コレ(女子アナなし。親父だけ)がドイツの渋い公共放送だ!
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ドイツの公共放送
日本でもNHKの番組数が増えてきたが、ドイツにも数多くの公共番組がある。一番有名なところではZDFとARDで、チャンネルの1番と2番を占めている。これに加えて16の州がそれぞれ独立した放送局を運営しており、さらにはニュース専用チャンネル、”Phoenix”などもあり、全部数えるとその数は90チャンネルほど。国営、あるいは州営なのに、24時間放送しており、深夜になってもNHKのように国歌が流れてお休みになることがない。
これらのテレビ番組の運営費は市民が払う”Rundfunkgebühren”(電波受信料)でまかなわれている。ちなみに “Rundfunk”とは、電波を利用して画像、動画、音声などを送信することを包括して表す言葉だ。ドイツに住む日本人は誤解して、「ドイツのラジヲ受信料」と呼んでいるので、聞いたことがあるかもしれない。
受信料
ドイツの公共放送の受信料は2018年の時点で、17,50ユーロ/月だ。この料金はWohnung(アパート)当たりの料金なので、一人で住んでいても、家族5人で住んでいても、シェアハウスなどで20人で住んでいても、同じ料金になる。
ドイツに留学して学生寮などに住む場合、住民登録の時点で「シェアハウスです。」と申告することをお忘れなく。申請をしていないと、シェアハウスに住んでいても、相手にはこれがわからないのでちゃっかり支払い請求が届きます。尚、アパートを借りて住んでいるのに「ここはシェアハウスです。」という方法は使えません。
また失業保険、生活保護、通称 Hart4の支給を受けている人は、受信料の支払い義務から解放される。これもちゃんと申請することが必要で、「失業したら自動的に支払いが来なくなる。」というものではありません。そして奨学金を受けて大学に通っている人も、支払い義務から解放されます。奨学金をもらいながら、自分のアパートに住んでいるケースはまずないと思いますが。
GEZ とは?
この受信料を取り立てる、もとい、集金する機関が “Gebühreneinzugszentrale”だ。もっとも正式名称で名前を呼ぶ人はおらず、ドイツ人は憎しみをこめて”GEZ”と呼ぶ。何故、憎しみをこめて呼ぶのか?それは「国営放送なんか見ないのに、何故、料金を払う必要がある。」という、日本でもおなじみの論拠が故だ。日本ではこの論拠でNHKの集金係りを退却している人もいるらしいが、ドイツでは不可能だ。
新しい町に引っ越して、「しばらくは受信料を節約できるかな。」などと淡い期待を抱いていると、「あっ」と言う前に請求書が郵便受けに届いている。一体、何処から住所と名前を知ったのだろう?答えは意外と簡単。GEZは毎月、住民局から転居人のデータをもらい、ほとんど自動で請求書が出て行く恐ろしいシステムが確立しているのだ。多くの日本人はこの請求書が届いてから、「 GEZ って何?」から疑問が始まり、「よく知らないから無視しちゃえ。」と払わない人が意外に多い。
受信料を払わないとどうなる?
中には、「じゃ、受信料を払わないとどうなるんだ。どうせ何もおきやしない。」と高を括っている兵もいるが、真似しないほうがいい。支払い要求を無視すると、再度、支払い喚起の手紙が届く。この頃には受信料に小額の手数料が上乗せされている。それでも無視していると、今度は”Mahnung”(警告書)が届く。今度は警告手数料が上乗せされており、請求額がかなり上昇している。大概の日本人はこの辺りで根気負けして払う。だったら最初から素直に払っていたほうが、ずっと安く上がった。
もしそれでも払わない頑固者の場合、この請求書は借金強制取立人に引き継がれる。「もう逃げ切った。」と安心している頃、裁判所から派遣された強制取立人がやってきて、料金と裁判所の手数料を要求する。この頃には請求額は受信料の数倍になっている。「毒を食らわば、皿までも。」とさらに悪あがき、「金がない。」と嘘を言うと、部屋の中の家具等を指し押さえられる。金目の物がなければ、銀行口座を凍結されてしまい、借金を払うまで口座にアクセスできなくなる。「だったら、アパートには入れない。」なんて無駄な抵抗はしないほうがいい。強制取立人は裁判所から発行された取立て状を持っているので、部屋に入る権利を持っている。呼び鈴を無視していると、錠前屋がドリルで部屋の錠前をガリガリと壊しす音が聞こえてくる。
この頃になって居留守を諦めてドアを開ける人もいるが、すでに時遅し。ドアの鍵まで壊れて、テレビかパソコン、あるいは携帯電話など、借金の肩代わりになるものを差し押さえされる。さらには “Schufa”に、「この人は借金を払わない。」と記入されて、信用性ががっくり下がる。アパート探しで大家が「”Schufa”の点数を見せて。」と言われると、点数が低くてアパートは貸してもらえない。さらには将来、銀行で借金をする際、スコアが低いとお金を貸してもらえないか、貸してもらえても高額な返済保険に入ることが条件となる。それもこれもわずか17,50ユーロの受信料の支払いを拒んだが故。
最高裁での判決
これだけ言っても、「俺はGEZは絶対に払わない。」と意地になって譲らないのがドイツ人。地方裁判所や高等裁判所での判決(すなわち負けた)を不服として最高裁判所まで訴えた。2018年7月、最高裁は公共放送の受信料はドイツの基本法と合致するもので合法であるとの判断を下した。
参照元 : Frankfurter Allgemeine
最高裁はその理由を以下のように述べた。宣伝を収入源としているメデイアには厳密な意味での公平さ、正確さを期待することは難しい。フェイクニュースがあふれているこのご時勢だからこそ、宣伝収入に左右されず、時間をかけて事実関係を洗って公平な報道を行なう公共放送の意義は大きいとした。この判決により、公共放送の受信料の支払い義務が確定したので、もう支払いから逃げることは不可能。素直に払ってください。
修正点
とは言え、最高裁は現行のGEZの取立て方法について、修正点も要求した。それはよりによって、お金持ちの場合。複数の家屋を所有している場合は、所有者が一回払うだけでよしとされた。まさかドイツに幾つ物家屋、アパートを所有している方は居ないと思いますが、念のため。