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ドイツ空軍 次期戦闘爆撃機は F-18 ?

投稿日:2020年12月22日 更新日:

ドイツ空軍 次期戦闘爆撃機は F-18 ?

国防相がドイツ空軍に導入を考えている F-18

まだベトナム戦争中、米国製の戦闘機 F-104 の後継機を開発することが決まった。

ドイツの誇る軍需産業メッサーシュミットが、イギリスとイタリアの軍需産業が共同で開発したのが、トルナード / Tornado で、ドイツ空軍の主力戦闘機(のひとつ)だ。

参照 : de.wikipedia.org

トルナードは米国のF-4のような迎撃機ではなく、戦闘爆撃機 & 偵察機として開発された。

この国産機は、敵のレーダーをかく乱することもできれば、搭載されたレーダーで敵の動きをキャッチ、積載している爆弾で地上の目標を攻撃することができる。

おまけに故障が少ないという好条件が揃い、ベストセラーになった。最初に導入されたのは1979年で41年前。現在でもアフガニスタンからシリアの内戦まで、活躍を続けている。

しかし最新のトルナードでも1998年製造。中には30~40年も使われている古参機もあり、もう(とっくに)寿命が来ている。

そこでドイツ軍はトルナードの代わりを導入することにしたのだが、国防大臣のその決定が野党から集中非難を受けている。

ドイツ空軍 次期戦闘爆撃機は F-18 ?

ドイツの国防大臣はよりによって、次期主力戦闘爆撃機に米国製のF-18を45機導入すると発表した。

参照 : www.tagesschau.de

F18は、トルナードよりもさらに古い1978年、初めて導入された機種。なんで42年も前に導入された戦闘機を、41年前に導入された戦闘機の代用に買うのか、素人でも不思議に思うだろう。

「F-18は初代機の導入後、数多くの改良が施されてきた。」

「技術は完成しており、故障が少ない。」

とは言っても、所詮は40年も前のモデルであることには変わらない。部外者には理解が難しいのだが、国防大臣には十分に意味のある決定だった。

核爆弾の傘 “nukleare Teilhabe”

Nato加盟国は、米国の核爆弾の抑止力の傘、 “nukleare Teilhabe” の下に入ってる。(*1)

わかりやすく言えば、有事には加盟国の戦闘機が、米国の核爆弾を搭載できる能力が求められている。ドイツの最新の戦闘機オイロファイターは、この能力を有していない。

唯一、老朽化したトルナードだけがこの能力を持ち合わせている。そのトルナードを引退させるなら、

「核爆弾搭載能力をもった戦闘爆撃機が必要になる。」

という論理的な思考になる。そこで国防省が目につけたのがF-18だ。

米国の戦闘(爆撃)機なので、当然、米国製の核爆弾を積める。さらには敵のレーダー網をかく乱させる能力(装置)も搭載しており、トルナードの継続機としてはピッタリ。

エアバスの反対

オイロファイター

これに反対しているのが、欧州の軍需産業のエアバスだ。エアバスは2025完成を目指して、2座席を搭載した戦闘爆撃機バージョン ECR / SEAD

参照 : esut.de

を開発している。最新の電子機能を搭載しており敵地での偵察、敵のレーダー妨害機能を有する。(*2)

なのに今、F-18が45機も導入された暁には、これがまた40年も使用されるなら、エアバスが売れる飛行機の数がぐっと少なくなる。反対するのは無理もない。

日本の政治家なら、

「国産ジェット」

を最優先するだろう。が、ドイツの国防大臣はエアバスを頭から信用していなかった。導入されてから16年もたつエアバス社のオイロファイター、未だに故障続き。

ドイツ空軍は140機のオイロファイターを有しているが、

「稼働できるのは10機のみ。」

という深刻な問題を抱えている。

参照 : tagesschau.de

そんな戦闘機を製造する会社の、

「2025年には完成する。」

という言葉を信用する人は居ない。おまけにF-18は安い!改造されているとは言え、42年前のモデル。製造元は十分に開発コアストを回収しており、87億ユーロで45機導入できる。

これをオイロファイターにした日には、100億ユーロでは収まらない。そこで国防大臣は新たに調達する138機の内、45機だけF-18にするとした。

残りの93機をオイロファイター(現行機)にすることで、エアバスが十分にお金を稼いで、新型機の開発費用を捻出できるようにしてやった。

そう、当初は、

「なんでまた古いF-18なんぞ、注文する。」

と思われた決定は、エアバスの開発能力を顧慮しつつ、同社に十分な利益を生み出す事を可能にした上で、ドイツの防衛能力を維持する

「唯一の残された道」

だった。

憲法違反?

「じゃ、野党は何に目くじら建てるの?」

と思う事だろう。ドイツでは(自衛隊のような装備品の納入に関する収賄を防ぐため)国防省の装備品導入を監視する諮問機関 /”Obleute”が設けられている。

この審査委員会には野党の議員も加わっており、国防省は調達する装備品を決める(契約を結ぶ)前にここに相談して、了承を取り付ける必要がある。ところが国防大臣のカレンバオアー女史は、この手続きを一切取らず、

「F-18を買う事を決めた。」

と、やった。野党が怒るのも当たり前。女史はザールランドの州知事で政治家の経験は豊富なのに、CDU党首になってからどうもかんばしくない。党首からの辞任に追い込まれたのも、無理もない。

核の傘は(まだ)必要か?

カレンバオアー女史がしっかり決められた手順を踏んでいれば、F-18導入問題が社会で議論になることはなかったろう。

しかし女史がヘマをしたお陰で、ドイツ国内で議論が一気に沸いた。その議論は、

「今でもロシアに対する核の抑止力が必要か?」

というもの。ドイツは今、ロシア産のガスを買う大事なお客様で、中国に次ぐ上客だ。そのドイツをロシアが核爆弾で攻撃することに、どんな利益があるだろう?(*3)

ロシアが企図しているのはドイツへの核攻撃ではなく、国内に親ロシア政権が誕生して、ロシアへのガスをもっと買ってくれる事。

米国の核爆弾の抑止力の傘 ”nukleare Teilhabe” の導入から40年以上も経っている。そろそろ国防政策を考え直す時期にきているのではないか?

核抑止力が必要ないなら、F-18を無理して買う必要もなくなる。カレンバオアー女史のヘマのお陰で、これまでは当たり前だった、国防政策の見直しにつながるかもしれない。

注釈 – ドイツ空軍 次期戦闘爆撃機は F-18 ?

(*1)

そもそもドイツがアメリカの核爆弾の傘に入ったのは、シュミット首相のNatoダブル決議がきっかけ。

(*2)

エアバスはさらには2040年の導入を目指して、独仏共同の次期戦闘機システム FCAS を準備中。

(*3)

ヒトラーが80年前、ソビエト連邦攻撃した際、ソビエトはドイツの最大のオイルの輸入先だった。そのソビエトを攻撃したので、オイルが届かなくなり、ドイツ軍はコーカサスへの転進を迫られた。

その結果がスターリングラードの敗北で、ドイツは戦争に負けた。

同じく戦前の日本の主要な鉄鋼と石油の輸入先は、米国。その米国と戦争をするのだから、石油と鉄鋼が不足するのは自明の理。そこで南に転進して、戦争に負けた。

 

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執筆者:

nishi

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