トラック業界に続き、自動車業界も談合?
この記事の目次
トラック談合 – ダイムラーの誓い
2016年、EU委員会はトラックメーカーが90年代から値段を談合、客に高い値段でトラックを購入させたとしてトラックメーカーに合計して30億ユーロ、邦貨でほぼ4000億円にも上る罰金を課した。
ダイムラー ベンツに課せられた罰金は11億ユーロ、単独の会社としては罰金額のポールポジションを獲得した。
正確には販売台数の最も多いフルクスワーゲン社(以下、VW と略)は、傘下のMAN, Scania に対してさらに高額な罰金、12億ユーロを課せられたが、
最初に同業者を密告した功績を認められて、罰金がチャラになった。
密告された同業者が喜ぶ筈もなく、多額の罰金を課せられたダイムラーは復讐を誓った。
ドイツ製品が高い理由
ドイツ製品は値段が高い。品質もいいのだが、値段が高過ぎ。
ドイツ製のマットレス、化学薬品で安く作ったマットレスを4桁もの値段で販売している。
参照 : tempur
同じ事がドイツ製の旅行鞄など、ほぼすべての製品に当てはまる。
メーカーは小売店が値段を下げないように圧力をかけ、同業者間で値段を談合、業界で値引き競争が起きないようにしている。
時々、談合取り締まり局にこの談合が摘発され、罰金を課せられるのだが、談合による儲けのほうが、談合により罰金よりも高く、談合を失くすことにはなっていない。
値段の高いドイツ製品を買ったことがある方は、間違いなくこの談合の被害にあっている。
ドイツ車メーカーの談合
今回、談合がばれたのはドイツの車メーカーだ。
VW、メルセデス ベンツ、BMW、ポルシェ、そしてアウデイの5社が90年代から技術、費用、部品メーカーについて談合、車の販売値段ばかりでなく、部品を注文するメーカー、車に採用する技術についても談合していたという。
その一環で、
「デイーゼルエンジンをどこまでクリーンにするか。」
と談合、試験走行中だけクリーンな車を製造することに同意した。
その結果が、VW を筆頭にした排ガス スキャンダルだ。この談合が証明されれば、ドイツの経済史上かってない規模の大スキャンダルになる。
参照 : Auto motor sport
談合15年
ドイツの週刊誌がこの記事をスッパ抜くと、緊急ニュースになってテレビ、ラジヲで絶え間なく報道された。
ドイツでは車産業はドイツ産業の旗艦で100万人もの雇用を創出している。
この車産業が機能しなくなれば、ドイツ経済自体が傾くので無理もない。この談合は特別なのは、その期間の長さ。
15年以上に渡って談合してきたというのだから、この談合が世界中の消費者に与えた被害は計り知れない。
EU委員会は談合の罰金として、その企業の年間売り上げの10%までの罰金を課す事ができる。
談合していた車メーカーの売り上げから計算すると、罰金額はかってのトラック談合をはるかに凌駕する550億ユーロに達する可能性がある。
このニュースが報道された金曜日から、車メーカーの株価が下落に転じたのも無理はない。
車メーカー 三つ巴の談合密告合戦
車メーカーはよりによって今、談合がばれると予想していなかったので、その罰金を準備していない。
談合があったと判断されてメーカーに罰金が課せられると、メーカーは大赤字を計上することになる。
さらには消費者から訴えられ、VW が排ガス スキャンダルで米国で行なったように、慰謝料を払って中古車を買い取る処置を命令されるかもしれない。
これにどれだけ費用がかかるか、想像することさえ難しい。
そこで焦点は、「誰が最初に密告したのか。」という点に集まった。
当初の報道では、排ガス スキャンダルで書類を押収されたVW社、これに続き、同様の嫌疑で検察が本社を操作して書類を押収したダイムラーが、
「ばれるのも時間の問題。」
として談合をEU委員会に密告したと報道された。
これが本当なら、VW はトラック談合に続いて、またしても同業者を密告したことになる。
一番乗りは誰?
ところがVWの喜びは、長続きしなかった。
トラック談合でまんまと出し抜かれたダイムラーが、罰金を支払わされた仕返しに自動車談合をEU委員会に密告していたと報道された。
この報道が真実なら、ダイムラーは高い勉強代からしかっり教訓を得ており、今回は罰金から免除されることになる。
困ったのはVWだ。黙っていれば(まだ)談合の証拠がないのに、ご丁寧にEU委員会に、
「談合しますた。」
と訴えを上げてしまったので、これが証拠になる。
これはまさにVWが鍋と葱を背負って、談合監視委員会にノコノコとやってきたのに等しい。
そして販売台数が一番多いVWの罰金の額は、最も高額になる。
火曜日にダイムラーの株価が上昇に転じたのに、VW とBMWの株価は相変わらず落下した。
ちなみにBMWは談合をしたことを、全面的に否定した。一体、他にどんな対応ができただろう。
今やまな板の上の鯉。処罰が決まるまで、容疑を拒否するしか他に方法がない。
産業と政界の癒着
今回のスキャンダルは、ドイツの政界と車業界の関係が密接すぎる欠陥を明らかにした。
車業界の利益団体には元運輸大臣が就任して、政治が車メーカーに厳し過ぎる制裁、環境条件を導入することを阻止している。
排ガス スキャンダルでも政界はVWの背中を守り、
「ソフトの更新だけでいい。罰金はなし。
」と援護射撃をした。この背面援護がある限りドイツの車メーカーは好き放題、悪事がばれても政治が守ってくる。
なにしろ自動車業界はドイツ産業の旗艦なのだ。
しかしEU委員会は、そのようなドイツ国内の「配慮」には興味を見せない。
それどころかEU議会で決議した排ガス(環境保護)基準を無視し続けるドイツのメーカーを眼の仇にしているので、委員会の判決だ楽しみだ。
それともドイツ政府が圧力をかけて、蚊が刺された程度の罰金を課すことになるのだろうか。