2020年はコロナ禍により株価の暴落で
「損切り」
をしてしまい、損益を被った方も居ると思います。
日本では株式取引で被った損益を、
「その他の利益と相殺できる損益通算」
というシステムがあります。
ドイツにも
「似たようなシステム」
がありますが、日本のような親切なシステムではありません。
ドイツ版の損益通算は適応範囲が制限されていて、損益を確定申告で申告できないケースが多いんです。
この記事の目次
ドイツ版 損益通算 制度
ドイツ版の損益通算制度では、(例えば)株式の売却損は株式の売却益としか相殺できません。
このため、
- 預貯金
- ETF売買
- ファンド投資
- 証券売却
から利益が上がっている場合は、
不服の訴え
このドイツ版の損益通算制度を不服として財務裁判所に訴えたのは、シュレスビヒーホルシュタイ州の夫婦です。
夫婦は株の売買により、4819ユーロの損益を被りました。
ところが同時期、ファンド投資により3380ユーロの利益を計上。(*1)
夫婦はてっきり、
「相殺できる。」
と思っていたのに、税務署は、
「3380ユーロの利益に対して、845ユーロの税金を払いなさい。」
と、税金の支払い命令。
「納得できん!」
として訴えたわけです。
財務裁判所 ドイツの損益通算を違法と判断!
財政(税制)上の懸案を取り扱う財務裁判所 / Fianzhof は6月4日、ドイツの損益通算を
「根拠なくして納税者を不平等に扱う規則だ。」
との理由で違憲との判断を下しました。
「やった!これでお金が戻ってくるぞ!」
と思われた方、もうしばらくの辛抱が必要です。
財務裁判所はこの一件を、最高裁判所に送り
「ここで最終判断を行う。」
としたからです。
不服申告
もしあなたが同じような立場にあった場合、
「裁判所が違法だと言ってるんだから、税金の支払い通告には従わない。」
というのは自殺行為です。
誤った税金の支払い命令でも、これに従わないと追徴金を課されます。
そこで取る方法は
- この判例を持ち出して、財務所に不服申告をあげる
- 負けることはないので、訴える
のどちらかです。
不服申告を、財務所が受け入れてくれる可能性はあまり高くありません。
なので結局は税金を払うことになります。
そうでもありません。
1年後に最高裁で同様の判決が下った場合、あなたには多めに払った税金+利子を請求する権利が生まれます。
(おそらく)不服申告をしていなくても、
「不当に払った税金+利子」
を請求できるかもしれません。
でも税務署が、
「あなたは税金の支払い命令に不服申告をあげていなかったので、請求権はありません。」
なんて言った場合、別途、訴訟を起こさなくてはなりません。(*2)
あなたが税務署の決定に対して不服申告を上げていた証拠を、最高裁判所の判決が出るまで、大切に保管しておきましょう。
注釈 – 財務裁判所 ドイツの損益通算を違法と判断!
*1
ファンド投資で利益が出たので、この機会に塩漬けの株を売却損益したわけです。
*2
最近の例ではVW社の排ガス操作をした車の損害賠償請求、古いものでは第二次大戦中の日系人の不当な収容など、不服申告を上げていない人には、請求権を棄却されています。