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ドイツ軍人員不足問題 5000人の自由徴兵制度で解決?

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ドイツ軍人員不足問題 5000人の自由徴兵制度で解決?

プーチンの戦争で ドイツ軍人員不足問題 は先送りできない緊急課題となった。

いくらドローンや装備を増やしても、兵隊なしでは戦争は戦えない。

そこで国防相は

「人員不足の解決案」

を探っていたが、5月中旬に

「大臣案」

を告知した。

今回はこれについて紹介してみよう。

ドイツ軍人員不足問題

プーチンの戦争により、ロシアは領土拡大の為なら、

「なんでもする。」

ことが明らかになった。

だが、まずい事にメルケル政権時(13年前)、

「平和なご時世に徴兵制度は要らない。」

と徴兵制度を廃止してしまった。

自衛隊でも人員不足に悩んでいるように、この時世に誰が好き好んで軍隊生活なんぞを選ぶだろう?

しかしロシアによる軍事侵攻の脅威は深刻だ。

世論調査によるとこの前まで

「平和ボケ」

していたドイツ国民の過半数は、徴兵制の再導入に賛成している。

 

もっとも徴兵される20代の若者は、過半数が反対しているが。

ドイツ軍人員不足問題 5000人の自由徴兵制度で解決?

国防大臣がこの難題を解決すべく、ほぼ半年かけてさまざまな案を検討してきた。

5月半ばに発表されたのが、

「5000人の自由徴兵制度」

だった。

その手順はこう。

徴兵の対象になる18歳になると、国防省から

「赤紙」

が届く。

もっとも以前とは違い、

「ただのアンケート用紙」

だ。

そのアンケート用紙には健康状態や兵役に興味があるかどうか、いろんな質問が載っている。

これを記入して返送するのは義務。

「冗談じゃない!」

と返答を拒否すると、罰金が科せられる。

言い換えれば、

「軍務よりも罰金の方がいい!」

という方法もアリ。

このアンケートで

「軍務に興味あり。」

と回答した若者を対象に

”Musterung”(兵役適用チェック)

を受ける。

この検査に合格して、軍務に就く意思と適正のある若者を中心に6か月徴兵する。

 

これがピストーリウス国防相の自由徴兵制度の骨子だ。

なんでこんな骨抜きプランに?

このドイツ軍人員不足問題の解決案を聞いて、

「役に立たないんじゃない?」

と思ったのは、あなただけではない。

国防相は社会民主党(SPD)の政治家だ。

そのSPDの党首が、まだピストーリウス国防相が問題と取り組んでいる最中に、

「徴兵制の再導入には賛成しないから、自由徴兵でやれ。」

と猛烈な横やりを入れてきた。

これまで13年間、自由徴兵制度で駄目だったのでその解決策を探っている。

なのに、

「過去、13年間で役にたたたなかった方法でやれ。」

というのだ。

朝令暮改にも劣る世間離れした党首を相手に、国防は他にどんなプランを建てることができただろう。

さらに!

徴兵制度を廃止してから13年。

国防軍には数万人規模の新兵に教育を施す人材も、施設もない。

この為、

「毎年、5000人程度の新兵」

に限定せざるを得なかった。

勿論、党首が

「徴兵制度再導入もやむなし。」

と援護射撃してくれれば、まずは新兵受け入れ施設と人員の確保を先に行えば、

「数万人規模の徴兵」

も可能であったのは言うまでもない。

骨抜きプランの狙い

一見すると

「全く役に立たない!」」

ように見える骨抜きプランだが、狙いは数ではなく質にある。

スウエーデンは徴兵制度を廃止後、

「十分な兵士が集まらない!」

と徴兵制度を再導入した。

ただし!

徴兵前に厳密な適応試験を行い、体力的、精神的に

「軍務に耐えれる。」

と判断された若者のみ徴兵した。

その結果、徴兵期間の終了後、

「職業兵士」

として軍隊に残る兵士の数が増えた。

適材適所というわけだ。

ドイツ軍では

「たった6ヶ月の徴兵期間」

なので実戦では役に立たないのは承知の上。

この徴兵期間で軍務を体験して、

「職業軍人」

を選んでもらえる人が増える事を期待している。

言い換えれば!

「徴兵制度の6か月」

では軍隊ごっこ。

「軍隊もそんなに悪くないな。」

と職業軍人を選んだら、

「厳しい軍務」

に就かせるわけだ。

一時的な解決案

とは言っても、ピストーリス国防相の

「5000人の自由徴兵制度」

は、一時的な解決案に過ぎない。

数が少な過ぎる上、徴兵期間も短すぎる。

日本では

「ドイツ国防省、予備兵を増やすプランを発表。」

と報道していたが、6か月の新兵教育では

“Kanonnenfutter”(大砲の餌)

にしか使えない。

勿論、これでドイツ軍人員不足問題を解決することはできない。

しかし、来年の総選挙で野党が勝利することはほぼ間違いない。

野党は

「徴兵制殿の復活に大賛成」

なので、政権交代後に新たなドイツ軍人員不足問題解決案が示されるだろう。

それまでプーチンが待ってくれればいいが。

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執筆者:

nishi

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