オーストリアの大統領が、極右党首への政権依頼を拒否した。
と言われても、
という方の方が圧倒的に多い。
しかしこれ、自民党の敗北にも匹敵する
「愉快な話」
なんである。
是非、日本の皆さんにも知ってもらいたい。
この記事の目次
オーストリア総選挙
2024年9月29日、オーストリアで総選挙があった。
注目されていたのは
という点。
といのもオーストリアはドイツと同じく景気後退のど真ん中。
この景気後退は2023年から続いており、2024年も改善の見込みはない。
加えて
「絶える事ない難民の流入」
という点でもドイツと同じ。
なかなか有効な経済対策を打ち出せないÖVP(Österreichische Volkspartei/国民党)に対して、
「国民の審判」
は避けられない。
その国民党と連立政権を組んでいる緑の党も、得票率を失うことは確実。
だからといってあのヒトラーを輩出した国が、極右政党を第一党に選ぶのだろうか?
だったら米国と何も変わらない、、。
選挙結果
との心配心をよそに、オーストリア国民は極右政党FPÖを第一党に選んだ。
やっぱりあのヒトラーを輩出した国だけのことはある。
与党の国民党は第二党に留まったものの、先回よりも11%以上も得票率を落とした。
連立与党の緑の党は先回よりも、5.6%も得票率を落とした。
ドイツで今、
「ドツボ」
にはまっている社会民主党(SPÖ)、野党なのに得票率を落として第三党に。
第四党の
“NEOS”
は、ドイツで言えば”FDP”。
お金持ち & 経済最優先の政策を唱えるリベラル政党。
お金持ちが人口に占める割合は低いが、お金持ちは必ず選挙に行く。
言い換えれば、貧乏人ほど投票に行かない。
この為、NEOSは無視できない政党に成長、今回は緑の党を抜いて第四党に躍進した。
ドイツとオーストリアの違い
ドイツでは
「1票でもいいから最大の得票を得た党が、政権を組む権利がある。」
と憲法で決められている。
もし最大の得票を得た政党が、
「連立を組んで過半数を制する見込みなし。」
という場合にのみ、選挙で第二の得票率を得た政党に政権を組む権利がある。
オーストリアではこれが異なり、
「誰に政権を委託するか、大統領が決める。」
となっている。
現大統領は緑の党の出身なので、緑の党に政権を委託することもできる。
でもしない。
でも
「そんなトランプ」
はしない。
そんな事をしたら民主主義の根底が崩れてしまうからだ。
だから通常であれば、第一党になった極右政党に政権を委託する。
だが今回は通常ではない。
果たして大統領はどうする?
身から出た錆
大統領は極右政党の党首、それに選挙で大負けした国民党の党首 & 現首相を大統領官邸に招いた。
勿論、別々に。
謁見後、大統領は
「具体的な連立政権案を示すように。」
と両者に示唆。
ここで極右政党の
「これまでの行い」
が実を結んだ。
自由党は党首キックル氏を筆頭に、これまで他党の政治家を
「ボロクソ」
にけなしてきた。
“unterhalb der Gürtellinie”(ベルトの下)
の下品な非難にも抵抗がなく
「ハイチ移民はペットの犬や猫を食う」
というトランプ並み。
そんな党だから当然、大統領に対しても容赦なく
「大統領は共産主義者だ!」
などと、普段から暴言の連続。
当然ながら国会では選挙に勝っても
「孤立無援」
の状態だ。
そこで大統領に
「連立相手を探せ」
と言われても、組む相手が見つからなかった。
あの”Neos”さえも極右政党との連立を拒否したのだ。
まさに身から出た錆、自業自得だろう。
オーストリア大統領 極右党首の政権依頼を拒否
極右政党が具体的な政権運営案を出せない中、国民党は
「社会民主党を筆頭に、三党連立政権を組む。」
と大統領に報告。
社会民主党も、
「いいよ。」
という返事。
そこで大統領は現首相のネーハマー氏に、政権を組むように依頼した。
その後、大統領はテレビの前でこれまでの経過を報告。
その中で大統領は
「自由党は反社会的、反EU、外国人や女性を敵視、おまけに新ロシア。そんな人物が首相ではオーストリアの名声を傷つける。」
というネーハマー氏の主張をそのまま引用したが、きっと同じ考えだったに違いない。
オーストリア国民はこの大統領の決定に賛同。
勿論、極右政党支持者を除くが。
こうして、
「ヒトラーの二の舞」
は避けられた。
しかし
「次回もうまくいく。」
と決まったものではない。
新政権は難民の流入を止め、景気後退に効果的な手を打たない限り、極右が政権を取ることになる。
果たして?