ドイツの達人になる 規則、法律

広告表示義務 ユーチューバー & インフルエンサーは要注意!

投稿日:2019年9月17日 更新日:

広告表示義務 ユーチューバー & インフルエンサーは要注意!

広告表示義務 制度が、フェイスブック、ユーチューブやインスタグラムを利用して「情報」を発信するユーチューバー / Youtuber、あるいはインフルエンサー / Influencer にまで拡大した。

ソーシャル ネットワーキング サービス / SNS を職業で利用している人は、さまざまな義務を負うことになったが、ところがこれを知らない人も多い。ドイツで活躍してるインフルエンサーが次々に「広告表示義務を守らなかった。」として警告書を受け取っており、罰金の支払いと直面している。

ドイツ人でこの様なので、ドイツに滞在する日本人はそんな事情を知らない人がほとんどだろう。最近ではドイツ留学中の日本人もユーチューブ、インスタグラムを利用して情報を発信しているので、そんな目に遭わないように法的な義務につて解説しておこう。

広告表示義務 vs. 隠れた宣伝 / Schleichwerbung

ドイツに限らず、欧州では隠れた宣伝 / Schleichwerbung は禁止されている。「何、それ?」と言われる方は、一度、映画、007をご覧あれ。車から腕時計、椅子、携帯電話、拳銃、とにかく宣伝のオンパレードだ。これを隠れた宣伝とい、映画を見た視聴者が、「私もあれを買えば、同じようにかっこよく、。」と錯覚して、製品を買ってくれることを期待している。

映画の場合は放映される前に、「製品が提示されます。」という注意書きが流れる。これにより宣伝である事を告知してるので、隠れた宣伝にはならない。ところがフェイスブックやユーチューブには、個人の投稿を装った隠れた宣伝のオンパレードだ。

これまではユーチューバーやインフルエンサーの宣伝効果、別の言い方をすれば視聴者を引き付ける力が過小評価されていたので、厳格な制度が導入されていなかった。ところがこうした SNS には抵抗力のない弱い若年層が熱中しており、隠れた宣伝に騙されてしまうことが問題になった。

そこで広告表示義務が、ユーチューバーやインフルエンサーまで拡大されることになった。

広告表示義務 制度導入

2018年から、SNS を使って製品、店舗、サービスの宣伝をする場合は、「宣伝です。」という文句を「見えるように入れる」ことが義務化された。

ところがインフルエンサーの多くは、これをそれほど厳格に取らなかった。企業から委託を受けてビデヲや投稿をする場合は、「宣伝です。」という注意書きを入れたが、「これ、よかったです。」という投稿には注意書きを入れなかった。

日本ならおそらく、何もおこらなかったろうが、ドイツではそうはいかない。法律が守られているか監視する、弁護士事務所が存在している。

法律を利用した悪徳弁護士団 / Inkassounternehmen

こうした弁護士事務所を” Inkassounternehmen”(債務取り立て会社)という。

参照 : wikipedia

本来は借金を払わない個人、法人に対して、法律に乗っ取り、債務を取り立てるのが職務だ。それ自体は問題ないのだが、それだけでは儲からない。そこでサイドビジネスを考え出した。

その商売は、ネット上、新聞、あるいは店舗を訪問して法律違反を見つけることから始まる。例えば日本では当たり前だが、商品を並べる棚を店の前の道路にまで広げている。その現場写真の写真を撮ってくると、警告書を送り、その中で不備を速やかに是正することを求める。

そして弁護士費用として、4桁の請求書を同封している。毎日10通の警告書を送れば、1万ユーロ、1週間で5万ユーロ、一か月で22万ユーロ稼げるぼろい商売だ。こんなに簡単に、しかも合法に大金が儲かるので、警告を専門にしている弁護士事務所、あるいは消費者団体という害のない名前の悪徳弁護士事務所が、幾つも存在している。

こうした事務所が2018年以降、一気に警告書を送りだした。

広告表示義務 違反?パメラ ライフの件 / Fall Pamela Reif

(おそらく)ドイツで一番人気で3百万のフォロワーを持つパメラ ライフに警告を送ったのは、社会競争組合 / Der Verband Sozialer Wettbewerb という名前の弁護士事務所だ。女史はユーチューブでフィットネスの方法などを紹介する一方で、企業から委託を受けてインスタグラムでも商品の宣伝も行ってきた。

女史は企業からお金をもらって商品の宣伝を行う際は、「広告です。」と、広告の表示義務を守っていた。ところが自費で購入した品について、「これ、良かったよ!」とインスタグラムで紹介する際、広告表示義務を怠った。これをみた弁護士事務所は狂喜した。これだけ有名なインフルエンサーなら、たっぷり弁護士手数料を請求できる!

警告書をもらった女史は、これに抵抗した。こうして裁判所で争われることになった。

裁判所の判決 – 個人の投稿での広告表示義務

まずは原告側の弁護から。

問題になっている箇所は、彼女が個人として投稿したもの。彼女を信奉しているフォロワーが品を購入しても、彼女には1セントの利益もない。だから広告ではなく、広告の表示義務はない。これが広告なら、今後、すべての投稿が広告になり、個人の投稿ができなくなる。

警告書を送った弁護士事務所の主張。

問題になった投稿では、原告は某メーカーのロゴが入ったTシャツを着ている。そのシャツは製造元のインスタグラムにリンクされており、明らかな広告である。しかし宣伝であるという注意書きが欠けている。

どちらも一理あるが、裁判所はどのように判断しただろう。

裁判所の判決

ライフ女史は同様の投稿は宣伝であり、広告表示義務がある。

判決理由

彼女の投稿から1クリックだけで、製造元のサイトに到達する以上、これは明きからな宣伝である。この投稿によりお金を稼いでいる、稼いでいないは二の次で関係ない。又、彼女ような有名な人物は、個人での投稿という理屈は使えない。

もしメルケル首相がマーケットにいき、何かよろしくない内容を話したとする。これが問題になってから、「あれは個人として話したことで、首相としてではない。」という理屈は使えない。大衆にとっては個人の発言でも、首相の発言だからだ。

参照 : Tagesschau.de

言われてみればその通り。この判決は地方裁判所での判決であったが、原告が上訴しなかったため、別の判決がでるまではこれがルールとなる。すなわちインフルエンサーは、今後、商品へのリンクを貼っている以上、「宣伝です。」という表示をすることが義務になる。

これを怠って(悪徳)弁護士事務所から警告書をもらっても、これを払うしかない。Es sei denn,警告書を不服として訴え、裁判で勝てば別。日本人でドイツからドイツの情報を発信している人は、ご注意あれ。

どこまでが個人の投稿で、どこからが宣伝となるか、わかりやすく説明しているビデヲがあるので、これも紹介しておきます。

-ドイツの達人になる, 規則、法律

執筆者:

nishi

コメントを残す

アーカイブ