ドイツで最大の軍需企業ラインメタル社が、主力戦車 Panther KF51 を発表した。
何の予告もなく。
これには、
「軍事アナリスト」
も驚いた。
驚いたのはその性能。
早くも、
「T-14キラー」
と言われている。
そこで今回はラインメタル社が誇る最新鋭の主力戦車、 Panther KF51について紹介したい。
この記事の目次
主力戦車の開発
通常であれば、
「目が飛び出る」
ほど金のかかる新型、それも主力戦車の開発は政府から、
「(最低)200台調達します。」
という
「事前注文」
をもらってから、開発 & 製造を始めるもの。
なのにラインメタル社は事前注文はもとより、
「需要はありますか?」
と尋ねることなく、次期主力戦車を開発・発表した。
一体、その裏には何があるのだろう?
Krauss-Maffei Wegmann
現行のドイツの主力戦車は、レオパルト2型。
製造元は
“Krauss-Maffei Wegmann”(クラオス マファイ ヴェーゲマン)
そう、あの日本人の大好きなミュンヘンにある会社だ。
ラインメタル社は主砲の
「120mm滑空砲」
などの欠かせない部品を提供しているものの、製造元はクラオス マファイ ヴェーゲマン。
早い話が、ライバルだ。
ラインメタル社
「ドイツ一の軍需産業」
のラインメタル社にも面子と誇りがある。
その創業は1889年。
奇しくもあのアドルフ生誕の年。
創業当時は、
「ライン製鉄 & 鉄鋼用品店」
という
「害のない名前」
だったが、創業時から軍需産業に特化。
第二次大戦中は世界初の地対空ロケット
“Feuerlilie”(炎のユリ)
を開発した事で知られる。
現在はドローンから地対地ミサイル、軍事用トラックまで、陸軍の軍需品ならなんでも揃う総合デパート的な存在だ。
カントに負けるな!
当然、
「次期主力戦車はラインメタル社製」
と期待していた。
が、メルケル首相は軍需産業に興味を見せず、
「ドイツとフランスがそれぞれ独自に主力戦車を開発するから、高くなる。一緒にできないか?」
とフランスと協議。
こうしてライバルのクラオス マファイ ヴェーゲマンとフランスの軍需産業、
“Nexter”
が新しい合併会社
“Kant”
を立ち上げて、独・仏共同で次期主力戦車を開発・製造することになった。
「冗談じゃない!」
と叫んでいるラインメタル社の声が聞こえてきませんか?
Panther KF51 ラインメタル社 最新型主力戦車発表
「次期主力戦車もライバルに盗られる!」
事を危惧したラインメタル社は、次期主力戦車の開発計画を極秘で立ち上げた。
その開発計画の末に出来上がった戦車が、Panther KF51だった。
パリで開催された軍需産業見本市
“Eurosatory 2022”
でラインメタル社が次期主力戦車Panther KF51を発表すると、誰も予想していなかったので、それは大きな衝撃が走った。
一番ショックを受けたのはライバルの”Nexter”だった。
これから次期主力戦車を開発するのに、ライバルがすでに完成した次期主力戦車を発表してしまった!!
パンターとは?
ラインメタル社の
「本気度」
は、その名前からも推測される。
「パンター」
とは第二次大戦中にドイツで開発された
“Panzerkampfwagen 5″(装甲戦闘車両5型)
の呼称である。
エンジンルームをあまりに
「ぴったり」
に作った為、オーバーヒートしやすい欠点はあったが、
- 機動力
- 攻撃力
- 防御力
の戦車の3大要素のバランスが取れた
「第二次大戦中の最高傑作戦車」
と呼ばれている。
その
「あまりにも有名な名前」
を冠したことからも、ラインメタル社の本気度がうかがわれる。
もっとも大戦中の名前を使用すると、
「ナチスだ!」
と非難されることもある。
実際、今回も非難されたが、
「あのパンターの後続機が出た!」
という驚嘆の声の方が大きかった。
スペック
いくら立派な名前でも性能が
「ぼちぼち」
では売れない。
この点でもラインメタル社は惜しげもなく、同社の最新の兵器 & 最新の電子部品を組み込んでいる。
130mm 滑空砲
世界の主要戦車で採用されているラインメタル社の120mm滑空砲。
自衛隊の90式戦車に搭載された。
この砲で74式戦車を撃ってみると、まるで装甲が紙でできているかのように、やすやすと貫通した。
「とてもじゃないが、戦車乗員にはあの光景は見せられない。」
と、北海道に居た頃、第一戦車群の先輩たちが教えてくれた。
Panther KF51にはさらに大きな130mm滑空砲を搭載。
「破壊能力は50%向上した。」
という。
乗員
装填は自動で行われるので、
「装填員」
が省略できる。
なのに4人乗り。
戦車長と砲手は甲羅の部分に。
”Wanne”(浴槽の意味にも使われる言葉 : 胴体部分)
には運転手と
「その他の任務」
を担う乗員が乗り込む。
12.7mm機関銃
主砲のすぐ横には12.7mm機関銃が搭載されている。
往々にして戦車と共に行動する装甲車や、場合によっては歩兵の脅威に対抗するための小火器だ。
7,62mm機関銃 Natter
大戦中、ポルシェ博士が考案した戦車、
「エレファント」
がある。
さぞかし素晴らしい戦車かと思いきや、主砲だけで機関銃がない。
これではソビエト兵に、
「どうぞ近くに寄って、手りゅう弾でキャタピラを破壊ください。」
と言っているようなもの。
これが不評で、ライバルのヘンシェル社のモデルが採用された。
これがタイガー戦車(一型)だった。
Panther KF51が同じ轍を踏むわけもなく、
「甲羅」
の一番高い場所に7.62mm機関銃を装備している。
正確にはラインメタル社の
“Natter 7,62”
というモデルで車内から操作できる。
皆まで言えば、
“Natter”(毒蛇)
は第二次大戦中に開発された垂直離陸式(木造)ロケット迎撃機の呼称。
神風ドローン Hero-120
加えてPanther KF51にはラインメタル社の
「神風ドローン Hero-120」
が搭載されている。
滞空時間は60分。
飛距離は40Km。
4,5Kgの爆薬を抱えているので、装甲車や建物を貫通して危険を取り除くことができる。
この神風ドローン Hero-120、あるいはNatter 7,62を操作するのが、4人目の乗務員の仕事になる。
さらに!
Panther KF51はデジタル化されており、主砲は戦車長や砲手でなくても、4人目の乗務員が操作できるようになっている。
特殊装甲
装甲の表面には、アクテイブ反応装甲とパッシブ反応装甲が標準装備。
前者は対戦車ロケット弾を完治すると、着弾する前に爆発して衝撃を中性化する。
後者は対戦車ロケット弾が着弾してから爆発、破壊能力をある程度削減する。
重量と走行距離
ラインメタル社の公式発表では、
「作戦行動重量」
は59tとなっている。
走行距離は500Km。
これはのんびりと走った場合なので、作戦活動では半分近く減る。
だから
「3日目には燃料補給」
が欠かせない。
弱点
残念なことに最新の戦車なのに弱点がある。
今回の
「プーチンの戦争」
が示したように、戦車は上からの攻撃に弱い。
だからロシアの最新鋭戦車
“T-14 Armata”
では甲羅の部分は無人になっている。
乗員は丈夫な装甲で守られた
“Wanne”
に座っているのでジャブリンの命中弾を食らっても、生き延びることができる(かもしれない)。
Panther KF51では、命中弾により戦車長と砲手は
「二階級特進」
できる可能性がある。
価格
価格は未定。
あるいは未発表。
最新のレオパルト2型が、1500万ユーロと言われている。
円安のせいで、邦貨では21億円+。
もっと高いことは確かだ。
自衛隊にも10台くらい導入して、
「日本を守ろう!」
なんて宣伝をPanther KF51を主役にして流せば、
「何も知らない大学生や高校生」
が応募してくるかも?