ドイツでは オンライン カジノ は原則、違法です。
でもこの法令は、
「性器は放映してはならない。」
という日本の映倫のようなもの。インターネットで世界中のサイトが見れる時代に映像なんど禁止しても、象徴的な意味しかない。オンライン カジノもしかり。
そのオンライン賭博で大金を磨ったドイツ人、
「そもそもオンライン カジノは違法なのに、お金を賭けることができるなんておかしい。」
と、ドイツ人でしか考えつかない(へ)理屈で裁判所に訴えた。果たしてその結果やいかに?
この記事の目次
ドイツにおける賭博の合法性
ドイツではカジノは”Spielbank”(遊ぶ銀行)と言います。
日本のパチンコのように、
「違法だけど、商品をお金に換える場所を外に設ければ、見なかったことにする。」
みたいな
「なんちゃって合法」
ではなく、本当に合法です。そもそも州政府が、
「タバコと塩だけじゃ儲からん」
と、税収入の改善を目当てに賭博の経営に乗り出しのがきっかけです。
最初は宝くじだけでしたが、次第に賭博場の経営にも乗り出します。ドイツで最初の賭博場は、1720年に温泉休養地で有名だったバッド エムスで営業を開始します。
その後、ドイツ統一で全土に広まっていきました。このような歴史的な背景があり、賭博場の多くは温泉休養地に多いです。
これに民間企業も参加したので、ドイツ全土には賭博場だけで86もあります。これにスポーツ賭博などが加わるので、賭博好きにはドイツはたまらないです。
そのお陰で賭博で全財産を磨って、犯罪に走り、刑務所に入る者も、後を絶たちません。
国が税金を取るなら、もっと依存症の人間の面倒を見るべきです。
ドイツの賭博依存症者救済
今後、日本も賭博場を設置する予定ですが、賭博依存症保護の政策がまったくできていないのが、とても気になります。
国の、
「搾り取れるだけ搾り取ったら、あとは本人任せ。」
「結局、悪いのは本人だから。」
という姿勢が丸見えです。
ドイツでは賭博場が、
「この人は依存症」
と判断した場合、賭博場への入場を拒否しなくてはならないと決められています。
判例 賭博で磨った金を取り戻せ!
これに関して、ハム市の高等裁判所で下された判決があります。
参照 : spiegel.de
ことの起こりはやっと成人したばかりのドイツ人。始めって行ったカジノで大当たり。これに気をよくして、月一回、カジノにいくようになります。
しかし負けが続き、これを取り返そうと、週1回通うようになり、最後はほぼ毎日。
ある日、
「俺は依存症だ。」
と気づき、
「今度、俺が来たら入場させないようにしてくれ。」
と賭博場に頼みます。
意識が戻ったのは一瞬。その後も会社の金を盗んで賭博場に行く日々。彼がはまったのは、”Spielautomaten”と呼ばれるスロットマシーン。
法律上、スロットルマシーンなどは依存者の使用を禁じる賭博に指名されていなかったのです。散々金を失い会社をクビになった後で、
「スロットマシーンの使用を止めなかった賭博場が悪い。金を返せ!」
と訴えました。日本だったら、勝ち目なしです。法律上、スロットルマシーンは禁止対象から外れていますから。
しかしドイツの高裁は、
「賭博場は入場拒否を受けてる者が、スロットルマシーンを使用する事を拒否すべきであった。」
と判断、5万7000ユーロに利子をつけて原告にお金を返すように命じました。
ドイツには50万人を超える賭博依存者がおり(日本も他人事じゃない!)、今後、これに続く裁判が予想されています。
オンライン カジノ って合法なの?
では次はオンライン カジノについてみていきましょう。
ドイツのオンライン カジノは、日本における売春と酷似しています。
すなわち本当は違法なんですが、警察(司法)は真面目に取り締まらないという状態です。
ドイツにしては珍しい白黒つけない態度は、ドイツの過去のオンライン カジノの歴史に依存しています。
オンライン カジノは合法だった!
かってドイツではオンライン カジノは合法でした。
しかし賭博は依存症になる確率が高く、オンライン カジノでは入場を禁止するなどの対抗措置がとれません。さらには組織的犯罪が、ここで合法的に金を洗うことが可能になります。
そこでドイツ政府はオンライン カジノのライセンス(許可証)の延長を許可しませんでした。こうしてライセンスが切れると、自然にオンライン カジノがなくなると想定していました。
問題を複雑にしているのは、シュレースビヒ ホルシュタイン州の特別措置です。
オンライン カジノの本拠地 シュレースビヒ ホルシュタイン州
まだオンライン カジノが合法だった頃、その本拠地(登録住所)の多くはシュレースビヒ ホルシュタイン州にありました。
何処にあるの?
ハンブルクの北にある、かってのデンマーク領です。ビスマルクの時代に戦争でこの領土を占領、ドイツ領としました。お陰で今でもデンマーク国籍を持っている人が住んでいます。
そのシュレースビヒ ホルシュタイン州にとって、大事な税金の収入源であるオンライン カジノがなくなるは、一大事。そこで州法にて、
「オンライン カジノは合法である。」
としました。これが原因で
“Online Casino”でググると、
「合法!!オンライン カジノ」というサイトが多数、ヒットします。
確かにシュレースビヒ ホルシュタイン州では合法なんですが、他の州では違法です。
どういう意味ですか?
シュレースビヒ ホルシュタイン州に住んでいる人、あるいはシュレースビヒ ホルシュタイン州内にて、オンライン カジノを利用するのは合法です。
でも他の州に住んでいる人が、オンライン カジノを利用するのは違法です。
ですから「合法オンライン カジノ」という記載は、完全なる間違いではないので、まだ許されています。
又、他の州に住んでいる人が、(違法の)オンライン カジノを利用するのも、敢えて取り締まってはいません。俗に言うグレーゾーンですね。ところが今、このグレーゾーンを脅かす事態になっています。
オンライン カジノ で磨ったお金を取り戻せ!
物事の発端は、オンライン カジノで9600ユーロを磨ったウルム(バーデンヴュルテンベルク州)に住むドイツ人。
お金を磨ったあとで、
「そもそも他の州の人間に、オンライン カジノを提供するのは違法だ。磨ったお金を返せ!」
と訴えたんです。日本人には想像できないいい根性。でも肝心の
「味噌」
はここからです。
弁護士事務所のアドバイスで、掛け金を取り立てた”Paypal”を訴えたんです。裁判所はどう判断したと思いますか?
paypal に払い戻しを命じる!
2019年12月、裁判所は Paypal に対して違法カジノに払った9600ユーロ+利子を原告に払い戻すように命じました。
参照 : handelsblatt.com
判決文で、
「被告は支払いを行う前に合法な取引であるかどうか、審査する必要があった。」
というかなり明確なもの。あまりも明確なので、Paypal は控訴を諦め、これが判決となりました。
磨ったお金を取り戻す方法
判例が出たので、過去、オンラインカジノでお金を磨った人はお金を取り戻せます。
お金を取り戻せるのは、オンラインカジノが違法になった2019年以降に、お金を磨った人。
どうすればいいの?
まずは証拠集めから。
銀行明細などから、オンライン カジノにお金が支払われてる証拠書類を確保しましょう。あとは弁護士事務所に行って、お金の払い戻し請求を依頼します。
弁護士保険に入っていません!
弁護士保険に入っていない人は、弁護士事務所との交渉が必要です。
この判決に喜んだのはオンラインカジノでお金を磨った人だけではなく、弁護士事務所も同じです。ドイツでは毎日、オンライン カジノ関連で900万ユーロも支払いが行われています。
この大半が(厳密に言えば)違法なので、弁護士事務所にとってオンラインカジノは過払い金請求のようなもの。金のなる木です。ホームページで、「磨ったお金を取り戻しませんか?」と謳っています。
日本の過払い金請求と同じで、手数料は取り戻したお金から払う形で、弁護士事務所に取り立てを依頼できます。
オンライン カジノの今後
今回の判決を受けて、Paypal は利用規約を書き変えました。
すなわちオンライン カジノでの購入者保護を無効にしました。もっとも無効にしても、合法な取引の支払いかどうか、確認する義務は残ります。このため利用規約を書き変えても、今後も裁判で負ける可能性があります。
これを恐れてビザカードはオンライン カジノの支払いサービス提供を中止しました。他の会社もこれに続く可能性があり、そうなるとオンラインカジノは収入源を断たれることになります。
今後もオンラインカジノがなくなることはないでしょうが、その数は減っていきそうです。