ドイツの達人になる 規則、法律

反差別法 何ソレ?私に関係あるん?

投稿日:2019年4月17日 更新日:

反差別法 何ソレ?私に関係あるん?

今回はドイツで導入されている「反差別法」を取り上げます。

日本にはない法律なので、

「何ソレ?」

「私に関係あるん?」

と思われるだろう。

が、

「大有り」

なんです。

以下に詳しく説明します。

ドイツの憲法 Grundgesetz

キリスト教の根本概念は

「神の前では人間は皆、平等である。」

というもの。

言い換えれば、

「神の前以外では、人間は不平等である。」

と言ってるわけだ。

実際、その通りで

人生は初めから終わりまで、不平等。

 

ところがそれでは満足しないドイツ人。

「人間はすべて平等であるべきだ。」

という理念を憲法にしてしまった!

1949年5月、ドイツの憲法

“Grundgesetz”

が公布された。

基本概念

”Grundgesetz”

をそのまま日本語に直すと基本法。

一国の憲法としては名前がパットしない。

私は学生時代、

「戦後のドタバタで、憲法の細部まで考える時間がなかった。だから基本的な所だけ決めて、あとから附加、修整する目的でこの名が付いた。」

と習った。

これが大きな勘違い。

その名前である基本法は、「国の基本になる法」という意味でつけられた。

 

もし今でも同じ説明をしている教授がいたら、これは間違いを教えてあげよう。

永久不変条項

この基本法が優れているのは、70年もの昔に、

「国民を扇動して、憲法の書き換えを企む輩が出てくるやもしれぬ。」

と想定、

“Ewigkeitsklausel”(永住不変条項)

を設けている点。

 

お陰で国会で2/3の多数票をもっても、独裁国家を再現できない安全装置を組み込んでいる。

男女の平等

又、基本法の設定時に、

「男女の平等」

を謳う項目が第三章に設けられた。

しかし男性議員の抵抗があり、

「夫婦間で意見が異なる場合は、男性に決定権がある。」

とされた。

これはとても平等とはいえない。

こうした点が1958年に施工された

“Gleichberechtigungsgesetz”(平等法)

で改正され、男女が

「ほぼ平等」

になった。

 

「ほぼ平等」

というのは改正案にも、

「男性は家族を養う義務がある。」

という条項が残った。

本当に平等なら女性が家族を養ってもいい筈だ。

だがこの点には、苦情を言う女性もいなかったので、そのまま通ってしまった。

反差別法 何ソレ?私に関係あるん?

21世紀になると、男女間の差別だけではなく、

  • 性向
  • 肌の色
  • 宗教
  • 年齢
  • 生まれ持った障害

を理由に人を差別する傾向が顕著になってきた。

かってユダヤ人差別を野放しにした結果、ナチスの台等を許したドイツ。

このまま差別を寛容すると

  1. 社会に軋轢を生み
  2. 危険な思想が社会に拡散する

ことを恐れた。

そこでこうした差別を禁止する法律を整備することとなった。

この目的のために2006年に施行された法律が、

“Gleichbehandlungsgesetz”(平等法)だ。

参照元 : ドイツ家族省

もっとも市民の間では、

“Antidiskrmierungsgesetz”(反差別法)

と呼ばれている。

この法律は差別を受けた者に、差別をした相手に慰謝料を求めて訴える権利を認めている。

当時は、

「わざわざそんなことまで法律に書く必要はなく、人間の理性的な判断に任すべきだ。」

という反論もあった。

しかしいざ導入されてみると、大きな効果を挙げ高い評価を受けている。

そこでここではこの法律が活躍する例を幾つか紹介してみよう。

反差別法 性差別

あるドイツ企業が秘書の女性社員を募集した。

男性がこれに応募したが採用されなかった。

日本なら

「探しているのは女性です。」

で済まされる。

が、ドイツではそうはいかない。

採用されなかった男性は、

「秘書の仕事は男性でもできる。女性だけ優遇するのは差別だ。」

と反差別法を根拠にこの会社を訴えて勝訴した。

反差別法 年齢差別

同様に、

「40歳までの方」

とやると、人間を年齢で差別したことになる。

同様に

「日本国籍の方」

とやると国籍で差別したことになる。

皆まで言えば、

面接で女性に妊娠、出産の予定を聞くのも違法だ。

 

このような法律違反を犯すと、訴えを起こすのは採用を拒否された志願者だけに限られない。

反差別法に抵触する人材募集の広告を出すだけで、

「貴社の○月○日の広告(別紙2を参照)は、平等待遇法に抵触しています。慰謝料の○千ユーロを請求します。」

という目ざとい弁護士事務所からお手紙が書き留めで届く。

こうなったらもう勝ち目はありません。

弁護士をたてて示談にしてもらうのが唯一の解決策です。

匿名募集

平等な雇用募集のあり方の議論の中で、履歴書に写真を貼るべきかどうかが争点になった。

写真写りがよければ面接に呼ばれる確立が高いのは、否めない事実。

同様に履歴書に書かれる名前、

Müller(ドイツ人の典型的な名前)

ABDULLAH(トルコ系の名前)

では、前者の方が優遇される。

独身者とシングルマザーでは独身者が優遇される。

これは不公平ではないか?

ドイツの地方自治体には差別撲滅を目指した反差別部署が設けられ、どうすれば公平な人材募集ができるか議論された。

そこで実験的に行なわれたのが匿名募集だ。

参照元 : ドイツ反差別部署

この募集では年齢、名前、性別、家族構成などを明かさず、写真も必要ない募集を行なう。

履歴書に必要なのは、

“Qualifikation”(技能)

“Berufserfahrung”(職業経験)

だけ。

こうすればすべての候補者を、公平に査定することができる。

この募集を実験的に採用した地方自治体は、これまで就職できなかった人が職に付けるなど、好ましい結果が出たと報告した。

以来、幾つかの自治体では平常的にこの匿名募集を行なっている。

これに触発され、私企業でも匿名募集を導入している会社もある。

反差別法 国籍差別

アパートの賃貸人の募集で、

「ドイツ国籍者に限る」

などと、特定の国籍者に絞ると違法です。

同様に、

「独身者優遇」

「子供がない家族優遇」

などと書くのも、差別の対象になります。

前者はペア/夫婦を、後者は子供がいる家族を差別するからです。

「でも子供がいる家族は、近隣から苦情が来るから!」

という場合は、入居者選抜の時点で他の希望者を選べばいいだけの事。

募集要項で差別をすると問題になるので、余計なことは書かないのが得策です。

差別されたら慰謝料を取れる?

ドイツにも差別はあります。

差別があるから、このような反差法が施行されたわけです。

日本と違うのは差別をされた人が、泣き寝入しなくてもいい事。

ドイツでは、

「君は入れないよ。」

とデイスコへの入場を拒否されたら、差別で訴えることができる。

実際にインド系のドイツ人が入場を断られて、デイスコの経営者を訴えたことがある。

裁判所は経営者が肌の色を理由に入場を拒んだという原告の言い分を認め、経営者に1000ユーロの慰謝料の支払いが命じた。

罰金も痛いが、差別で裁判になるとその会社のイメージは地に落ちる。

結果、売り上げが減少するので以後、発言に注意する。

こうして社会が改善されていく。

慰謝料を求めて裁判を行なうお金がない人には、

“Prozesskostenhilfe”

という裁判補助金制度がある。

財政状況によっては無償で相手を訴えることができる。

日本とドイツ、どっちが平等な社会?

では、日本とドイツ、どっちが平等な社会だろう。

残念ながらドイツです。

そもそもドイツでは男性と女性が平等に扱われます。

日本のように医学部受験で男性が優遇され、女性は冷遇されるようなことは、ドイツではあり得ません。

そんな性差別をするのは、インドのような開発途上国か、男尊女卑の国だけです。

そもそもドイツの建国の基礎となった基本法の冒頭に、

「法律の前ではすべての人間が平等である。」

と謳っている。

すなわち日本のように、

「お金持ちだけ受けれる高額医療」

なんぞ導入した日には、

「基本法に違反している。」

と訴えられてしまう。

だからドイツでは収入、身分、性別、肌の色に関係なく、すべての国民に平等の医療が保証されている。

失業中でお金がなければ、国が手術費を払う。

これが本当の平等だろう。

差別は悪

日本には、日本人同士間で差別をする世界でも稀な慣習がある。

日本人同士でこの有様だから、日本人による外国人への差別は、国連でも非難されるほどひどい。

しかしほとんどの日本人はこれを差別と思っていない。

しかしその日本人が、外国に行ってちょっと差別されると、これに憤慨する。

差別のつらさは、差別されものにしかわからない

ドイツで差別されて腹が立ったなら、まずは日本国内の差別をなくすように努力して欲しい。

-ドイツの達人になる, 規則、法律

執筆者:

nishi

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