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【露軍】一度の失敗では懲りず 第二次ハリコフ攻勢

投稿日:2024年7月13日 更新日:

【露軍】一度の失敗では懲りず 第二次ハリコフ攻勢

ロシア軍は2024年5月、ハリコフ第二次攻勢を開始した。

そもそも露軍は2年前、最初のハリコフ攻勢に失敗、散々の損出を被って撤退した。

なのにうまくいかなかったプランを、2年後に再実施。

うまくいくのだろうか?

何故、ハリコフ?


ウクライナ第二の都市Charkiw。

発音で表記すれば

「ハーキフ」

に近い。

でもここでは私が長年、馴染んでいる

「ハリコフ」

と表記します。

第二次大戦中の激戦地で、ドイツ軍とソビエト軍はなんと7回もの攻防戦を展開した。

質問
何で?

 

ドネツク地方は良質の石炭と鉄鉱石の産地。

そもそもヒトラーは、ロシアの地下資源を目当てに戦争を始めた。

ここを失っては、戦争を始めた意味がなくなるからだ。

一方、ハリコフはロシア国境からわずか40Kmしか離れていないウクライナ第二の大都市。

ここを奪取されるとウクライナ軍にはとても痛い。

質問
何で?

 

第二の大都市が奪取されたという精神的なショックに加えて、ここは交通の要所。

ここをなくすと東部戦線の補給が困難になる。

そこでプーチンは

「奇襲で取れるんじゃね?」

と、ハリコフ攻勢を命令した。

第一次ハリコフ攻勢

まずは第一次ハリコフ攻勢から解説しよう。

2022年2月24日、860台の装甲車両を擁するロシア軍は空軍と野砲部隊の支援を受けて、ベルゴグラートから一気に南下した。

2日後にはハリコフ郊外に到達したが、

「ウクライナ人は両手を広げて歓迎してくれる。」

と思っていたロシア軍に火炎瓶が雨あられと降り注ぎ、かなりの損出を出した。

3日目からはハリコフ市街戦に発展した。

しかし市内ではロシア軍は防衛部隊の恰好の的。

四方から攻撃を受けて損失大。

「これはたまらん!」

とロシア軍はハリコフ掌握を諦め郊外に撤退するも、ハリコフを包囲、野砲部隊がハリコフに砲弾を撃ち込み市民を殺害、インフラを破壊する

「兵糧攻め」

に転換した。

しかし2022年5月、ウクライナ軍が反転攻勢に出て、包囲の鎖を断ち切った。

ウクライナ軍に席捲されそうになった野砲部隊は撤退。

こうして第一次ハリコフ攻勢は失敗に終わった。

皆まで言えば、第一次ハリコフ攻勢に使われたのは旧東ドイツに駐留していた第20ソビエト方面軍だった。

第二次ハリコフ攻勢

第二次ハリコフ攻勢は2024年5月10日に始まった。

目標は言わずと知れたハリコフ奪取。

これが無理な場合は、少なくともロシア軍の補給のハブ(中心)であるボルゴグラードを守るため、前線(国境)を

「ウクライナ軍の野砲の射程距離の外」

まで押し下げる目標があった。

正確な数字はわかっていないが、ロシア軍が第二次ハリコフ攻勢の為に集めた兵員は3万人、あるいは5万人ともいわれている。

第一次ハリコフ攻勢では優にその倍の兵力と、

「掃い捨てる程」

の装甲車両があった。

圧倒的な戦力でも成功しなかったハリコフ奪取。

これを果たして半分以下の兵力、しかも数少ない装甲車両でうまくいくのだろうか?

第二次ハリコフ攻勢 奇襲成功

ウクライナ軍はボルゴグラード周辺に集結しているロシア軍の動きを逐一、知らされていた。

しかし、西側から提供された武器を国境を越えて使用する事を禁じられており、

「指を咥えて」

露軍が攻勢を始めるのを待つしかなかった。

来るのがわかっていた攻勢だが、何故か奇襲に成功した。

あっと言う間に数々の集落を突破、露軍の先遣部隊は最初の都市

“Vovchansk”(ボシチャンスク)

に達した。

西側はロシア軍が

「柳の下の二匹目の泥鰌」

を狙って成功したことに驚き、

「ボシチャンスク陥落は時間の問題」

と報道。

怒ったゼレンスキー大統領は国境防衛部隊の司令官を解任するなど、どうみても旗色は悪かった。

ロ軍 包囲される!

ロ軍 包囲される!

抜粋元 : 戦況マップ

 

戦後、詳細が明らかになるだろうが、

「ボシチャンスク陥落は時間の問題」

と思われていたまさにその時、ウクライナ軍が反攻に出た。

するとロシア軍の先遣部隊は後続部隊から切り離され、ウクライナ軍に包囲されてしまった。

その数400名。

ロシア軍は何度も

「回廊」

を切り開くべく決死隊を送ったが、ウクライナのドローン部隊の

「練習用の的」

になるだけだった。

以来、ロ軍は同じくドローンを使って医薬品、食料、弾薬を包囲された部隊に送っている。

これはウクライナ軍にとって、宣伝に使える絶好の材料。

包囲したロシア軍の惨状をうまく宣伝に利用すれば、もともと高くないロシア軍の戦意を崩すのに大いに役に立つ。

西側の援助物資が届く!

ロシア軍は包囲されている部隊を救援するために、攻勢を計画。

部隊をベルゴグラート周辺に集結させた。

ところがである。

この時点になってようやく西側、正確に言えば米国議会で可決された

「ウクライナ支援」

で提供された武器・弾薬がウクライナ軍に到着した。

同時に西側諸国は

「ハリコフ戦線に限り、ロシア領内への攻撃も可。」

と武器の使用を許可。

すぐにウクライナ軍はハイマースで、露軍が攻勢の為に集めた物資を破壊してしまった。

同時にドローンを使って、部隊の移動を徹底的に妨害した。

ちょうど第二次大戦末期、ドイツ軍が西側の戦闘機に

「もぐら叩き」

のようにに叩かれて

「日中の移動は自殺行為」

と軍隊の展開ができなかったのと似た様態だ。

露軍は分断された部隊の救出軍を送れなかった。

【ロ軍】損出甚大なり! 第二次ハリコフ攻勢

【ロ軍】損出甚大なり!

通常ならこの辺で

「やっぱり駄目だった。」

と撤退をするもの。

意地のために部隊を戦線に張り付けておいても、戦死者が増すだけ。

が、プーチンは撤退を否定。

一度ならず、二度までも同じ構成で失敗したとあっては、世界中で笑いもの。

そこでボシチャンスクに展開する

「全部隊」

に対して、攻撃の続行を命じた。

ここでいう全部隊とは、傷病兵を含む全部隊。

松葉杖でろくに歩けず、銃も持てない傷病兵まで

「万歳突撃」

に駆り出されている。

あまりの惨状に機甲部隊は突撃命令を拒否。

今、露軍の第二ハリコフ攻勢の死傷者は対ウクライナ軍で6:1、その数は1万人と言われている。

日本軍のインパール作戦には劣るが、見事なまでの失敗作戦だ。

来るかウクライナ軍反攻?

そして今、ウクライナ軍は反攻を準備中。

ボシチャンスクの右方面から機甲部隊を使って、ロシア軍の背後をつく計画だ。

ちょうどデンマークとオランダが送った

「F16戦闘機」

は今、ウクライナに向かっている。

ウクライナ軍の反抗で最初の活躍が見れるかもしれない。

もっともロシア領内に近い場所で空軍を使うと、敵の地対空ミサイルの標的になりやすい。

この為、

「F16の初陣」

はハリコフ反攻ではなく、南部戦線で投入されるだろう。

さらに!

この夏に危惧されていた

「ロシア軍の大攻勢」

は第二ハリコフ攻勢の失敗で到底無理。

プーチンは意味のないハリコフ第二次攻勢で、人員・増備を浪費して大攻勢に出る余裕がない。

最初は、

「ヤバイっしょ!」

と思われた第二次攻勢ハリコフだが、ウクライナ側に有利に好転したのは、

「アルデンヌ攻勢」

と類似点があり興味深い。

来るかドニエプル河渡河作戦?

F16

ウクライナ軍に提供されるF16戦闘爆撃機。

参照 : F16

 

開発されたのは70年代。

最新の飛行機ではないが、何度も改善が施され純粋な戦闘機から

“Jabo”(戦闘爆撃機)

に変身した。

これまでの(口)約束では約100機がウクライナ側に提供される。

もし私が司令官ならこの貴重な戦闘機を使い

「南部の局地的な制空権」

を奪取して、ドニエプル河渡河作戦を実施する。

これまでウクライナ軍は奇襲でドニエプル河対岸に

「橋頭保」

を築いたが、それ以上前進できていない。

機動力がないのだ。

そこでF16を使い制空権を奪取して、その援護下に装甲車両を渡河させる。

これに成功すれば、へルソン州全域奪還も夢ではない。

するとクリミア半島は目と歯の先。

クリミアの露軍を痛い目に遭わせることができる。

果たして?

ウクライナ軍 東部戦線で後退中 何がまずかった?

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執筆者:

nishi

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