クリスマス前の12月9日、ドイツ全土で国家転覆を計画していた帝国主義者の一斉摘発が行われた。
正確に言えばオーストリアやイタリアでも摘発が行われたので、
「欧州全土」
で帝国主義者の摘発が行われた。
もっとも日本人には、
「帝国主義者」
と言われてもピンとこないので、最初からわかりすく説明しておこう。
この記事の目次
帝国主義者とは?
帝国主義者とは?
ドイツ語で
“Reichsbürger”
というので、帝国主義者と訳しました。
意味合いからは
「陰謀説信奉者」
の方が近いです。
「ワールドトレードセンターへのテロは、アメリカの自演自作だった!」
という説を信じている人達です。
そもそも
“Reichsbürger”
という名前が付いたのは、
「ドイツ第二帝国はまだ終わっていない!」
と主張しているからです。
第三帝国ではなく、第二帝国の方です。
ヴィルヘルム一世が1889年にパリで樹立を宣言した帝国です。
29年後、第一次大戦は負け戦。
1918年、ドイツは連合国側と停戦交渉に臨みますが、ヴィルヘルム二世は
「退位じゃと?あり得ん!」
と責任を取る事を拒否。
そこで当時の首相が、
「本日、皇帝は退位をご英断されました。」
と、フェイクニュースを流したんです!
これが既成事実となり、ヴィルヘルム二世は本当に退位。
これが原因で帝国主義者は
- ドイツ第二帝国は終わっていない!
- 現在の政権はただのGmbHに過ぎない
- アメリカはドイツの破滅をたくらんでる
などと主張しています。
あなたの身近で同じような主張をしている人が居たら、距離を置きましょう。
Querdenker
その帝国主義者に
「新たな勢力」
として加わったのが、
“Querdenker”
です。
そのまま訳せば、斜めに考える人。
日本人は
「他の人と同じ事をしてれば、間違いない。」
と考えます。
ドイツでこれをやると、
「お前には、意思も意見もないのか?」
と言われます。
「空気を読む。」
のはほどほどに。
すなわち!
ドイツでは周囲の意見に合わせないで、自分で考えて、自分の意見を持つことが大事と考えられます。
ナチスによる大衆洗脳の反省の結果です。
だから
「斜めに考える人」
は、そもそもポジテイブに考えられてました。
ところがコロナ禍でワクチン接種を
「国は毒を国民に注射している!」
という陰謀説を信じてる人が自身を
“Querdenker”(斜めに考える人)
と呼んだため、今では斜めに考える人は帝国主義者と
「同類」
に数えられます。
英語で
“A faser lock together”(類は類を呼ぶ)
と言いますよね。
まさにそのようになり、帝国主義者と斜めに考える人のネットワークが、ドイツ全土はおろか、EU全土に出来上がっていきました。
どうして帝国主義者になるの?
ではどうして、これまでは
「普通の人」
だったのに、帝国主義者になるのでしょう?
ふたつのパターンがあります。
ひとつは低学歴層。
長~い学説を読むよりも、SNSで短いフェイクニュースを読む方を好みます。
正しいかどうかではなく、手軽さが好まれます。
すると、
「えっトイレットペーパーが無くなるの?」
というフェイクニュースを信じてスーパーで買いだめするばかりか、
「第二帝国はまだ終わってない。」
というフェイクニュースを信じちゃいます。
もうひとつのグループは、人生で挫折を味わってこれから立ち直れない人。
自分の挫折を
「他人のせい」
にする理由を探し、
「現在の政権はただのGmbHに過ぎない。」
という理屈に落ち着きます。
自分が悪いのではなく、
「制度・政権が悪いのだ!」
というわけです。
布教活動
帝国主義者+斜めに考える人は、
「今の偽りの政権を打破して、第二帝国を復活させるべきだ!」
と考えます。
そこで自分たちの
「思想」
を広めるため、布教活動に余念がない。
日本の右翼が宣伝車を出して、騒音で市民の生活の邪魔をしているのと同じです。
ドイツ第二帝国の旗を担いでいる人が居たら、大回りして避けて通りましょう。
帝国主義者 国会突入を図る!
米国では陰謀説信奉者が、トランプのフェイクニュースを鵜呑みして国会に突入を図った。
2020年8月29日、ドイツでも全く同じことが起こった。
400人近い帝国主義者と斜めに考える人の集団が警備をしていた警察を押し切って、国会に突入を図った。
幸い警備をしていた警察は、
「多勢に無勢」
と退却しないで、圧倒的な少人数にもかかわらず、
“Huraaaa!”
と突撃、帝国主義者を押し返して国会突入を阻止した。
しかしである。
ちょうど第二次大戦でベルリンを占拠したロシア兵が、ソビエト国旗を翻したように、帝国主義者はドイツ第二帝国の旗を翻した。
民主主義の象徴である国会議事堂が、帝国主義者の扇動に使われた事実に、極右政党を除く政治家は大きなショックを受けた。
その後、国会の警備は厳重になったが、
「開かれた民主主義であるべきだ。」
との考えから、日本の国会のように警察が非常線を張って市民が近寄ることさえ妨げる措置は取られていない。
帝国主義者 国家転覆を図る!?
帝国主義者が旗を翻している程度なら、
”Der hat einen Vogel.”(おかしな奴が歩いているぞ!)
で済んだ。
が、その後、さまざまな暴力事件が起きた。
その頂点が未遂に終わった国会への突入だった。
結果、
「片目が見えていないんじゃない?」
と揶揄されるドイツの国内諜報機関でさえ、帝国主義者の動きを監視していた。
その監視レーダーにひっかかったのが、ヴィルヘルム二世の孫にあたる71歳の老人を国家元首として、ドイツ第二帝国の復活を図っているグループだった。
「逮捕するに十分な根拠がある。」
と検察が判断し、3000人の警察がドイツ、イタリア、オーストリアで一斉に容疑者を検挙した。
陰謀にかかわっていると思われる被疑者は52人。
内、25人の身柄が拘束された。
その中には元警察官、兵士、裁判官、医師、極右政党の政治家が含まれていた。
逮捕者が国民の様々な層から出ていることは、帝国主義者の思想が広がっている事を如実に示している。
逮捕劇は検察が仕組んだショーだった?
ここまで読んで、
「ちょっとおかしくない?」
と思われた方は居ないだろうか。
もしですよ。
本当に国家転覆を図っているグループがいたなら、朝の4時に”SEK”(警察の特殊部隊)が強襲して、有無を言わさず連行。
その後、朝の6時頃になってから、
「本日、国家転覆を図るグループに対して”Razzia”(強制執行)がありました。」
という短い声明が検察本部から出る。
しかるに今回は検挙の現場にテレビ局が同行して、
「今、国家転覆を図った被疑者が連行されていきます!」
と実況中継。
あきらかにおかしい。
この点を聞かれた左翼党の政治家とテレビ局は、
「2週間ほど前に取り締まりが行われると知らされていた。」
と漏らした。
そう、今回の逮捕劇は検察が仕組んだショーだった。
勿論、被疑者が何かを企んでいたということは十分に考えられる。
しかし検察が2週間も前にメデイアに伝えたなら
「国家転覆計画が間近に迫っていた。」
ということはない。
そもそも
「国家転覆計画」
が存在していたのか、それは裁判で明かされるだろう。
今回の検察の取り締まりは、帝国主義者や斜めに考える人に対する
“Rufmord”(名声のぶち壊し)
が目的であったように思える。
テレビカメラの前で手錠をかけられて連行されれば、最後は無罪でも
「信用はぶち壊し」
になるからだ。
それともあなたは国家転覆を図った廉で、テレビの前で連行された人物に、あなたの預金を預けますか?