今回はコロナウイルス 関連ニュース集 【最新版】 です。
日本でも日々、コロナウイルスに関して報道がされていますが、「欧州のコロナウイルス感染状況」と言えば、感染が蔓延して医療崩壊したイタリアか、特派員の居るロンドンからパリだけ。
ドイツの情報に関してはかなり稀で、メルケル首相の発言が10秒ほど紹介されただけ。ドイツ留学を控えているから、「ドイツの今の状況を教えてください。」というご要請を、何度かいただきました。
そこで今回はコロナウイルス関連で、ドイツで報道されているニュースを個々に紹介していきたいと思います。
この記事の目次
制限解除 – コロナウイルス 関連ニュース集
オーストリア政府は4月14日からホームセンターや小規模店舗の営業を許可しました。今後、感染の拡大がなかれば5月1日から大規模店舗(百貨店、モール等)、飲食店や理髪店などの営業も許可される見通しです。
これを見たドイツの産業界も政府に陳情を申し入れ、NRW 州知事は制限解除の計画を早急に立てることを要求。しかしメルケル首相は「制限解除の議論をする段階ではない。」とこれを一蹴。しかしながらオスターン(英語圏ではイースター)のお休み後、4月15日に州知事とテレビ会談にて制限解除について協議するとしました。
5月4日(月曜日)から(一部)制限解除
州知事との協議の結果、来る5月4日(月曜日)から、これまで課されていた制限が一部解除されることになりました。その主な内容は以下の通り
- 学校は修了試験のあるクラスから再開
- 理髪店は感染予防対策をした上で全土で営業可
- バスと電車ではマスクの装着を推奨(数が足らないので義務とならず)
- 800平方メートルまでの規模の店舗、自動車、自転車販売店、本屋などは4月20日から営業可
- 大規模な催し物は8月31日まで控えるべし(州が最終決定権を持つ)
肝心要の外国人の入国制限はEU委員会が5月15日までの延長を提言。「決定は各国の判断」としています。ドイツ政府はこれに関して、まだ決定を下していません。この為、現時点では5月15日まで入国が制限されるとみておいたほうがいいです。
オーストリア マスク装着義務を導入!
オーストリア政府が導入したマスク装着義務は、ドイツでも大きな話題になりました。
参照 : volksblatt.at
すると、「ドイツも同じようにマスクを義務化するべきじゃ?」という意見が出ます。その意見に対してドイツの厚生大臣は、「効果があるなしは横に置いても、一体、数千万枚のマスクを何処から調達する?不可能だ。」と、一蹴しました。
ロバートコッホ研究所は、「マスクで感染から身を守ることはできない。感染者がマスクをすれば、感染を防げるだけ。」と、医学的な見地からマスクの効果に関して学者らしい分析を行った後、「もっともマスクをしていると、口にさわらないという利点もある。」と、一定の効果を認めました。
アベノマスク / Anenomask についても短く報道されていましたが、オーストリアのマスク装着義務化ほどの「騒ぎ」では、なかったです。
何故、ドイツは医療崩壊しない?
ドイツでは毎日、6000人を超す新しい感染者が出ているのに、医療崩壊していません。何故でしょう?それは別の箇所でも述べた通り、感染病のマスタープランが出来上がっているからです。そのプランでは、「重症患者のみ集中管理病棟にて治療する。」となっています。軽傷の患者は隔離施設にいれられるだけ。
こうしてドイツ全土に備えられている4万台もの人口呼吸器を重症患者に集中して投入、死亡率を低くおさえることに成功しています。
日本は医療施設の崩壊を防ぐため、今になって隔離施設の確保を始めました。すでに1月末の時点で感染者が出ていたのに、何もしてきませんでした。感染病が発生した際のマスタープランがないので、いつも後追いの対応。サース(それともサーズ?)など、これまで流行った感染病から何も学んでない?
上述の人口呼吸器にしても、日本で投入できる数は1万4000台程度と見積もられています。
参照 : ロイタース
圧倒的に数が少なく、感染者が増えた場合には、バタバタと患者が死んでいきます。今になってようやく数を増やそうとしていますが、病院任せ。ここでも完全に後手に回っています。
一方、ドイツではすでに先月の時点で人工呼吸器を備えたベットを用意すると、600万円の報償金をだしています。この措置のお陰で医療崩壊を防いだばかりか、隣国からの患者を受け入れるなど、医療体制にまだ余裕があります。
米国、ドイツ向けの医療マスクを横取りす!
そのドイツでも不足しているのが、医療関係者への医療マスク。日本同様に中国に注文する形なので、届かないんです。ようやくベルリンの警察向けの20万枚のマスクが発送され、「やっとこれで一息できる。」と思ったのもつかの間、マスクはバンコクで米国政府によって横取りされます。
参照 : tagesspiegel.de
ベルリンの内務省は、「米国による海賊行為だ!」と怒ってます。ブラジル、カナダ、フランスも同じような目に遭っており、米国の自分勝手な政策を非難しています。非難だけでは事態は改善しないので政府は、「マスクの国内生産を補助金で推奨する。」と、声明を出しました。
財務大臣曰く、「作りすぎて売れ残るという心配はない。今後も国内、世界で十分な需要が見込まれる。」と、国内生産量を補助金で一気に高める意向を表明しました。
【最新】 コロナウイルス 感染率の限定に成功!
4月3日、ロバートコッホ研究所は、「施策が効果を出している。感染者数は依然と多いものの、ウイルス再生率 / Virus-Reprodktionsrate を1に限定することに成功した。」と発表しました。
参照 : tagesschau.de
感染率が1になると、一人の感染者が移す数は一人に限定されるため、感染者数の増加に歯止めがかかります。今後、感染者数は一定期間高止まりした後で、減少に転じると期待されています。
ドイツ全土感染地図 – コロナウイルス 関連ニュース集 【最新版】
「コロナ ミュンヘン」などと検索されいる方が多いので、ロバートコッホ研究所が作成したドイツ全土感染地図をご紹介します。
重いです。早いネット環境のある自宅で見た方がいいと思います。一番左に感染が特に多い街、あるいは県 /”Landkreis”が表示されています。現時点ではトップ3はミュンヘン、ハンブルク、ケルンです。
じゃ、ミュンヘン、ハンブルク、ケルンは危険なの?
必ずしもそういうわけではありません。これら3都市は100万人を超える大都市です。当然、感染者の数も多くなります。そこでその右にある地図で、人口10万人あたりの感染者の数で感染地図が作成されています。
感染の危険が高いのは色の濃い街、あるいは県です。一番感染の危険が高いのは、ドイツで感染が拡大することになったベルギー国境の田舎町、ハインスベルクです。この街では人口10万人あたり、512名の感染者。一方、左の表でトップのミュンヘンでは人口10万人あたり、194名の感染者です。
何故、ドイツは致死率が低い?- コロナウイルス 関連ニュース集
ドイツにおけるコロナウイルス感染者の数も、日々、うなぎ登りです。4万人近い人が感染しているのに死者の数が少ないので、「どうしてドイツは致死率が低い?」と謎に思っている方が多いです。その答えは意外とシンプルで、感染者を早く見つけているからです。
日本のように「重症化していないと、PCR テストは行わない。」という施策では、テスト結果が陽性で入院しても、死亡する例が次々に発生しています。措置が遅すぎます。ウイルスが体内で蔓延する前に早くテストを実施、患者に医療措置を施せば、致死率は下げることができます。
そこでドイツではPCRテストの検査数を増やしているので、医師の判断ですぐにテストを行うことがでます。
日本と同じでは?
日本では医師がテストが必要と判断しても帰国者・接触者相談センター、あるいは保健所が認可しないと、テストしてもらえません。
何故ですか?
テストのキャパ(実行能力)が低いので、保健所は集団感染が発生した際に濃厚接触者をテストできるように、少ないテスト能力を温存している為です。
PCR テスト ローラー作戦開始!
コロナウイルスの蔓延を遅らせるには、
- 感染者を早く見つける
- 人の移動を制限する
ことが欠かせません。日本では濃厚接触者に限ってPCR テストを実施していますが、テストの数が少なすぎて、無症状の感染者を見つけることができません。そこで人に移動に至っては、「自粛」で抑え込むのが日本独自の戦略です。
勿論、ドイツでも濃厚接触者に対して PCR テストを実施しています。しかしテスト能力が高いため、テストの対象は濃厚接触者に限られていません。感染が疑われる場合は、片っ端からテストしています。1日あたりのテスト件数は、なんと5万8000件。
参照 : mta-dialog.de
ところがまだここで終わりじゃないっ!危機対策本部はテストの数を大幅に増やすことを決定、4月から PCR テストのローラー作戦が開始されました!
この作戦の目的は、新型コロナウイルスに感染しているものの、無症状のために平気で歩き回りウイルスをまき散らす感染源を早期に見つけだし、隔離すること。現在のテストは1日10万件。1日で日本の過去3か月分のテスト件数を超えますが、これで終わりじゃない!
「韓国では1日40万件のテストをしている。」と報道されると、「今月中にテスト能力を1日あたり50万件に増加する。」と豪語。その目的は韓国に負けたくないという意地ではなく、無症状の感染者を一人でも多く見つけて隔離すること。
日本人だからこそできる自粛要請は、ドイツ人相手には無理。そこで片っ端から市民をテストしていく方針です。日本の自粛戦略とドイツのローラー作戦。どちらの作戦が効果が高かったか、夏までにはわかりそうです。
コロナウイルス 関連ニュース集 – メルケル首相 初めての記者会見
長い間、メルケル首相はコロナウイルスの感染蔓延に際して、国民に語ろうとはしなかった。日々の感染状況の発表はロバートコッホ研究所が行い、感染対策決定は危機対策本部に任せ、国民に告知する必要があれば厚生大臣、あるいは内務大臣が行ってきた。
これはメルケル流の政治問題に対する独特の対処方法で、事態が十分に発展して情勢が明らかになってから声明を出す。早めに「東京オリンピックは、当初の決定通り7月に行う。」なんて声明を出し、結局、延期になった際には、「通常通り行うって、言ったじゃないか。」と、上げ足を取られる事を避けるためだ。
「もうコロナウイルスの蔓延は避けられない。」とブリーフィングを受けた首相は、ようやく3月12日に初めての記者会見に臨んだ。この会見でメルケル首相は、「今後、国民の60~70%が感染する事が予想される。今、大事なことは感染の拡大を遅らせて、医療崩壊を防ぎ、ワクチンを製造する時間を稼ぐこと。」と、政府の戦略を述べた。
参照 : bundesregierung.de
正直過ぎた?
個人的には政府の努力の方向がよくわかり、言葉を濁すばかりの日本の閣僚の会見に比べて、とても印象が良かった。もっともドイツ国内ではあまり評判がよくなかった。「あまりに正直に言い過ぎた。」というのだ。
国民はただでもパニックになりやすい。その国民に、「今後、国民の60~70%が感染する。」と正直に明言すると、「あなたも感染しますよ。」と言っているもの。首相の会見は、「国民に安心感を与えず、不安にさせた。」とマイナス評価されている。
日本風の「東京オリンピックは完全な形で行う。」という意味不明な言い方の方が、評論家には好まれるのだろうか?
コロナウイルス 関連ニュース集 – メルケル首相 国民に語る
「人が集まる場所は避けるように。」との政府の要請にもかかわらず、これに従う人は少なかった。結果、感染者の数が1日数千人単位で上昇を始めた。病院は新しい隔離病棟を準備、看護師に人工呼吸器の使い方を教え、引退した医師を職場に呼び戻したが、感染の速度が鈍らない限り、ドイツの医療体制が崩壊するのも時間の問題だ。
この危機の場面でメルケル首相はテレビを使って直接、国民に呼びかけた。「今、大変険しい状況にある。第二次大戦後、これほどドイツが厳しい状況に置かれたことはなかった。この状況では一人一人が共同体のメンバーとして、責任のある行動を取ることが欠かせない。」と語った。
ドイツ人がこれでおとなしく言われた通り、家に留まっていると思ったら、大間違い。
ドイツは個人主義
日本は集団思考の文化。集団から逸脱した行動は言うに及ばず、個人主義的な思想をもつことさえ、悪とされている。ところがドイツは日本では悪とされている個人主義の国。「折角、長い冬が終わったのに、家に閉じ籠っていろなんて、冗談だわ。」と、大挙して外出した。
天気がよくなると、アイス屋の前にはマスクもしてない長蛇の列ができた。若い人は学校が休みになっている事を利用して、「俺たちには関係ない!」と、コロナパーテイーを開催、数百人が集まった。結果、警察が何度も出動してコロナパーテイーを強制解散させなければならなかった。
参照 : www.baden.fm
結果、1日の感染者の数が2000~3000人も上昇した。これがこそがイタリアでコロナウイルスが蔓延、医療システムが崩壊して、1日に800人も死者が出た原因だった。市民は罰金を課さないと、個人の自由を制限する制限には従わないのだ。
外出制限令
これではドイツの医療体制が崩壊するのは、時間の問題だ。とりわけ1日で感染者が1000人近く増えたバーデン ヴュルテンベルク州では、州知事のクレッチマン知事は怒りをぶちまけた。「若者が規制に従わないなら、全土で外出禁止令を出すぞ。」と脅した。
参照 : bnn.de
そしてドイツの大都市では初めてフライブルクに外出制限令を出した。数日後、これにコンスタンツが続いた。
バイエルン州全土に外出制限発令!
このような緊急事態になると、一番動きが早いのがバイエルン州だ。3月21日、州として初めてバイエルン州は全土に外出制限を発令した。
この禁止令は2週間の期限付き。今後2週間は、まだホームオフィスを導入していない場合は出勤、それに食料品や医療品など生活に必要な物資のお買い物、医療所の訪問、一人で行う散歩、ジョギングは許される。禁止されるのは一緒に住んでるパートナー以外の人物と会うこと。レストラン、ホームセンター、バーの営業は禁止だ。
ドイツ全土で外出制限令?
バイエルン州での思い切った措置に触発されたのか、勇気づけられたのか、幾つかの地方自治体がこの外出制限を次々に導入した。ここで連邦制の問題点が浮き上がった。例えばバイエルンでは二人以上の集まりは禁止だが、他の州では3人、4人あるいは6人以上の集まりは禁止と、ばらばら。
又、人口1000人あたりの感染者数では、バーデン ヴュルテンベルク州に追い越されたが、これまでトップの座を守ってきたハンブルクでは、レストランなど通常通り、営業中。これでは感染拡大が防げるわけがない。
これが連邦制の問題点。州に決定権があり、中央政府からの指図にはアレルギー症状を出して反対する。危機に際して、国としてまとまった施策が取れない。そこで3月22日に各州の州知事が集まって、連携の取れた政策を協議する。週末の感染者の数の上昇次第では、ドイツ全土でバイエルン州同様の外出制限がかかる可能性もある。
外出制限 / Ausgangbeschränkung と 外出禁止令 /Ausgangsperre
用語の説明もしておこう。フランスやイタリアで出されているのは、外出禁止令 / Ausgangsperre 。外出は基本禁止されており、散歩、買い出しでも許可が必要になる。今、バイエルン州で出ているのは外出制限 /Ausgangbeschränkung で、必要のない外出が制限されている(だけ)。
一緒くたにして、「ドイツでも外出禁止令が発令!」と書いている人が多いので、ご注意ください。
ホームオフィス と テレワーク
日本では家で働く事をテレワーク / Telework と呼ばれています。聞いた瞬間にかなり違和感があり、「なんで在宅勤務がテレワークなの?」と聞くも、回答できる人は皆無。意味の分からない言葉を聞いても、その意味を調べず、そのまま自分の語彙に取り入れる方が多いようです。
これがさまざま都市伝説やフェイクニュースを生む温床です。皆さん、「おかしいな?」と思ったら、調べてみましょう。
テレワークとは、勤務先の会社を離れて( tele )、外で働く事を指します。在宅勤務の正しい英語は、ホームオフィスです。コレは世界共通で、ドイツでも「ホームオフィス」で通じます。何故か日本だけはテレワーク。
対人コンタクト 制限令 – コロナウイルス 関連ニュース集
3月22日、メルケル首相と各州の州知事がテレビ会議を開き、全国で統一したコロナウイルス対策を協議、以下の対人コンタクト制限令が決定されました。
- 人とのコンタクトは(身内の人間を除き)自粛すべし
- (身内の人間を除き)対人とは1.5mの距離を置くべし
- 公共場で(身内の人間を除き)三人人以上が集まるのは禁止
- 仕事、お買い物、散歩、医療所の訪問など、絶対に必要な外出は今後も可
- 公共の場、私有地を問わず、グループで祝うのは禁止 – 違反した者には制裁が課される
- レストラン営業停止令が発令 – デリバリーは可。
- 理髪店、マッサージ店、入れ墨店、ネイル店などは営業停止令が発令
この対人コンタクト禁止令は3月23日(月曜日)から施行され、その期間は(とりあえず)オスターン(イースター)のお休みが終わるまで(4月13日まで)とされています。
対人コンタクト制限令 延長される
対人コンタクト制限令は国民に大きな賛同をもって受け入れられ、政府与党の支持率が上昇するなどの余剰効果をおよぼしました。その一方で右翼政党は支持率を大きく落としています。
かって(故)シュミット首相は、”In der Krise teigt sich der Charakter.”(危機の際に真価が試される。)と言っており、まさにそのような結果になっています。
制限令の発令後から4週間後、ウイルス再生率 / 感染率は以前の4から0.7にまで減少、厚生大臣は「ウイルス感染がコントロールできるようになった。」と、安堵の声明を出しました。
にもかかわらず、4月19日、政府は上述の対人コンタクト制限令を5月3日まで延長すると発表しました。
どうして欧州ではコロナウイルスが急速に広まったの?
「どうして欧州でコロナウイルスが急速に広まったの?」という素朴な疑問をよく聞きます。それは単純に地理的な理由にもよります。
すでに1月から日本では、中国国内でのコロナウイス感染が話題になっていました。日本国内でも感染者が出始めていたので、医療機関は言うに及ばず、市民の間でも意識が高かったです。肺炎を起こした人がいると、数こそ少ないですが、 PCR 検査が行われ、感染者、及び濃厚接触者の隔離が行われました。
中国で春節のお休みになると、日本や韓国ほどでではないですが、欧州にも十分な数のコロナウイルスに感染した中国人観光客がやってきました。しかし「コロナウイルスはアジアの問題。」と長く考えていた為、PCR テストの数は十分にあったのに、テストをしなかったんです。
北イタリアには中国人が多く住んでいることもあり、まずは北イタリアでコロナウイルスが急速に広まりました。
コロナウイルス拡散機 – カーニバル
イタリアでやっとPCR テストが始まり、感染者が見つかります。この時点ですでに集団感染が発生しており、実際には数百の感染者がいたと考えられています。しかし確認された感染者の数が少ない為、注意勧告も出されず、イタリア人はこれまで通りの生活を送り、一気に感染が広まりました。
数千の感染者が見つかっても、典型的なラテン系のあっけらかんとした性格からか、習慣を変えるなど考えもしませんでした。こうしてコロナウイルスはさらに蔓延、政府が北イタリアの村を隔離した頃には、すでに感染者は隔離された地域外に広がっていました。
ここでキリスト教文化に欠かせないカーニバルが開催されます。ヴェニスのカーニバルは有名なので、欧州各地からカーニバルにやってきた観光客が感染、これを故国に持ち帰ります。すると感染者は故郷のカーニバルに参加、一気にコロナウイルスが欧州中に拡散しました。
いい例がドイツの片田舎、ハインスベルクという誰も知らないベルギー国境の街。イタリア帰りの感染者がカーニバルに参加して、集団完成が発生。現時点で916人もの感染者が確認されています。この数は密閉空間のダイヤモンド プリンセンスの感染者を上回るので、カーニバルがどれだけコロナウイルス拡散機として絶大な効果を出しか、わかると思います。
致命的 EU 対処の遅れ
この時点で EU が国境を閉鎖、外出禁止令を出していれば、感染の爆発はまだ抑えられていたかもしれません。しかしイタリアを除く各国の首脳はまだ、「コロナウイルスはアジアの問題。」と考えており、市民の生活、行動を制限する措置を敬遠。
実際ドイツでも3月の初旬まで、競技場で数千の観客を入れてサッカーが開催されていました。カーニバルの教訓から、何も学んでいませんでした。こうしてドイツ全土で集中感染が発生、わずか半月ほどでドイツにおける感染者は2万人に達しました。
EU 委員長のフォン デア ライン女史はコロナウイルスを過小評価した、すなわち 「コロナウイルスはアジアの問題。」と考えていたことを認め、EU への入国を今後30日制限すると発表した。
参照 : rp-online.de
欧州が最悪の感染地域となった今、この措置でどれだけウイルスの蔓延を抑える効果があるのだろう?
コロナウイルス 関連ニュース集 – 欧州中央銀行 / ECB
日本の日銀に当たるのが、欧州中央銀行 / ECB でフランクフルトの高層ビルに本拠を置く。2019年まではイタリア人のドラギ総裁が就任しており、2008年のユーロ危機ではユーロを救った立役者だ。ドイツ政府は氏の退任後、メダルまで贈ってその仕事ぶりに感謝している。
ユーロ危機の際、ギリシャは言わずもがな、スペイン、ポルトガルに続き、イタリアの国債まで利率が急上昇して、ユーロは崩壊する危機に直面した。
何故なの?
イタリアは EU でドイツ、フランスに次ぐ「経済大国」だ。ギリシャ、ポルトガル、それにスペインならまだECBが導入した EU 救済傘/ EU-Rettungschrim で救済できるが、イタリアまで経済破綻すると大き過ぎて、支える金がないのだ。
Whatever it takes
この危機的な状況でドラギ総裁は、「(ユーロを救うためなら)何でもする。/ Whatever it takes.」と語った。このセリフが利いた。総裁の会見後、イタリア国債の利率がゆっくりと、しかし着実に下がり始めた。その後、総裁はマイナス金利を導入、ドイツ人の政敵に変身したが、それでも当時の功績だけは忘れていない。
ヘリコプター金 / Helikoptergeld
もうひとつ、最近よく使われる有名なセリフがあるので紹介しておこう。それはヘリコプター金 / Helikoptergeld だ。これは米国の前々バーナンキー連邦銀行総裁が議会での証言の際、「金融危機が起こったら、ヘリコプターに金を積み、これを(市民に)ばら撒くことも辞さない。」と、その覚悟を示すために使った言葉だ。
とても印象的であった為、市民にお金をばら撒く政策をヘリコプター金と言うようになった。
中央銀行ラガート総裁
当初、ドイツはドラギ総裁の後釜を狙っていた。しかしドイツ連邦銀行総裁のヴァイドマン氏は、マイナス金利反対派の旗手だ。マイナス金利の恩恵を受けているイタリアで、とりわけ評判が悪い。このためヴァイドマン氏の中央銀行総裁就任は難しいというのが、大方の見方だった。
そこでメルケル首相は中央銀行総裁の地位ではなく、EU委員長の座を目指す方向転換をした。その結果、中央銀行総裁に就任したのは、フランス人のラガート女史。IWF の長官としてギリシャに厳しい節約を課すなど、ドイツ人が好きな倹約財政政策派だったので、ドイツも納得した。
そのラガート総裁は就任1年足らずで、ECB のコロナウイルス対策を発表する晴れの舞台が与えられた。
ECB は水鉄砲
株価が1日で10%以上も値を下げ、株式市場は大混乱。大規模な景気後退がやってると(珍しく)経済アナリストが口を揃えて警告していた。株式市場の目はドラギ総裁の、”Whatever it takes”効果を期待していた。すると総裁は、
- 年末までに1200億ユーロ(10兆円ほど)の国債を買う
- 銀行への低金利の長期融資
参照 : manager-magazin.de
を発表した。この内容を聞いた株式市場は、下げ幅をさらに拡大した。米国の連邦銀行はすべての大砲からありったけの弾薬を打ちまくっているのに、「ECBは水鉄砲で対応した。」と散々だった。これよりもさらにマズかったのが、記者会見でのラガート総裁の回答だった。
中央銀行の仕事ではない。
記者会見である記者が、「ギリシャの国債の利率があがっているが、中央銀行はどう見ているか?」と尋ねると、ラガート総裁は、「それは中央銀行の仕事ではない。」と回答。この回答により 「ECB はギリシャを見放した。」と解釈され、ギリシャの国債はさらに利率が高まった。
ドラギ総裁の”Whatever it takes”を期待していた市場関係者は肩透かしをくらい、ECB 内部でもラガート総裁が危機に対処できる能力を持っているのか、女史の能力が疑われ始めた。
中央銀行バズーカ
ECB の水鉄砲から1週間後の3月19日、それも真夜中の23時48分、ラガート総裁は中央銀行の国債購入枠に7500億ユーロを追加すると発表した。
参照 : welt.de
この追加プログラムにより、中央銀行の国債購入プログラムは(ほぼ)1ビリオンユーロ(80兆円)に達する、かってない大規模の国債購入プログラムとなった。ラガート総裁はこの決断を、「大変な時期には大変な決断が必要だ。」と説明、少しドラギ調を漂わせた。
このプログラムではギリシャの国債も大量に購入されることになり、ギリシャの国債の利率は下降に転じた。
ラガート総裁、時間はかかったが、総裁としての貫禄を出してきた。素直に側近の意見を聞き入れて、自身の決定を覆すだけの柔軟性も持っているのは、大いに評価できる。
100兆円!!ドイツの景気テコ入れ & 救済対策
ドイツ政府はコロナウイルの影響で、経済成長率が5%落ち込むと予想している。2019年のドイツの経済成長率が0.6%だった事を考えれば、マイナス5%近い大不況になる。これに対処する為、ドイツ政府は大規模な景気てこ入れ & 救済対策を考えている
その財政出動枠は、驚くなかれ1兆2000億ユーロ(100兆円)に上る。
参照 : handelsblatt.com
この大規模な財政出動の大まかな中身は以下の通り。
- ルフトハンザなど、とりわけコロナウイルスの影響が大きい大企業を一時国営化、あるいは株式を取得して支援する
- 金めぐりが厳しくなった企業を救うため、政府の投資信託銀行 KfW が上限なしの融資を提供する
- 休業により収入のない個人、中小企業、個人事業主を救済する。
ただ100兆円ものお金はドイツと言えど、ポケットから出せる額ではない。補正予算 / Nachtragshaushalt を組む必要があるが、その額は100兆円ではなく、1500億ユーロ(12.5兆円)。残りは「ポケットから出せる。」というのだから凄い。
参照 : tagesschau.de
ただ、補正予算を組むのは、毎年補正予算を組んでいる日本と違って、ドイツではそう簡単には行かない。
借金ブレーキ法 / Schuldenbremse
ドイツはここ5~6年、国家予算で赤字を出していない珍しい国。先進国ではシンガポールかドイツくらいだ。もっともここに来るまでは長い道のりで、21世紀初頭、ドイツの国家財政は東ドイツ併合時の寛大な財政出動で真っ赤だった。
「ドイツ人はケチ」というのは、大方の人が一致している見方だ。そのドイツ人にとって今、借金をして、その清算をわが子にさせるというのは我慢ならなかった。そこでドイツ政府が国会で決議して憲法に書き込んだのが、借金ブレーキ法 / Schuldenbremse だ。
この法令により政府が国民のご機嫌を取るために、借金財政を行うことを禁じた。もっとも憲法で規定してからといって、景気がよくなるわけではない。ようやく2015年になって借金のない国会予算の成立に成功、以来、歳出よりも国の税収入の方が多いという、日本では考えられない状況が続いた。
例外措置の発動
あれから5年。ドイツには十分な財政的な余力があり、超大型の財政出動にも関わらず、2021年の国会予算は新たな借金をしなくてもできるという。
参照 : fr.de
もっとも補正予算を組むと、いったん、借金ブレーキで定められた借金の枠組みを超えてしまう。
幸い借金ブレーキ法には、「異常な状況下では、例外措置も可能。」とある。この例外措置を発動するには、国会にて2/3の賛成票にて可決される必要がある。しかしながらコロナウイルスの影響で二人以上の集会が禁止されている。
今、どうやって国会を開いて例外措置を合法的に発動できるか、調整中だ。
芸術家、小規模事業主、個人事業主救済案
個人事業主、及び従業員10名までの小規模事業主の救済案は500億ユーロ(4.1兆円)の予算が取られている。内、300億ユーロは融資に、200億ユーロは補助金になる。例えば上述の対人コンタクト禁止令により、マッサージサロン、ネイルサロンが経営できない場合、補助金を申請できる。
その額は5名までの従業員がいる場合9000ユーロまで!!10名までの従業員では1万5000ユーロまで!支払い額は去年の確定申告で出した金額に左右されるが、日本と違い融資ではなく、補助金であること。すなわち返す必要なし!Huraaa!
日本と違うのはそれだけはない。日本では融資を申し込んでも、払われるのは7月から。これでは融資が出る間に大半の事業主は破産している。ドイツでは即刻救済 / Soforthilfe なので、一か月以内に支払われる。例外はホームオフィスで働けるケース。残念~。
又、対人コンタクト禁止令により収入がなくなると、最初に心配になるのが家賃の支払いだ。ドイツでは2か月連続で家賃が滞納した場合、大家は賃貸契約を解約できるとなっている。ドイツ政府はこの民法の規定を時限付きで停止、コロナウイルスにより外出や仕事が制限されている間は、賃貸契約の解約を禁止する方向で最終調整に入っている。
補助金受付開始!
法案は国会で議決され、3月30日から補助金の受付を開始しました。補助金を支払うのは政府の投資銀行 / Investitionsbank ですので、申請もここにあげます。投資銀行はそれぞれに州が運営していますので、例えばバイエルン州に住んでいる方は、”Bayern Corona Soforthilfe”のキーワードでググってみましょう。
すると以下のような検索が出てきます。
通常は一番上に出てくるのが、申請を上げる投資銀行です。
病院への補助金
コロナウイルス感染の最前線で戦っている病院には、感染が蔓延する前から(お金の儲かる)手術を延期するように指示が出ていた。感染が蔓延した際に、重症患者を収容できるベットを確保するためだ。しかしベットを用意しただけでは、効果的な治療はできない。
コロナウイルス感染者(重傷者)の効果的な治療には、人工呼吸器が欠かせない。しかし人工呼吸器の導入は高いっ!お金の儲かる手術を延期している中での投資は、病院の経済状況を悪化させる。そこでドイツ政府は病院への補助金として78億ユーロの予算を救済案に盛り込んでいる。
具体的に言えば、人口呼吸器付きのベットをひとつ増やすと、5万ユーロ(6百万円+)の補助金が支払われる。こうした処置により病院が積極的に人口呼吸器付きのベットと看護師を準備するように、動機づけしている。日本の政府も掛け声だけではなく、是非、お金も出してもらいたい。
コロナウイルス 関連ニュース集 【最新版】ワクチン
コロナウイルスの終焉宣言には、コロナウイルスの抗体、すなわちワクチンを開発することが欠かせません。世界中の薬品会社にとって、これは一世一代のチャンス。金銭的なリターンもさることながら、世界で最初にワクチンを開発すれば、知名度は一気に上昇します。
WHO によると世界中で48の研究所、製薬会社でワクチン製造のプロジェクトが始まっています。
参照 : fr.de
ドイツでも複数の製薬会社がワクチンの製造の研究を進めていますが、一番大きなニュースになったのは、テュービンゲンにあるバイオテクノロジー製薬会社 ”CureVac”です。
米国のトランプ大統領が、同社のワクチンの研究成果を米国の製薬会社に売り渡すことを要求。目玉の飛び出るような大金がオファーされたのですが、「開発されたワクチンは米国でのみ使用できる。」という条件だったので、同社はオファーを蹴りました。
参照 : welt.de
同社の発表によると夏にはワクチンの臨床試験に入り、秋にはワクチンの大量生産に入れるとの事。その数は1億本!