2023年1月1日より
“Lieferkettengesetz”
が発効した。
なのに今まで紹介をさぼってきました。
すると早速、名だたるドイツ企業が
「法に抵触した。」
として非難されています。
そこで遅ればせながら、この法律について紹介します。
この記事の目次
安ければいい?
説教がましく聞こえると思いますが、食料品から衣料品、家電製品それに車まで
「安ければ、安いほどいい。」
って思ってませんか?
その希望に応えるため、〇ニクロを始めとしたアパレル業界はこぞって
「世界最貧国」
のバングラデシュに進出。
ここで皆さんが安く買える服を縫っている。
その衣料品裁縫労働者のお給料(最低賃金)は2023年に
「賃上げ」
された結果、1万2500タカとなった。
邦貨で1万6000円ほど。
これが月給だ。
1週間6日、1日12時間働いて。
すると、
「月、1万6000円で生活できるなんて凄い!」
と勘違いする人が多い。
世界最貧国でもこれで生活するのは難しい。
そこで子供も一緒に働かせる。
そのお給料を合わせるとなんとか生きている。
必要悪説
ここから先は意見が分かれる。
日本では
「私が安く服を買う為なら、仕方ない。」
あるいは、
「俺には関係ない。」
と考える人が大半。
当然、ドイツでもそういう人は少なくなかった。
こうした考え方が変わってきたのは、2012年に起きた裁縫工場での火災。
なんと100名以上が焼き殺された。
というのも日本企業やドイツ企業からの
「ノルマ」
を果たすために、労働者が休憩できないように仕事部屋には鍵がかけられていた。
火事が起きれば労働者が焼死する事を承知の上で、工場側が取っている措置だった。
そして火災事故は相次いだ。
その度に数百人の労働者が焼き殺された。
そう、仕事部屋を施錠するのは、バングラデシュの裁縫工場では
「当たり前の措置」
だったのだ。
焼死した労働者の屍が運び出される光景をみて初めて、
「安ければいい。」
という考え方が、バングラデシュの労働者を死に追いやったことがやっとわかった。
喉元過ぎれば熱さを忘れる
こうした凄惨な事故が相次ぐと、
「過酷な労働を強いている工場に発注するメーカーにも責任がある。」
という見方が一般的になってきた。
火災で200名を超える労働者が死んだバングラデシュの裁縫工場で、安い衣料品を製造していたのが
“KiK”
だった。
すると極論に発展、
「KIKが200名を超える労働者を死に追いやった。」
と連日報道。
これでは商売あがったり。
ところが、
「喉元過ぎれば熱さを忘れる。」
で、バングラデシュの労働条件が大きく改善されることはなかった。
Lieferkettengesetz とは?
そこで
「発注するメーカー側に責任を負わせよう!」
という理想を抱き
”Lieferkettengesetz”(下請け企業引責法)
の整備が始まった。
簡単に言えば、
「メーカーは製品の発注先に責任を持つ」
という内容だ。
違反すると高額な罰金を科せられる。
ところがメルケル政権は、
「メーカー側にそこまで責任を負わせるのはやり過ぎ。」
と法整備をストップ。
その(前)メルケル首相は2021年6月、これまでの反対を放棄して国会で下請け企業引責法を通過させた。
ちょうどメルケル政権の末期だったので、
「これまでの罪滅ぼしで、死ぬ前に善行をしたい。」
という犯罪者の思考があったのかもしれない。
その結果、”Lieferkettengesetz”(下請け企業引責法)は2023年1月1日より発効した。
”Lieferkettengesetz”(下請け企業引責法)の内容
ここではわかりやすいようにアパレル業界を
「具体例」
に上げたが、この法律はドイツに会社(GmbH)を置いて製品を販売する企業に適用される。
例えば車。
〇ヨタが
「人権を無視した方法」
で部品を製造しているマレーシアの会社から、部品を買っているとしよう。
マレーシアの最低賃金を労働者に払っていない。
あるいは子供を働かしている。
などなどです。
これが立証されると、世界での売り上げの5%までの罰金を科すことができる。
トヨタの2022年の売り上げは37兆円+。
すると罰金は1.9兆円。
これは痛い。
非難されているドイツ企業
下請け企業引責法は今年の1月に発効したばかりだが、早速、スーパー大手のEDEKAとREWEが
「法律を守ってない」
と非難されている。
バナナ農園で最低賃金が払われておらず、農園で大量に使われる農薬から労働者を守ってないという。
次に非難されたのはBMW。
アフリカにある
「コバルト鉱脈」
で人権を無視した労働環境で労働者を酷使、おまけに環境汚染まで
「やり放題」
だという。
とりわけBMWはホームページで、
「我々は人権を守って、環境に優しい方法で製造しています。」
と宣伝しているのでマズかった。
早速、投資家から非難の嵐だ。
Lieferkettengesetz やり過ぎ?それとも良法?
もし、”Lieferkettengesetz”(下請け企業引責法)で労働者の労働環境が改善されれば、この法律は一定の成果があった。
その反面で、
「やり過ぎ」
という面もある。
今やどんな家電製品を買っても、基盤が入っている。
部品の数は数百。
その部品のたったひとつでも原材料が
「人権を無視して採掘されている。」
となると、法律に抵触する。
これはいくら何でも
「やり過ぎ」
の感がある。
せめて
「最初は警告。2回目から同じ兼で違反すると罰金。」
にしないと、メーカーは世界中に監査官を派遣して、原材料の採掘から工場での生産まで監督しなければならない。
そんなことは無理。
「世界をよくしたい。」
という気持ちはわかるが、ちとやり過ぎ感がある。