賃貸物件の「又貸し」には要注意
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賃貸関連法改正 【2015年版】- 賃貸証明書復活!
11月1日から新たな法律が幾つか施行された。その中でもとりわけ大事なのが、”Vermieterbescheinigung”だ。日本語に直訳するなら大家証明書。ここは意訳して賃貸証明書という言葉を使用しよう。これはドイツでアパートを借りた際、あるいはアパートを解約した際に大家が発行すべき書類で、どこの住所のアパートを、何時から、誰に賃貸(解約)したのか記入して、賃貸人に手渡すか、あるいは大家が自分で市役所に届ける必要がある。
しかも新住所に入居してから、2週間以内にこの書類を届ける必要がある。これを、「知りませんでした。」としないでいると、大家と賃貸人の両方に罰金が課せられる。賃貸人には最高1000ユーロまで、大家の場合は最高で5万ユーロまでの罰金と、かなりお高い罰則が適用される。
この新しい法律が適用されるのは、11月1日以降に新居に入居される、あるいは11月1日以降に引越しする場合だ。アパートの賃貸契約はすでに9月に済ましていても、入居が11月からの場合は、この法律が適用される。ただし例外もあり、賃貸期間が6ヶ月未満の場合は必要ない(らしい)。
「そんなことは知らない。」と大家が法律に疎く、書類を発行してくれない場合はどうなるのか?この場合でも原則として、罰金は適用されるそうだ。大家が協力してくれない場合は、2週間の期限が切れる前に市役所に行き、事情を説明してお慈悲を乞うことになる。
廃止の廃止
実はこの法律は2002年に廃止され、これまでは(日本のように)賃貸人が市役所で、「何処何処に住んでいます。」と自己申請するだけでよかった。しかし法律を緩くすると、これを悪用する人間が出てくるもの。すでに引越ししたのに古い住所をそのまま残しておき、新しい住所と古い住所の2つを利用して、生活保護を2度もらう人など、住所の悪用が後を絶たない。それはまだいい方で、架空の住所を犯罪に使用されることもあった。
こうした欠点が明らかになったので、法が改正される、すなわち元に戻すことになった。皆まで言えば、これまでは住民登録は地方自治体の管理下にあり、(ドイツ人の場合)「住民登録は、新住所に住み始めてから1週間以内に届け出ること。」という場合と「2週間以内に届けること。」という場合があった。
住む場所(自治体)によって法律が違うのでは誤解を招くので、11月1日からは住民登録は国の管理に移ることになり、「2週間以内に登録すべし。」という内容に統一されることになった。
又貸し
「私はWGに住むので、関係ないわ。」と思われた方、WGにも新しい法律が適用されます。賃貸について書いたので、ひとつ賃貸に関する誤解を紹介しておこう。ここで紹介した通り、今、ドイツは空前の不動産ブーム。「これを利用しない手はない!」とアパートを借りていたドイツ人女性が、空いている部屋をネットにあげ、観光客などに短期間で部屋を貸して金を稼いでいた。しかし大家の承諾を取っていなかった。ところが見知らぬ人間がアパートに出入りしていると隣人の不審を仰ぎ、この一件がばれてしまった。
大家から、「ただちにやめなさい。」という警告を受けたドイツ人女性、こんなに簡単にお金が儲かる機会を逃す気はないので、これを無視した。すると大家から賃貸契約即刻解約の通知を受けてしまった。「私が借りた部屋に、誰を泊めようが私の自由。」とこの女性は裁判所に訴えたが、負けた。お陰で今度は自身のアパートが必要になった。この件が示すように、賃貸契約書に書かれていない人を継続的にアパートに宿泊させる場合は、大家の事前の承諾が必要になる。
日本への一時帰国に際して、「日本に帰る期間、アパートを貸します。」とネットでアパート、あるいは部屋を賃貸されている方、要注意。大家の許可を取っていないと、問題になりかねません。「2週間くらい大丈夫でしょ?」と思うかもしれませんが、隣人にはすぐにばれます。これを管理人に密告するのはドイツ人の趣味なので、すぐに大家に連絡がいきます。
賃貸契約即刻解約になると、すぐに住む場所がなるばかりではなく、とっても高くつきます。次の賃貸人が見つかるまでの期間の賃貸料も、この解約を引き起こした人間の責任になるので、空き部屋の期間の賃貸料も請求されるという代物。大家から、「○○はやめてください。」という手紙が来たら、まずはすぐにやめて、それから大家と話しをして理解をとりつけよう。無視したり、意地になって抵抗するとろくな目にあいません。
賃貸物件での喫煙
以前、ここで紹介したデユッセルドルフの愛煙家の件も、最高裁判所まで上告されて、判決が出た。大家は愛煙家が換気扇を回しながらタバコを室内で喫煙するので、廊下までタバコの煙が出て隣人の生活を著しく妨げると、40年も住んでいるアパートの契約を即刻解約した。デユッセルドルフの地方裁判所も、これを妥当と判断してた。
しかし最高裁はこの判決を無効として、デユッセルドルフの地方裁判所に再審を要請した。その数ヶ月前に最高裁が、「愛煙家によるバルコニーでの喫煙は、隣人の生活を著しく妨げる場合は制限されるべきである。」と判決しただけに、この愛煙家の「味方」をした判決は、少なからず驚きだった。
最高裁は判決理由として、大家側が主張した、「廊下までタバコの煙が出て隣人の生活を妨げる。」が全く立証されていない点と指摘、ちゃんと証拠を吟味、立証するように厳しい言葉で命じた。すなわち、「部屋でタバコを吸っても、解約されることはない。」というものではないので、愛煙家の方は注意されたし。
皆まで言えば、このドイツで二番目に有名になった喫煙家は、心臓発作を起こして入院中だ。医師は喫煙が原因だという。勝者がいない裁判とは、こういう裁判を言うのだろう。