ドイツを代表する車メーカー メルセデス。
中国の電気自動車メーカーに
“Marktanteil”(市場占有率)
を取られ、売り上げは減少する一方だ。
そのメルセデス、とても危険な賭けに出た。
詳しく解説します。
この記事の目次
対抗策を打てないドイツの車メーカー
賢い中国人、
「内燃エンジンでは勝てない!」
と悟ると電気自動車に
”All in.”(総力戦)。
10年以上かかったが、遂にドイツの車メーカーを追い抜いた。
BYDは世界初の
「1000Vバッテリー」
を搭載した乗用車の販売を開始した。
この車、
ドイツの車メーカーは
「敵を侮った」
せいで、周回遅れにされてしまった。
売れないメルセデスの電気自動車
ドイツの車メーカーの中で、一番出遅れているのがメルセデス。
というのもメルセデスが肝煎りで発表した電気自動車
“EQ”
が見事にフロップ。
毎回、
「ブサイクな車」
が出る度に不思議で仕方ない。
車メーカーは事前に
「売れるかどうか」
市場調査しないの?
それとも社長はアレを見て、
「これは売れるぞ!」
と思ったの?
まあいい。
あまりに売れないので、メルセデスは
「EQ シリーズ」
の継続中止を決めた。
アデイダス 絶好調
その一方で
「メルセデスの正反対」
をやって成功しているドイツ企業がある。
それがスポーツ用品メーカーのアデイダスだ。
通常、アデイダスでは新製品の導入前に高い金を払って、
「マーケテイング」
を依頼する。
その結果に基いて、製造数を決める。
が、社長のグルデン氏は新しい靴を見た途端
「これは売れる!」
と直感。
時間と金のかかるマーケテイングを省いて、製造元に大量生産を命じた。
社長の予想通りアデイダスの
「レトロ スポーツシューズ」
は大ヒットした。
これがニコンなら、
「予想を上回る注文の為、在庫がございません。」
となる。
しかしアデイダスは社長の
「先見の明」
で既に大量生産済み。
お陰で
「濡れ手に粟」
の商売をしている。
それもこれも社長自ら
「販売予定の新製品を見て、その販売戦略を決める。」
という経営姿勢の賜物。
その一方でライバルのナイキとプーマは、メルセデスのような
「殿様商売」
を行い販売減。
株価は過去5年間で最安値を更新。
一方、アデイダスの株価は2月に過去1年最高値を更新した。
社長の采配次第で、企業業績はここまで大きく差が出る!
設備投資でケチる!
メルセデスのもう一つの問題はその生産体制にある。
今回のように
「EQは売れないから、来週からはCクラスの製造に転換する!」
というわけにはいかない。
メルセデスは設備投資の際、
「EQ専用の製造ライン」
を導入したのだ。
その方が安いから。
お陰で内燃エンジン車を組み立てるには、製造ラインを全部、入れ替える必要がある。
これは巨額の投資と時間がかかる。
一方、ライバルのBMWは製造ラインの導入時に奮発、
「内燃エンジン車でも、電気自動車でも組み立てられる。」
という生産ラインを組んだ。
こうした背景があり、
と言われている。
メルセデスのリスキーな賭け
四面楚歌のメルセデス、ケレーニウス社長はここで
「危険な賭け」
に打って出た。
それは販売台数が一番多い
- Aクラス
- Bクラス
の製造を辞めて、
という戦略だ。
二匹目の泥鰌なるか?
このリスキーな賭けは、コロナ禍の
「怪我の功名」
が原因だ。
当時、どの車メーカーも半導体不足で車が生産できなかった。
そこでメルセデスは貴重な半導体を、
「一番高い車種」
の製造に使用した。
すると高い車はマージン率が高いため、メルセデスはフェラーリ並みの20%を超える利益率を達成した。
あれから4年。
コロナ禍はとっくに終焉。
半導体は幾らでも手に入る今、利益率は5~6%まで低下した。
これを見たケレーニウス社長、
と判断した。
そう、
「柳の下に二匹目の泥鰌」
を探す戦略だ。
これが成功すれば、ケレーニウス社長は
「メルセデスを立て直した人」
なる。
が、失敗すれば、
「第二のシュレンプ社長」
になる。
最も安いメルセデス CLA 発表
メルセデスではAクラス、Bクラスの生産中止により、
「最も安いメルセデス」
はCLAというモデルになる。
3月中旬、メルセデスはその
”Brot-und Buttergeschäft”(日々のパンを稼ぐ商売)
となる新型CLAを発表した。
5月から販売開始だが、メルセデスは未だに価格を公表していない。
巷の予想では
「一番安いモデルが4万5000ユーロ」
と言われている。
日本なら800万円ほど。
こんなに高い車が
「馬鹿売れ」
して社長の目論見通り、メルセデス復活の
「のろし」
となるのだろうか?
メルセデスが失敗する理由
これまで一番売れていた
「量産車」
のAクラスは、3万2000ユーロだった。
それが一気に1万3000ユーロも上昇するわけだ。
これまでAクラス、Bクラスを買っていた客はCLAではなく、
「200万円安い」
BMW X1か、
Audi Q3
を買うだろう。
メルセデスの
「高い車を作れば、会社の業績は改善する。」
と思うのは大きな勘違い。
そもそもフェラーリは、メルセデスのように
「年間200万台の生産体制」
なんか組んでいません。
工場の数も社員の数も圧倒的に少ない。
ケレーニス社長はAクラス、Bクラスの生産中止にも拘わらず
「200万台の生産体制を維持する。」
と強気。
しかしCLAはその価格故、販売台数はAクラス、Bクラスには遠く及ばない。
結果、マージン率は改善するどころか、悪化する。
2025年の秋以降、メルセデスは
「業績予測の下方修正」
を迫られるだろう。
それまでに保有しているメルセデス株を売らねば!