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ドイツ銀行 4年振りの赤字決算 また昔に逆戻り?

投稿日:2024年8月2日 更新日:

ドイツ銀行 4年振りの赤字決算 また昔に逆戻り?

ドイツ銀行 が4~6月期の決算発表で赤字に転落した。

リーマン危機の悪行で

「倒産寸前」

まで行った実績がある銀行だけに、

「ドイツ銀行 倒産危機か?」

と、無責任な輩がネット上で騒ぎ出すのは必至。

そこでここではドイツ銀行の赤字決算の理由を解説します。

ドイツ銀行 地に落ちたその名声

ドイツ銀行はビスマルクの後押しを受けて

「イギリスを介さないで、ドイツ企業の海外事業を支援する。」

事を目指して1870年に設立された。

その許可はヴィルヘルム1世から直々に下りた。

当然、本社はプロイセンの首都ベルリン。

しかし第二次大戦の敗北で、本社がソビエトに接収されてしまう。

そこで

  • ハンブルク
  • デユッセルドルフ
  • ミュンヘン

に本社機能を分散。

その後、1957年に本社機能をフランクフルトに集約する事を決定した。

その名声は高く、国際会議ではドイツの通産大臣ではなく、ドイツ銀行の頭取が出席するほど政府から信頼されていた。

(故)シュミット首相曰く、

「当時のドイツ銀行は、銀行の利益よりも国家の利益を優先していた。」

という。

これが変わり始めたのが80年代。

そして90年代になるとドイツ銀行は

「スキャンダル大量生産銀行」

になった。

21世紀にアカーマン氏が頭取に就任すると、利益第一主義になった。

 

ドイツ銀行の顧客を

「この投資は儲かりますよ。」

と危険な投資に勧誘して全損させた。

そう、ほぼ投資詐欺だ。

その後、世界中で訴えられて、裁判に次ぐ裁判で負けた。

これに業績悪化が加わりドイツ銀行は赤字に転落。

ほぼ4年も赤字決算が続き、倒産寸前まで行った。

頭取の入れ替え

アカーマン頭取に続いたのが、投資部門出身のジェイン頭取。

 

アカーマン頭取時代の悪習をそのまま引き継ぎ

「フリーランス女性との交友パーテイー」

を定期開催、新聞のヘッドラインを飾った。

しかし業績の悪化を止められず、これを止める術も示すことができず、3年ほどで辞任。

ここで

「内部の人間に任せては駄目だ。」

と、ドイツ銀行は銀行立て直しで実績のあるイギリス人のクライアン氏を頭取に採用。

 

乱痴気騒ぎはなくなったが、経営危機は一向に収まらず、悪化した。

ちょうどこの頃、米国で140億ドル(2兆円)の罰金の宣告を受けた。

泣きっ面に蜂とは、まさにこの事。

この日が、ドイツ銀行倒産に一番近かった。

クライアン氏も契約の満期を待たず、3年で解任された。

その次にやってきたのがゼーヴィング氏。

氏はドイツ銀行に

「見習い」

として入社、危機管理部門に所属、日本を含めて世界中のドイツ銀行支店で働いてきた。

そのキャリアが認められて、頭取に大抜擢された。

ゼーヴィング頭取は就任時の記者会見で、

“Ich werde liefern.”(ドイツ銀行を立て直してみせる。)

というセリフを放ち、注目を浴びた。

 

2018年に頭取に就任後、2019年に

「4年振りの黒字決算」

を達成。

以来、4年間連続で黒字決算。

氏は約束を守った。

ドイツ銀行 4年振りの赤字決算 また昔に逆戻り?

“Skandalbank”(スキャンダル銀行)

という

「第二の名前」

が付いたドイツ銀行を立て直したゼーヴィング頭取。

その後、15四半期連続で黒字を計上した。

銀行業界では

「不可能を可能にした人」

と名声を獲得、銀行協会の会長も務める名士になった。

ところが2024年4月~6月期の決算発表で、1億4300万ユーロの赤字に転落した。

何がまずかったのだろう?

それともドイツ銀行はやっぱり昔の

「スキャンダル銀行」

に逆戻りしたのだろうか?

過去の悪事にツケ払い

事の発端は

「アカーマン頭取時代」

まで遡ります。

当時、

「イケイケドンドン」

のドイツ銀行はポストバンクの買収を計画。

しかしリーマンショック前でポストバンクの株は高騰していた。

もっともドイツ銀行の株価も120ユーロを記録しており絶盛期。

その高い値段で買収契約を結んだ。

その後、間髪置かずにやったきたリーマンショック。

大量の不良債権を抱えていたポスト銀行の株価は、大暴落。

ドイツ銀行は買収価格を再交渉。

不良債権で

「夜も眠れない」

ポスト銀行の取締役会はこの

「無茶な要求」

に同意。

めでたし、めでたし?

これに怒ったのがポストバンクの株主。

2010年に

「不当な買収額だ。」

と損害賠償を求めてドイツ銀行を訴えた。

敗訴確実

その損害賠償裁判が、まだ続いているんである。

2024年4月、ケルンの高等裁判所が口頭陳述で

「告訴側の言い分を認める用意があるので和解したほうがいいよ。」

とドイツ銀行にアドバイス。

これを受けてドイツ銀行は

「13億ユーロの準備金を用意する。」

と発表。

傑作なのはその内訳。

告訴側に支払うのは7億ユーロ。

その利子が6億ユーロ。

14年も裁判してないで、

「ごめんなさい。」

をしていれば、赤字決算をしなくて済んだ。

自業自得としか言えない。

高等裁判所の判決は8月21日に予定されており、ドイツ銀行が負けるのはほぼ確実。

ドイツ銀行株 売った方がいい?

と聞いて、

「ドイツ銀行株、売った方がいいの?」

と思われた方。

正反対です。

2024年次の配当金、すなわち2025年に払われる配当金は68セント。

今の株価で換算して4.6%。

2025年次の配当金、すなわち2026年に払われる配当金は1ユーロ。

今の株価で換算して6.8%。

株は安い時に買わないと、儲かりません。

いよいよ 修正 始まる?どうすりゃ~いいの?

質問
でも問題を抱えているよ!

 

問題を抱えているから安いんです。

問題がなければ今頃16~17ユーロになってます。

ドイツ銀行は第二四半期で赤字を計上するも、

「ポスト銀行の罰金」

がなければ、去年よりも利益増。

今回の赤字決算も、そもそもアカーマン頭取時代の置き土産。

ゼービンク頭取になってから銀行は

「正しい方向」

に進んでます。

時々、

「監督不行き届き」

で罰金を科せられるけどね。

新しい金融危機が来ない限り、当分、安泰です。

過半数の原告と和解

高等裁判所の判決は延期となりました。

理由。

ドイツ銀行が原告に買収時に払った25ユーロに加えて、

「31ユーロ/株払います。」

と和解案を提示したのが原因。

原告の約6割が和解案に同意。

残りの原告も和解案を

「精査」

できるように裁判所が判決の延期を決定。

もし25ユーロ+31ユーロで和解できれば、ドイツ銀行が敗訴に備えて準備した

「和解金」

よりも安く済む為、ドイツ銀行株が上昇!

だから言ったでしょ!

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執筆者:

nishi

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