という懸念があり、お屋敷のような一軒家を買っても、この補助金が出ることになった。
言うまでもなく、一軒家でもアパート(中古でも)OK。大事なのは、アパート/マイホームの購入契約/建築契約が2018年1月1日~2020年12月30日までに交された物件が対称になる。
勿論、日本人でもドイツに住んでいれば、補助金を申請できる。「東京のアパートを買っても、使えますか。」と言われる方、使えません。一軒家でもアパート(中古でも)、ドイツ国内にあることが条件だ。
「子供はもう大学生なんですか、使えますか。」駄目です。この補助金は幼い(?)子供のいる家族を支援するのが目的なので、子供の年齢は申請時点で(それでも)18歳未満で、一緒に住んでることが条件です。
「知りませんでした。去年、アパートを買ったのですが、今から申請すれば補助金は出ますか。」この点では国は厳しい条件を課しており、「新居に入居してから3ヶ月以内に申請をすべし。」との事。まだ3ヶ月以内だったら、今からでも申請可脳。新居を建設中の方は、新居に入る前に申請できます。
補助金が取り消されるケース
国から補助金が出ると、これを利用してお金儲けをする(悪)賢い人がいるので、その予防策も導入されている。補助金で買ったマイホームを賃貸する、あるいは売却すると、補助金はその時点で終わってしまう。
例外は仕事の都合で転勤、別のアパートを買った場合。このケースでは、残りの補助金が引き続き支払われる。
バイエルン州住民だけの得点
選挙で大敗を喫したバイエルンの政府与党、CSU は支持率の回復を狙って、「バイエルン州でマイホームを買う人には、建築児童手当に子供一人当たり300ユーロ上乗せしちゃう!」と決定した。それだけではない。一発補助金と証して、バイエルン州でマイホームを買うと、なんと1万ユーロがもらえる!
この一発補助金は子供が居ないカップル、シングル、それに子供がいるカップルを対象にしている。ただし!シングルの場合は、年収が5万ユーロの方まで。子供いないカップルだろ年収7万5千ユーロまで、子供が一人いる家族の場合は9万ユーロまで。子供が一人増えるに従い、この上限は15000ユーロ上昇する。
この補助金が逆効果になって、ただでもブームの不動産市場をさらに後押し、不動産バブルにならければいいのだが。
お断り
「補助金を申請したいのですが、どうすればいいのですか。」等、当社までお問い合わせをいただきます。当社はドイツ留学を手配している旅行代理店 Pfadfinder24 です。ドイツ政府の機関ではありません。
詳細はこの補助金を出している政府機関、KFW までお問い合わせください。
参照元 : KFW
注1)
当時、ドイツで起業すると3年間、補助金が出ていました。これは稀に見る政府のヒット商品で、多くの企業家を産み出しました。今では補助金はかなり削られていますが、まだ補助金は残っています。詳細はドイツの労働局のホームページにて!