2025年5月、国産旅客機 Dornier 328 が遂に復活した。
90年代に開発されたこの旅客機、200機以上の飛行機が納入された。
しかしあけなく倒産。
あれから20年ほど経って、遂に復活を果たした。
この記事の目次
飛行機設計士 ドルニエ
まずは
という方に、名前の説明をしておいたほうがいいだろう。
ドルニエは戦前から戦中、戦後にかけて名前を馳せたドイツ人の飛行機設計士。
その代表作は、今日まで
「語り草」
になっている
”Do X”
あるいは幻の名機
“Do335”
戦後も軍用機の設計を続けた。
天才設計家とは対照的に、子供達は設計は勿論、会社経営の才能にも恵まれていなかった。
創設者の死後、会社の経営は急速に悪化、ダイムラーベンツに買収された。
国産旅客機 Dornier 328
そのダイムラーベンツ時代に開発された国産旅客機がDornier 328だ。
正確に言えばダイムラーの航空・宇宙分野を担う
”DASA”
の傘下にあった
“Dornier Luftfahrt GmbH”(ドルニエ航空有限会社)
により開発された国産旅客機だ。
三菱重工の
「日の丸旅客機」
と異なり、ちゃんと型式証明を取得して200機以上が顧客に届けられた。
しかし経済的には成功しなかった。
あまりに最新鋭の技術を詰め込んだ為、価格が高騰した。
これでは売れないので、
「赤字販売」
を余儀なくされた。
計画では
という楽観的な予測。
そんな自転車操業の中、米国で旅客機を使ってテロが起きた。
これにより注文がキャンセルされて、黒字になる見込みがなくなった。
ドルニエ航空はDornier 328を217機を生産した時点で、倒産となった。
Sierra Nevada Corporation
会社は倒産したものの、全部が倒産したわけではない。
飛行機の修理や部品販売など、顧客へのサポートを行う、
“328 Support Services”
は倒産の憂き目に遭わず、事業を続けていた。
2015年、米国の
“Sierra Nevada Corporation”
が、
「ドルニエ328サポートサービス社」
を買収した。
というのも、
- すでに開発に成功して
- 型式証明を取得して
- 顧客の評判も良かった
飛行機をこのまま諦めるのは、もったいない。
そこでパテントと部品を持つこの会社を買収して、
「Dornier 328を復活させよう!」
と目論んだ。
国産旅客機 Dornier 328 復活!
2018年、”Sierra Nevada Corporation”社は
“Deutsche Aircraft GmbH”(ドイツ航空機有限会社)
と名前を変えた。
2019年、ドイツ航空機有限会社は、
“D328 Eco”
の製造計画を発表した。
特徴
Do328 EcoはかってのDornier 328を
「そのまま」
復刻させたわけではない。
まずは胴体が2.1m長くなり、全長23.31m。
客室も新しくデザインされて10席増えて、46座席を提供できる。
コックピットも新しくなり
“Single Pilot Certification”(一人のパイロットで運営できる必要条件)
を備えている。
そして一番の
「目玉商品」
がエンジン。
D328 eco という名前からわかる通り
「燃料節約エンジン」
であるターボプロペラエンジンの
“PW127XT”
を積んでいる。
このエンジンは
- 合成燃料でも大丈夫
- 低燃費
- “wartungsarm”(整備が少ない)
- 原っぱでの離着陸が可能
事がウリだ。
すなわち!
運用する航空会社には経費が節約できて、整備が少ないため、運用時間が多くなる。
国産旅客機
D328 eco の部品製造、および組み立てまで、すべてドイツ国内で行われるので、
「国産旅客機」
である。
勿論、エンジンは除くが。
ちなみに組み立て工場は、ドルニエ時代から使っている、ライプチッヒ・ハレ空港のハンガーを使用する。
久々の国産旅客機の復活に、とりわけ喜んでいるのはバイエルン州の政治家。
というのもドイツ航空機有限会社の本社は、ミュンヘンの西にある
“Oberpfaffenhofen”(オーバーパッフェンホーフェン)
にある。
部品の製造もバイエルン州で行われるため、州知事は
「少なくとも300の雇用が生まれる。」
と、ほくほく顔。
航空市場席捲なるか?
言わずもがな、Dornier 328 ecoが目指すのは、国際線市場ではない。
満タンにすれば2000Km飛べるが、目指しているのは都市間の
“Zubringerflug”(経由便市場)
を独占している仏伊産の
”ATR42”
の後釜だ。
欧州の都市間での移動に多用されているこの航空機、最初の製造はなんと80年代だ。
他に選択肢がないので、今日まで最も都市間でのフライトで採用されている。
が、事故が多発。
これまで41もの
「全損事故」
と
「死者292人」
を出した、あまり乗りたくない経歴を持つ。
言い換えれば、D328 eco が登場すれば
「楽勝」
できる相手だ。
ドイツ航空機有限会社によると、
「2026年1月には最初の飛行機を納入予定」
だそうだ。
勿論、
「日の丸国産旅客機」
と違い、Dornier 328 eco はとっくの昔に
「型式証明」
は取得済み。
今度こそ、成功するか?
成功すれば、久々の新たな国産旅客機会社の誕生になる。