10月8日、ヘッセン州とバイエルン州で州議会選挙があった。
ドイツは今、インフレによる
「景気後退の坂道」
を転がり落ちている所。
市民の
「指をくわえてみているだけで、何もしない政府」
への反発は必至。
果たして選挙結果は?
この記事の目次
バイエルン & ヘッセン州議会選挙の意味
ドイツで最も大事な州選挙と言えば、最も人口の多いNRW(ノルトラインーヴェストファーレン州)州選挙だ。
時期的にも州選挙の翌年には総選挙を控え、
「総選挙の行方を占う選挙」
と言われている。
ヘッセン州とバイエルン州選挙は、それほどの重要性はない。
でもこの両州はどちらも
「お金持ち」
の州。
ベルリンを筆頭に貧乏な州は、お金持ちの州が払う
“Länderfinanzausgleich”(思いやり予算)
で賄われている。
その発言力は大きい。
トヨタが名古屋 & 愛知県政に大きな発言力を持つようなもの。
そのトップに誰がなるかで中央政府は政権運営が難しくなる。
さらに!
今、州知事の座に付いているのは、全国政治では野党のCDU / CSUだ。
よほどまずい選挙戦を展開しない限り、得票率を大きく伸ばせる筈、、
バイエルン州選挙
バイエルン州で長く
「独裁政権」
を維持してきたCSU。
全国版のCDUの姉妹政党だ。
現党首はゼーダー氏。
特徴は風見鶏政策。
緑の党が支持率を上げると、
「環境政策」
を告知して支持率をあげようとする。
右翼政党が人気を博すると、
「移民の流入を止めろ!」
と右翼の政党の真似をする。
独自の政策を持たず、世論で左右されてる困った政治家だ。
選挙前、あまり支持率は高くなく、
「敗北して党首の座を追われるのでは?」
と揶揄されていた。
ところが選挙が終わってみると、37%の得票率。
先回の選挙よりもわずかに得票率を落としたが、それでも
「勝利」
を呼ぶに値する選挙結果だった。
何がよかったのだろう?
“Freie Wähler 躍進
そのCSU、流石のバイエルン州でも
「一党独裁」
ができないご時世だ。
そこで連立の相棒に選んだのが、
“Freie Wähler”(略称 FW)
だった。
既成の大政党を批判して、
「もっと自治体の言うことに耳を傾けるべきだ!」
主張しているが、CSUと同じくガチの保守政党。
素人にはCSUとの違いはわからない。
選挙前、その党首のアイヴァンガー氏が
「中学生の頃、反ユダヤのパンフレットを印刷・配布していた。」
と誰かが暴露した。
ドイツで
「反ユダヤ」
のレッテルを張られると、政治家として終わり。
幸い、氏は
「兄弟思いの兄」
をもっており、
「俺が印刷した。」
とアイヴァンガー氏を援護した。
しかし野党はこの
「棚ぼた」
を
「ああ、そうでしたか。」
では終わらさず、CDUの党首に、
「アイヴァンガー氏を大臣から解任しろ!」
と要求した。
ゼーダー氏は長く悩んだ挙句
「本人が否定してる40年も前の言動で、責任を取らせるわけにはいかない。」
と決断。
これがよかった。
そもそも何も知らない中学生の頃の言動を理由に、今、政治家としての責任を取らせるのは無理があり過ぎた。
選挙民も同じ考えだったようだ。
FWは
「スキャンダル」
にも拘わらず、先回よりも得票率を伸ばして15.3%。
「鼻の先」
でわずかに極右政党には負けるが、緑の党、社会民主党を追い越して第三党に躍進した。
政策には一貫性がないCSU党首ゼーダー氏の
「唯一の正しい決断」
が、CSUとFWに勝利をもたらした。
その一方で今、中央政権の座にある社会民主党、緑の党、それにFDPは惨敗。
とりわけFDPは
「5%のライン」
に届かず、州議会から消える悪夢となった。
ヘッセン州議会選挙
(西)ドイツの中央にあるヘッセン州は、CDUの居城のひとつ。
以前は
「SPDの城」
だったが1999年に
「天下を分ける選挙」
があった。
ここで僅差で勝利、州知事に就任したのがCDUのコッホ氏。
以来、コッホ氏が地場を固めてかってのSPDの城を
「CDUの居城」
に変えてしまった。
これには理由もある。
ヘッセン州はお金持ちの州。
選挙民は
「蓄えた富」
を脅しかねない変化にはあまり興味がない。
だから保守政党を選ぶ。
が、5年前の州選挙でCDUは危うく政権を失いかけた。
あまりにも保守的な州知事のBouffier(ボフィエーと読む)氏の言動・政策が、選挙民に受けなかった。
そのボフィエー氏はバイデン大統領とは違い、
「また出馬すれば負ける。」
と悟り、州知事在任中に若きライン氏に州知事の椅子を譲った。
すなわち!
今回の州選挙は若きライン氏の政策に、選挙民が満足しているか否かを問う選挙だった。
その結果は一目瞭然。
CDUは先回から大きく得票率を回復する34.6%で大勝利した。
「笑いが止まらない!」
のも理解できる。
SPD史上最悪の負け戦
ヘッセン州選挙の
「勝ち組」
はCDUと極右政党。
極右政党に関してはこちらで詳しく解説したので、今回は解説を割愛する。
負け組はベルリンで政権にある
- SPD
- 緑の党
- FDP
のお馴染みの顔ぶれだ。
FDPは現時点ではかどうじて5%。
もしこれが4.9%になると、バイエルン州に続いて州議会から姿を消す。
いい気味~。
そのFDPよりもひどい目にあったのがSPDだ。
かってはヘッセン州の第一党だったのに、今回の得票率は15.1%。
極右政党にも負けた。
州知事候補に名乗りを上げた、中央政府で内務大臣に就いてるフェイザー女史の功績が大きい。
女史は
「選挙で勝てばヘッセン州知事になるが、負けたらそのままベルリンで内務大臣をやります。」
という二股候補。
女性に、
「付き合ってくれるなら、今の妻と別れてもいい。」
なんて口説き文句を言って、
「いいわよ。」
という女性は居ない。
それがわからなかったフェイザー女史、選挙民に愛想をつかされて、
「SPD史上最悪の選挙結果」
を記録することになった。
今、あまりの惨敗ぶりで
「フェイザー女史の責任」
を問う声が大きくなっている。
自業自得~。