ドイツではマイナス金利が長期化して、一部の銀行では最初の1ユーロからマイナス金利を徴収される始末!
参照 : sueddeutsche.de
折角、働いて溜めたお金が、使ってもいないのに毎月、減っていくのは辛い!(まだ)マイナス金利が導入されてない銀行でも、利子なんてないも同然。
物価の上昇を考えると、実質、お金を失っています。これに対抗するには投資あるのみ(個人の意見です。)
そこで今回はドイツで始める株式投資で、必要になる基礎知識を幾つか紹介したいと思います。
この記事の目次
ドイツで始める株式投資 – 素人は証券よりも株
素人は証券よりも株を買おう。でも、そもそも証券って何?
あなたが金(きん)のファンで、これに投資したいとしましょう。勿論、金貨や金の延べ棒も買えますが、
参照 : shop.degussa-goldhandel.de
数十グラム程度では効率が悪く、手数料が高く、売買の際にお金を失います。金を買うなら最低でも100g以上、できれば500g、1Kgの延べ棒にしないと、儲かるものではありません。
500g 以上の金なら手数料が安く、儲かるチャンスも高い。でも500gだと、2万2000ユーロもします。もっと安く投資できないものか?
ここで登場するのが証券です。
証券 クセトラ ゴルト /”Xetra-Gold”
証券とは、銀行や銀行業の認可を受けているブローカーが発行する商品券です。ドイツで一番有名な金の証券は、”Deutsche Börse”というドイツ最大の証券取引所が発行している金の証券です。名前はクセトラ ゴルト /”Xetra-Gold”
参照 : xetra-gold.com
これなら(今なら)47ユーロほどで買えます。証券の価格は金の価値の動向に直結しており、金の価格があがれば、証券の価値もあがります。それに金を現物で所有するのと異なり、泥棒に入られても、盗まれる心配がない!
さらに、「現物が欲しい!」という場合は、証券を現物に変え、自宅まで送ってもらうこともできます。もっとも証券1枚では、現物の送付が無理なことは、言わないでもわかる筈。
証券ブローカー PIM GOLD – 消えた2トンの金は何処に?
ドイツ人は基本ケチ。株式投資には、日本人よりも消極的。しかし光物が大好き。このドイツ人の心を掴んだのが上述のクセトラ ゴルト。大ヒット商品になってます。すると真似をする輩が出てくるのは時間の問題。
その中に、「もっといい金の投資がある。」と口コミで広まった、金のブローカー “PIM GOLD”が発行していた金の証券がある。「手数料がクセトラ ゴルトよりも安くて、儲かる。」と、ドイツ人のハートを捉えた。
2019年9月、検察がこのブローカーのオフィスを強制捜査した。金庫には投資家から集めた金で買っている筈の金が、3.38トン金庫にある筈だが、2トン以上も足らなかった。
参照 : boerse.ard.de
金庫にあった金は「見せ金」で投資家に見せるために、保管していただけ。この「見せ金」に納得して新しい投資家を獲得すると、その金(かね)で金(金)を買わず、古い投資家への配当金に充てた。しかし大部分は海外での資産購入に充てていた。
そう、典型的なねずみ講だ。しかし素人投資家は「儲かる話」に釣られて、1万人もの投資家が”PMI Gold”に投資した。
ドイツに住んでいる人なら、自分で探せば、ここで紹介している証券よりも、もっといい(ように見える)証券が見つかります。でもおいしい話には、かならず裏があります。誰も好き好んで、お金をばら撒く人はいません。儲けに目がくらんで、よりいい投資を探すと、往々にして痛い目をみます。
証券を勧めない理由
証券を勧めない理由は、他にもあります。証券を買うと、これを出している会社が手数料を取ります。このため金の現物に比べて、証券の利鞘は低い。しかし証券の最大の欠点は、配当金がない事。
株を買えば、株の発行元の会社が配当金を払ってくれます。配当金が出ていれば、少々、株価がマイナスになっても我慢できます。でも証券は配当金が出ないので、赤字になるととっても辛い。ですから初心者の内は証券ではなく、株に投資しましょう。
ドイツで始める株式投資 – 配当金事情
ドイツでは配当金は年1回、4月~5月に開かれる株主総会の翌日に配当されます。2~3日後にはあなたの入金されます。米国や日本の(一部)の企業のように、年数回に分けて配当されることは、ほとんどありません。又、日本特有の株主優待券もなし。
この低金利時代、配当金は口座に金を眠らせておくよりはるかに効率がいい。配当額だけでみれば、Muenchener Rueck AGは1株にたいして、なんと9,25ユーロも配当金を払う。株価はとっくに200ユーロを超え、260ユーロに迫っているが、配当金も高いので配当率は4,8%。
高配当率で見ると、電話会社がトップを占めている。その中でも”Freenet“は、1,65ユーロ/株の配当金を払ってくれる。
「たったそれだけ?」と思うかもしれないが、株価は20ユーロで安値安定してるので、配当率はなんと9%+。定期預金や、個人年金に入るよりはるかに効率がいい。
配当金の出ない企業
「証券ではなく、配当金の出る株を買え!」と勧めましたが、株を買えば、配当金が出るというものではありません。
2019年はドイツ企業にとって、厳しい一年でした。中には業績目標を三度も上昇修正した”Varta“のような企業もありますが、そんな会社は稀で、社員の解雇を発表する会社の方が多かったです。とりわけ銀行、車業界、製造業には厳しい年だった。
それでも車メーカーはまだ黒字を出しており、配当金を払う。製造業界は、生き残りをかけて戦っているドイツの軍産複合体の”Thyssen Krupp“以外は、配当金が出るはずだ。
一番ひどいのは銀行業界で、ドイツ最大のドイツ銀行は再編成の為、目も当てられない大赤字。これで5年続きの赤字となり、2019年 & 2020年は配当金を払えない。
配当金を減額、あるいはストップしている企業は、台所事情がしんどい証拠でもあるので、大きく迂回しましょう。
投資先選び – 素人はETF
株への投資で命運を分けるのが、
- 銘柄選び
- 投資する時期選び
です。
1.はなんとなくわかりますが、2.は何故ですか。
投資ですからね。安く買って、高く売らないと、利益がでません!
当たり前じゃないですか!
その当たり前ができれば、皆、株でお金を稼いでお金持ちになっています。その当たり前ができないのが、現実です。
何故ですか。
大クラッシュ(暴落)が来て、株価が大きくさがると、怖くて買えないんです。一方、株価があがると、「俺もこの機会に。」とすでに上昇している株を買い、その後、株価が落ちて損。そのまま待っていれば株価があがるのに、我慢できずに損切り。
結局、高いときに株を買い、安いときに売るという致命的なエラーを冒します。
投資を考えている方は、1年くらいの時間をかけて、修正やクラッシュで株価が下がるまで待ちましょう。待てば海路の日和ありです。
銘柄選びはどうすればいいの?
素人には(プロでも)、将来、伸びる株を選定するのは(ほぼ)不可能。ドイツで最初に投資するなら、ドイツのトップ30企業だけが上場されている”DAX”に投資しましょう。
どうすればいいの?
銀行や証券会社が各社、”DAX”に均等に投資してくれる”ETF”という証券を出しています。これを買うのが一番です。
証券は駄目って上で書いていたじゃないですか。
”ETF”は例外です。
何故ですか。
まず手数料が0.08%と、けた違いに安いです。1000万円投資しても、たった8000円の手数料!おまけにいくつかの”ETF”は、購入手数料もゼロ!日本だったら、株を買うだけで銀行手数料がウン万円ですから、天と地の違いです。
そして”DAX”の”ETF”なら、配当金が出ます!だから”ETF”は例外です。
売却時期
利益を出すために株や”ETF”を買うのですから、高値で売らないと儲けはでません。そこで売る時期が問題になるのですが、ここでも先駆者の失敗から学びましょう。
「5月まで待てば配当金がでるので、そこまで待って売ろう。」と考えるのが素人投資家。気持ちはよ~くわかりますが、往々にして最悪の結果になります。
伝統的に4月~10月は、株価が乱高下する時期。一方、11月~3月は配当金を期待して買い注文が多く、株価が上昇する時期。
このため株価が高値に達したなら、俗に言う「年末ラリー」、あるいは、「クリスマスラリー」の前後で売るのが賢明。勿論、この時点で高値になっていればの話ですよ!
売り損ねました!
売る機会を逃して持株が赤字になってしまったら、損益を限定するために赤字で売るよりも、”Aussitzen”(じっと待つ)方が素人には得策です。待っていれば、大方の株は黒字に転換します。
もっといいのは、株価が下落したときに、株を損切りするのではなく、逆に買い足すこと!1年して株価が回復すれば、儲けも倍増します!
ドイツで始める株式投資 – 源泉徴収 / Abgeltungssteuer
運よく株、あるいは証券を売って利益が出ると、税金を支払う必要があります。「えっつ、どうすればいいの?」と、悩む必要はありません。株を売買するために口座を開いた銀行が勝手に(自動的に)税金を計算して、税務署に納めてくれる。
これに関して2009年から新しい税法である源泉徴収 /”Abgeltungsteuer”が導入された。
源泉徴収の内容
2009年以降に購入した有価証券の売却で利益が出た場合、この法律に沿って自動的に税金を儲けから天引きされます。その税率は25%と、不思議なことに日本よりも安い。
もっともこれに“Solidaritaetszuschlag”という、日本で言えば東ドイツ復興税みたいなものが1.3%加算される。
もし、「私はクリスチャンです。」と公明最大に公言していると、教会税が2%ほど加算されて、合計で28%少々が天引きされる。ところがこの税金、源泉徴収を払いたくない人が多い。
バイエルン ミュンヘン会長の脱税劇
「そんなに天引きされるのは嫌だ!」とスイスやヒテンシュタインに現金を持ち込んで税金を節約するお金持ちが跡を立たない。
2013年に発覚したケースは、とりわけ注目を浴びた。日本でも知る人の多いミュンヘンのサッカークラブ、バイエルン ミュンヘンの会長のヘーネス氏が、スイスの口座を使って投資、ここから上がった利益から税金を収めていなかった。
詳しい事情は不明だが、氏が資金隠しをしている事が、タレコミで週刊誌にバレてしまった。威張り散らす氏の態度に我慢ならなかった、氏の近辺の人間が情報を流したのかもしれない。
週刊誌で財産隠しが報道されると、会長は脱税容疑で捜査が始まる前に、なんとか誤魔化すべく弁護士を使って工作を開始した。
Selbstanzeige / 自己告発
ドイツでは「節税がばれた?」と思ったら、税務署に、「○○ユーロ脱税しました。」と”Selbstanzeige”(自己告発)をすることで、法的な制裁をまぬかれることができる。
それには脱税した額を正確に、その根拠となる資料と共に税務署に提出する必要がある。申告した額が誤っていたり、申告が税務署に届く前に税務署に脱税がばれて捜査が始まった場合は、自己告発は無効となる。
上述の例では、ヘーネス氏の弁護士が自己告発した脱税額は、(たったの)3百8千万ユーロだった。ところが実際の脱税額は、なんと2千7百万万ユーロ(法貨で38億円に相当)を超えていた!当然、自己告発は無効とされ3年半の実刑判決が下った。
ドイツで始める株式投資 – 外国口座ならバレない?
欧州は統合されているので、ドイツに住んでいてもオーストリアやフランスなどの隣国に銀行口座を取得する事ができる。特にベルギーはデユッセルドルフから車で20~30分で行け、ルクセンブルクはアーヘンから車で数分で行ける上、投資などで儲かった利益にかかる税率がドイツより低いので、ドイツ人に人気がある。
が、ここで「無駄な税金を節約しよう!」と思っても、すでに時遅し。欧州連合は統合により金(かね)の動きを容易にしたが、そのマイナス面にはすでに対抗措置を打っている。
例えベルギーやオランダに口座を作ってここから投資で利益を得ても、住民登録をしている国の税率が採用されるのだ。すなわちドイツに住んでいれば、26.3~28%程度のドイツの税率が天引きされて、ご丁寧にもドイツの税務署に、「ドイツに住んでいる人の税金です。」と税金を納めてくれる。
スイスやリヒテンシュタインの銀行でも、口座保持者のデータがドイツの税務署に届くので、資産隠しには向いていません。例外はオフショアの脱税天国。
課税免税申請 / Freistellungsantrag
もっとも、「脱税するほどの金はない。」という人も少なくなだろう。すると、「日本のNISAのような小口投資家の免除制度はないの。」と聞きたくなる。実はこれがあるんである。
ドイツ語では” Freistellungsauftrag”と言う。これは貯蓄の金利、配当金、株などの売買利益などの合計が801ユーロまでであった場合、課税の対象にならないというもの。
夫婦であれば、その倍、1602ユーロが非課税になる。投資額、あるいは貯蓄している金額ではなく、所有している財産から得た利益の額面により、課税する必要があるかどうか判断される。
この課税免除制度を利用したい場合は、口座を持っている銀行でこの申請をする必要がある。口座を作った際に、同時にこの手続きも済ませておけば、後で煩わしくない。
うっかりこれをやっておらず、配当金などが入ってくると、銀行は自動的に源泉徴収 /”Abgeltungsteuer”を26.3~28%差し引いて、税務署に払い込んでしまう。
源泉徴収 / Abgeltungssteuer 法改正
2021年から東ドイツ復興税が廃止されます。
なれば国の税収入も減ります。そこでドイツ政府は2021年から、これまでの源泉徴収 / Abgeltungssteuer に変わる新しい税制を整備しようと、その準備中です。
計画通りに行けば、2020年に法案が国会に出されて可決され、2021年から施行される筈。そうなったら、またここで紹介することにします。
大事なことは、法改正の前に買った株に対しては、売却するのが2030年になっても、現行の法律が適用される事。すなわち2020年の間に株を買っておけば、東ドイツ復興税も払わなくていいし、取り分は大きくなります!