今週の最大の話題は、 中国株クラッシュ & アマゾンショック です。
「毛沢東主義の再来?」
とも思わせる共産党による中国企業に対する締め付け。
上海株式市場では、コロナ最盛期を彷彿とさせる下げ幅を記録。
日本でのコロナ禍感染者数急増も
「そう、それもあるよね。」
くらいに意味を失うほどのNo.1のテーマでした。
幸い、ドイツで上場している中国企業は多くなかったので、大きなマイナスはなし。
でも株価が上昇する要因にもなりませんでした。
一体、中国の共産党が自国の企業を
「これでもか!」
というほど締め付けて弱めることに、どんな意味があったのでしょう?
この記事の目次
中国株クラッシュ 毛沢東主義の再来?
端を発したのは、中国版 ウーバーイーツ
“DiDi”
の米国での上場です。
貴重なデータが
「米国側に筒抜けになる。」
事を心配した共産党は、米国での上場を考え直すように勧告。
しかし利益の為には、乳児のミルクに毒を入れるような中国企業(*1)には
「脅し」
は効きませんでした。
面子を潰された共産党は反撃に出ます。
まずは”DiDi”のアプリを禁止処置に。
続いて米国での上場を
「強制終了」
される事を検討。
大企業の粛清が始まると、
「勢い」
がつきます(*2)。
今度はオンライン予備校に対して、
「利益を上げることは許されぬ。」
と通達。
事実上の業務停止命令です。
上海株式指数の半年チャートでその反応をご覧あれ。
1年チャートでみると、まだわずかにプラス。
それも長続きしそうにありません。
この中国株クラッシュが、ドイツにも影を落としました。
DAX もご機嫌斜め
DAXの1週間チャートです。
共産党の締め付けで、DAXもご機嫌斜めになったのは、26日(月曜日)と27日(火曜日)です。
その後、
「じわじわ」
と回復基調。
予想を上回る企業の業績発表が少し、気分転換に。
その気分転換につながった銘柄を紹介したいと思います。
Hochtief 2021年度業績予測をコンファーム
ドイツ最大の建設会社 Hochtief。
今週、四半期の業績発表がありました。
利益は去年の同時期に比べて、36%上昇。
業績アップに貢献したのは、去年株を20%取得したスペインの高速道路。
高速道路はマージンが20%を超える
「超おいしい。」
商売なんです。
壊れたら自分の会社で修理すればいいし~。
なのにその高速道路が去年、コロナ禍で業績不振の原動力に。
今回は業績回復を押し上げました。
加えて建築のオーダーは61%も増えて、490億ユーロ(6兆円)相当。
これで配当金が7%も出るんだから、
「絶対に買い!」
と、先週書きました。
株価はどう動いたでしょう?
中国株クラッシュにもかからず、1週間で株価は、4.5%上昇。
本来は7%のプラスだったのに、木曜日に、
「利益確定の売り」
が入り、少し落としました。
次の抵抗線は71~72ユーロ。
ここで跳ね返ります。
「しまった!」
と思ったあなた。
現在の株価を考えると、買うのは辞めた方がいいです。
8~9月に修正が来て、
「61ユーロ近辺」
まで戻ったら、買ってください。
復興株 Klöckner & Co 上昇中!
ドイツで起きた大洪水。
先週、
「復興銘柄が上昇するぞ!」
と鉄鋼販売店の Klöckner & Co をお勧め。
株価はどうなったでしょう?
ロケットのように上昇中。
やはり皆、考えることは同じ。
過去最高値が13.49ユーロ。
今から
「発車した電車に飛び乗る」
っても儲けは大きくない。
株価が最高値近辺で、跳ね返るのを待ちましょう(*3)。
Vonovia その執念深さは立派
先週紹介したと言えば、Vonoviaによる”Deutsche Wohnen”買収失敗。
「ヴォノヴィアは買収を諦めない。」
と、ここで書きました。
案の定、ヴォノヴィアは株式市場で”Deutsche Wohnen”の株を買いあさってます。
株価の動向がその証拠。
「狙った獲物は逃がさない。」
その執念深さは立派。
でも株価は28日から横ばい。
「密かに」
買収中なので、株価が落ちる事はない。
でも、これからどれだけ上がるか微妙。
5万ユーロくらい投資すれば、そこそこおいしい利益が出るでしょうが、現在の
「予備」
では、大きな儲けが出そうにない。
なので今回は見送り。
Dürr 特需が株価を後押し
シュトットガルトに”Dürr”という会社があります。
工作機械、厳密に言えばその工作機械を使った製造ラインを提供する会社です。
今週、業績発表をすると株価がロケットのように上昇。
18%ですよ!
中国株クラッシュにも関わらず。
主力が自動車業界と薬剤、木材業界なんです。
自動車業界は車の売れ行きが回復。
工作機械への需要が増加。
ドイツで開発されたコロナワクチンのお陰で、薬品業界は特需景気。
ワクチンの原材料の製造ラインへの需要が増加。
世界中で
「木材が足らない!」
との木材ブームも木材加工の工作機械需要を後押し。
まさに時代のニーズに、
「大当たり」
したのがDürrの事業です。
2021年度の業績を上方修正したのに加え、
「マージン」
を5~6%に上方修正した点が、アナリストにいたく気に入りました。
木材なんて今日明日に育つものではなく、当分、高値が続きます。
コロナも全然終息しないし、特需は続きそう。
車の売れ行きも好調だし、将来安泰株。
ちょうど41~42ユーロが抵抗線。
ここで跳ね返るので、8~9月に36ユーロまで下がってきたら狙い目です。
VW Europecar 買収
一ヶ月ほど前、
「VWが(会社更生法適用中の)Europecarに買収オファーを出した。」
と書きました。
レンタカー会社です。
コロナで人の動きが止まり、会社更生法の適用を申請。
元々、VWの子会社だったんですが、
「本業に専念したい。」
と売却。
しかし車の販売だけではマージンが低くて儲からない。
そこで一度売った子会社を買い戻すことに。
先回は
「44セントでどう?」
のオファー。
「安すぎる。」
と蹴られました。
今回は、
「50セントでどう?」
とオファーを改善。
「デイール!」
とお話がまとまりました。
株価はまさに50セントで止まってます。
VW 上半期 過去最高の利益
そのVWも四半期の業績を発表。
去年の同時期と比較して、売り上げは35%も上昇。
アウデイとポルシェに至っては、過去最高の販売台数を記録。
2021年の1月~6月で見た場合、VW 上半期は85億ユーロの過去最高の利益を出しました。
株価は上昇。
すれど、中国株クラッシュの影響もあり、
「微々たる」
上昇に留まりました。
短期チャートは上昇傾向を示していますが、
中期チャートは下降傾向。
下降の抵抗線203ユーロを割ると、200ユーロも割りそうです。
私は
「200割」
を狙ってポジション固め。
ドイツ銀行 2015年以来最高の利益を計上
今週はドイツ銀行の業績発表もありました。
結果から言えば、アナリストの予想を上回る利益を計上。
税金と借金を払う前、経費を差し引いた利益は12億ユーロ。
こんなに利益が出たのは、2015年以来です。
税金と借金を払うと、残った利益は6億9200万ユーロ。
株価は瞬間4.5%上昇するも、すぐに南に舵を取り赤字で締めました。
1週間チャートで見ると、
かろうじて黒字。
これまで10年以上も株主をがっかりさせていたので、信頼はそう簡単には戻ってきません。
ゼーヴィング頭取は、
「来年は8%のマージンを達成する。」
と言い続けています。
多くのアナリストは懐疑的。
もし来年、本当に8%のマージンを達成すれば、株価は大きく回復。
それまではまだまだ辛抱です。
でも来年は配当金が出るよ!(*4)
アマゾンショック 世界中で株価が落下
木曜日、取引後にアマゾンが決算発表。
去年の同時期と比較して、50%もの収益アップ!
3か月の儲けが78億ドルですよ!
なのに株価は、1週間で9%も下げました。
第三期、第四期の業績改善見通しを16%に下げたからです。
ドイツ銀行が、
「来期は業績が16%改善する。」
と言えば、ロケットのように上昇したでしょう。
でもアマゾンは、20%以上も業績アップをしてきた会社。
これはアナリストの期待を裏切り、一気に売られました(*5)。
日本にも届いた アマゾンショック!
アマゾンショックは太平洋を渡り、日本のマーケットを直撃!
日経は1.8%もの大赤字。
緊急事態宣言もあるでしょうが、アマゾン一社で日経にまで影響が出るのだから、凄い。
成長株が集まってるマザーズは、2.6%も下落。
デルタ株を抑え込む策に欠ける日本政府(*6)。
日経が2万7000台を割り込むのは時間の問題。
そこで止まればいいが、勢いで2万5000台までいくかも?
新規感染者数が4万人を超えれば、2万円台も危うい。
落ちる方に賭けたほうが儲かるよ!
ドイツにも届いた アマゾンショック!
アマゾンショックは、ドイツにもやってきました!
市場がオープンすると、DAXは一気にマイナス1.2%まで下落。
「アマゾンショック」
だとアナリストが言います。
一社の決算だけに原因を求めるより、すでに存在していた潜在的な株安要因が誘発されたと考えた方がいいです。
幸い、
「いくらなんでも、オーバーリアクションだ!」
と、少しづつ回復基調。
だったのに米国の株式市況が足を引っ張り、16時以降、売りが先行。
残念。
月曜日のターンアラウンドに期待しましょう。
buy the dips
今期、
「業績発表はいいのに、株価が下がる!」
という傾向がちょくちょくみられました。
すると翌日になって株価上昇。
アマゾンも同じ?
“Buy the dips.”
「落ち込んだ時に買え!」
って言いますからね。
金曜日、安くなったアマゾン株を少しだけ買っちゃいました。
アマゾンの株、ドイツではフランクフルトに上場されています。
ナスダックに上場されている株を買うと通貨リスクがあるので、ユーロ買い(*7)。
本当はVW株を狙っていたんですが、一流銘柄がこんなに安くなることは滅多にない!
良い子は真似をしませんように。
悪い子は仕方がない。
自己責任でお願いします。
注釈 – 中国株クラッシュ & アマゾンショック
*1
*2 粛清の始まりは共産党を批判したアリババの創始者、ジャックマー氏の軟禁。3か月も消息がわかりませんでした。
*3 業界用語で”pull back”と言います。
*4 大方の予想では30セント/株。株価で換算すれば3%。
*5 コロナ禍の鎮静化により客が自宅で1日中オンラインショッピングをする代わりに、旅行などにお金を消費、消費者の動向が変わったのが原因です。
*6 ロックダウンをすれば感染は収まるでしょうが、政府は法案整備を拒否してきたのでロックダウンはできません。
*7 手数料を50ユーロも取れたよ!