
2017年から介護保険制度、厳密に言えば「介護度のクラス分け」が変更される。
認知症先進国の日本では
「当たり前の事」
なのだが、ドイツではようやく
「認知症の具合」
によって、要介護度が5つに区分されることになる。
この記事の目次
介護保険制度改正
そもそもドイツではこれまで介護度認定の際、
「肉体的能力の欠陥」
が介護度決定の指針になっていたんです。
しかし認知症患者の場合は、肉体的な能力は衰えていないケースが多い。
結果、
という不具合が生じていた。
この不具合を解消するため、新しい介護保険制度では精神的な障害によっても、肉体的な障害同様に介護度が設定されることになった。
5段階の介護度と介護保険金
これまでは0~3の介護度だったが、2017年から1~5の
“Pflegegrad”(介護度)
が導入される。
一番介護度が軽いのが1、一番介護度が高いのが5です。
それぞれの介護度の区分け、及び介護保険が払う
“Pflegeleisung”(介護保険金)
は以下の通り。
介護度1
まずは軽度の介護度から始めます。
介護度1では
- 介護士が1日1回訪問
- 1時間までの介護で済み
- 夜間の介護は必要ない
というケース。
介護度1と認定されると、131ユーロ/月の介護補助金が出る。
介護度2
その次に来るのが介護度2。
このステージでは一人での行動には、かなりの障害があり
- 1日1回(2時間まで)の介護
- 夜間の介護はごく稀
に必要なケースです。
自宅介護で済めば、347ユーロ/月の介護補助金が出る。
介護施設に日中の面倒を頼む場合、770ユーロまで保険で費用を持ってくれる。
介護度3
介護度3では一人での行動に重度の障害があり、
- 日中6時間までの介護
- 夜間は2度までの介護
が必要なケース。
自宅介護で済めば599ユーロ/月の介護補助金が出る。
介護施設に日中の面倒を頼む場合、1357ユーロまで保険で費用を持ってくれる。
介護度4
これが介護度4になると、
「一人での行動、あるいは能力に最大限の障害」
が認められるケースです。
このレベルになると、すべての行動において補助が必要。
自宅で介護する場合は、800ユーロ/月の介護保険金がある。
介護施設に入院して面倒を頼む場合、1855ユーロ/月まで介護保険が費用を持ってくれる。
介護度5
最大の介護が必要になるのが介護度5。
ここまで来るとほぼ寝たきりです。
自宅で介護する場合は、900ユーロ/月の介護保険金がある。
介護施設に入院して面倒を頼む場合、2096ユーロ/月まで介護保険が費用を持ってくれる。
認知症患者の増加
この介護制度の変更は、ドイツ国内でも増え続ける認知症患者がきっかけとなった。
厚生省の統計によるとドイツには認知症を患う患者が160万人おり、毎年、30万人が新たに発病しているという。
社会の高年齢化によりこのペースは今後加速され、2050年には患者の数は300万人を突破、毎年40万人の規模で患者が増えるという。
すなわち100人/日も新たにこの病気の患者が増える計算だ。
ドイツよりも高年齢化が進んでいる日本ではドイツのほぼ3倍、460万人が認知症に苦しんでいる。
日本はドイツの1.5倍の人口を抱えていることを考慮しても、この数字はあまりにも高く、日本は認知症の最前線だ。
効果の怪しい認知症治療薬
話は少し逸れるが、日本で認知症治療薬として処方される薬の効果は非常に疑わしい。
薬を製造してる会社は、<
「薬を常用することにより、病気の進行を遅らせることができる。」
という。
家族の一員としてすでに認知症に苦しんでる親に
「さらに強い不快感を引き起こす薬」
を飲ませて、さらに苦しめる事の意味を疑う。
薬を服用すれば病気が治る、あるいは病気の進行が止められるなら話は別。
だが、うまくいっても
「初期に限って病気の進行をある程度遅らせる事ができる。」
という程度なのだ。
効果が出ているのかどうか、家族にも全くわからない。
日本ではアルツハイマーというと決まって副作用の大きなこの薬を処方する。
日本の医療は患者やその家族ではなく、医師や製薬会社の利益を優先しているのではないのか。
認知症治療の最前線 アルツハイマー症
認知症のおよそ2/3はアルツハイマー症が原因だという。
アルツハイマーの場合、脳の神経末端にこびりつく
“Plaque”
と呼ばれる淡白質、医学用語では
“Amyloide Plaque”
又は
“Amyloidbeta-Proteine”
と呼ばれる、が原因と考えられている。
このタンパク質はデータの転送をブロックするだけでない。
脳細胞がこのたんぱく質の薄い層に覆われると、脳細胞は炎症を起こして次第に破壊され、最後には死に至る。
治療薬の研究
そこでスイスと米国の製薬会社の科学者は、
“Antikörper”(英:Antibody”)
と呼ばれる植物性タンパク質をアルツハイマー初期の患者、165人に対して1年間適用したみた。
その結果、”Plaque”は明らかに減少して、思考能力の減少も最小限度に抑えられた。
そして投与された”Antikörper”の量が多く、そして治療期間が長い患者は、大部分の”Amyloide Plaque”を取り除くことができたという。
今後は臨床実験対象をを2700人に増やして、さまざまな患者に対して効果を見極める。
仮にテストがうまく行っても、薬として認可されるまでは
「まだ数年かかる。」
というので、過大な期待は禁物だ。
それでもこれまで実質上、治療方法がなかったことを考えれば、大きな進展だ。
もっともこの治療テストは、
「アルツハイマーの初期段階の患者」
に対してのみ効果があった。
すでに発病している患者、その家族にとっては、薬が出来上がっても役に立ちそうにない。
日本での研究
ちなみに日本でもこの分野の研究はかなり進んでいる。
日本の学者は、
“Tau-Protein”(タオタンパク質)
がアルツハイマーの下手人ではないかと疑っている。
普段なら脳の中で成分の運搬の役目を果たすこのタンパク質が、認知症患者では脳細細胞に蓄積しているからだ。
これが蓄積されると
“Amyloide Plaque”
同様に脳細胞が破壊され、認知症を引き起こすと考えられている。
どっちが本当の原因か、双方の病状に関係があるのかまだわかってない。
しかし西欧では
“Amyloide”
が”Tau-Protein”の破壊に影響しているのではないかと考えられている。
このため、”Amyloide”を取り除く”Anti-Körper”の発見に躍起になっている。
はできない。
認知症薬 レカネマブ
ようやく日本のエーザイ社と米国のバイオジェン社が開発した認知症薬
“Lecanemab”(レカネマブ)
が、日本で認可された。
この治療薬は上述の
“Antikörper”(英:Antibody”)
である。
もっとも由来は研究段階の植物性タンパク質ではなく、新しい方法で精製した
「モノクローナル抗体」
を使用して、脳に付着したアミロイドβ(ベータ)を取り除くという画期的なもの。
しかしその効果はかなり限定的で
があるだけ。
それも初期の患者だけ。
おまけにかなり激しいい副作用があり、
「一般的なアルツハイマー治療薬」
というにはほど遠い。
認知症は透析で直る?
そこで何よりも大事なのは、
「物忘れが多くなった。」
と思ったら、
「アルツハイマーだったらどうしよう。」
と悩まず、体内に
「特定の”Antikörper”」
が製造されているか、チェックしてもらうこと。
もしこれが見つかれば、
そうすれば認知症が発病することなく、通常の生活を送ることができる。
ただし!
このは、透析後も免疫が引き続き製造するので、薬を飲んで”Antikörper”の発生を抑える必要がある。
でも認知症が発病することを考えれば、何でもないだろう。
日本でも同様の治療が行われているかは不明。
もしドイツに滞在してドイツの健康保険に加入している人は、健康保険がこの検査、治療費用を持ってくれる。
ドイツの医療も、まだまだ捨てたものではない。

