ドイツ空軍のヘリ?
2018年も残す所一週間。いつも真面目なテーマを取り上げて社会の疑問、問題を指摘してきましたが、今回は少し笑えるテーマを紹介して、今年を締めくくりたいと思います。
この記事の目次
日本の戦車の弱点 – 寒い気候
自衛隊の駐屯地に行かれたことがある方は、駐屯地の各所にいろんな種類の車両が停まっているのを目にしたことがあるだろう。自衛隊には防衛上(建前上)、「駐屯地にある車両はすべて有事には稼働する状態で保有すべし。」という決まりがある。
オンボロの61式戦車だって、稼働できる状態に整備していいなくてはらなない。この決まりを作った人は、有事を考えて「善意」から作ったのだろうが、部隊での事情はいささか異なる。
日本の仮想敵国Nr.1と言えば、昔も今もロシアだが、自衛隊の戦車は寒さに弱い。北方での使用を想定しているのに、燃料系のパイプがむき出し。北海道の寒い冬ではエンジンを絶えずかけていないと、燃料パイプが冷え切ってパイプが凍ってしまう。燃料パイプが凍るとエンジンに燃料が送られないので、エンジンがかからない。
自衛隊の戦車師団に見学にいくと、数百台の戦車が並んでおり壮大な眺めだが、どれも稼働可能な状況にあるわけではない。
ドイツ陸軍 戦車の稼働台数95台
これは平和維持目的とする軍隊の運命で、ドイツ軍も例外ではない。第二次大戦中、ロシアの冬将軍に悩まされたドイツ軍の戦車は、燃料系統などにヒーターを装備しているので、マイナス20℃でもエンジンが始動する。
しかしドイツ軍に装備されている244台の主力戦車、”Leopard-2″(乗員はレオツバイの愛称で呼ぶ)の内、稼働可能な台数はわずか95台。ドイツの戦車師団は3大隊からなり143台の主力戦車を擁するが、これではたったひとつの戦車師団さえも”Soll-Stärke”(正式な配備数)に達しない。かっては戦車であのソビエト軍と対峙したドイツ軍の現状としては哀しい限りだ。
その主要な原因は、長年の防衛費削減にある。冷戦時代、ドイツ軍は2000両を超える “Kampfpanzer”(戦闘戦車)を擁していた。ところがソビエト連邦の崩壊、東ドイツの併合後、「強大な軍隊を保持する必要がない。」と毎年、軍縮が続いた。ちょうど10年前がその最高潮で、戦車の装備数はほぼ一個師団まで減らされた。
ところがここでロシアが軍備を増強すると、軍事力に物を言わせてグルジアなど隣国に軍を進めて領土を占領してしまった。これがきかっけになり、ドイツの軍事力を見直すことになった。戦車に関して言えば、すでに払い下げしてしまった戦車を買い戻したり、新しい戦車を注文するなどの対策により、320台の主力戦車を配備することなった。
ロシアの最新型戦車に対抗せよ!
仮想敵国のロシアは主力戦車600台を擁しており、その最新型戦車T-14はドイツ軍の戦車の能力を上回るといわれている。T-14は戦車の最大の敵、対戦車ロケット弾をアクテブに無害化する世界最新のシステム “active protection system”を装備しているからだ。
ドイツの最新型戦車は未だに受身型防護、すなわち対戦車弾が当たる前にこれを関知して、装甲に装着している爆発物が点火、弾頭が戦車の装甲に到達しないようにする。しかしロシアのシステムでは対戦車弾をレーダーで感知して対抗ミサイルを発射、無害化する。
そこでロシアの最新型戦車に対抗できる戦車が必要になるが、小さなドイツだけで主力戦車を開発すると費用がかさんでしまう。結果、配備数が限られてしまい、対抗できる戦力となり得ない。
この弱点を克服する目的で、ドイツの主力戦車を製造しているドイツの軍事産業は数年前、フランスの軍需産業と合併した。カントと名づけられたこの会社は今、ドイツ陸軍とフランス陸軍に配備される主力戦車を製造中だ。この新しい主力戦車はドイツではレオパルト3型と呼ばれているが、装備開始は2035年と気が遠くなるほど先の話になる。
参照元 : Stern
演習強化
そこで現在の戦闘力でロシア軍の攻撃に対抗できるように、ドイツ軍だけの軍事演習に加えて、Natoの東欧における軍事演習、さらには隣国、オランダ軍、フランス軍、オーストリア軍と共同で軍事演習を行なってる。この演習で派遣されるのがドイツ軍の主力戦車のレオツバイだ。この戦車は重量が60トンもある。60トンもの巨大な車体を戦闘状態で仕様すると、部品が消耗する。とりわけ駆動系統が現代の主力戦車の弱点だ。だから戦車は近距離でもトラックに積んで運ぶ。そして演習後は消耗した部品を交換したいのだが、
1. 交換する部品がない
2. 戦車を整備する部隊の能力が小さすぎる
という最悪の状況になっている。国防費を削減した際に、「必要ない。」と真っ先に削られた部品。戦車を製造した軍需産業も、「注文がないから。」と製造をストップしており、在庫がない。結果、戦車の部品の多くは注文があってから製造されるので、注文してから届くまで半年から1年近くかかる。これに加えて調達部のミスも加わった。そんなに交換部品が必要になると思っておらず、予算に上げてない。足らない部品は、来年の国会で予算枠が取れてから注文するので、さらに時間がかかる。
挙句の果てに、戦車の数が少ないから、整備する部隊も要らないと、整備部隊が大幅削減された。急に戦車を増やしても、戦車を修理できる技術者がいないのだ。技術者を新しく教育するには、時間がかかる上、民間企業も技術者不足で悲鳴を上げている。結果、技術者のお給料が上昇。自衛隊で戦車を修理するよりも、ジーメンスに勤めれば、はるかにお給料がいい。こうして必要な人材が集まらないという四面楚歌の状況だ。
ドイツ軍 張子の虎と化す
燦燦たる状況は陸軍だけに留まらない。日本では、欧州のオイロファイターは自衛隊にも導入される米国のF35と互角の才能と、実にうれしくなるような報道をされている。ドイツ空軍の主力戦闘機であるオイロファイターは、ドイツ空軍に182機配備されている。しかし故障なく離発着ができる飛行機は、わずか4機程度と目も当てられない状況だ。
参照元 : Frankfurter Allgemeine
原因はまたしても部品。オイロファイターの翼には敵機を見分けるセンサーが付いているが、これの冷却がうまく機能しておらず、軒並みセンサーが機能しない。部品を交換すればいいのだが、在庫がない。部品を注文すればいいのが、製造元にもそんなに大量の部品がない。こうしてドイツの空を敵機から守るはずのオイロファイターは、格納庫に待機して部品を待っている。
もっと笑えるのはドイツ空軍のヘリコプター部隊。計画から10年も遅れてやっと導入されたドイツ空軍の戦闘ヘリコプタータイガー。振動によりケーブルが擦り切れて、機器が作動しなくなるのだ。民間機ならともかく、軍用機で何故、そんなに敏感なケーブルの設置にしたのか、おそらくは製造費用の問題だろうが、危なくて飛べない。ドイツ空軍はタイガーを「戦闘不能」と診断して、エアバスからの導入もストップした。こうしてようやく導入された待望の戦闘ヘリ タイガーは、文字通り張子の虎と化した。
参照元 : Welt
ADAC のヘリを徴用
飛ばないヘリはタイガーだけではない。他の人員輸送ヘリも似たり寄ったり。これが思わぬ副作用を引きこした。ドイツ空軍のパイロットは十分な操舵時間が得られず、パイロットの免許証を失ってしまったのだ。
参照元 : Oshabrücker Zeitung
これ以上の悪化を防ぐため、ドイツ空軍はドイツの自動車クラブ、ADACが運用しているヘリをレンタル、ドイツ空軍のパイロットは黄色いヘリに乗ってパイロット免許の保持に必要な操舵時間を稼いでる。
これに関する面白い逸話がある。国防大臣のヴォン デア ライン女史、記者会見で「事態が改善するまでヘリを借りる。」と声明を出した。が、これでは誤解を招くと感じたのか、「(ちゃんと)飛ぶヘリだ。」と付け加えた。これがあまりにも見事にドイツ空軍の惨状を語っている。