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2年拘束する契約は違法なり!- 消費者保護法改正(案)

投稿日:2019年10月17日 更新日:

2年拘束する契約は違法なり!- 消費者保護法改正(案)

今回はドイツに滞在すると、避けては通れない契約について。

世界中どこの軍隊でも、「命令は命令だ。」という言い回しがあります。これが民間の生活になると、「契約は契約だ。」という言い回しがあります。「契約したからには、守らなければならない。」というわけです。ところが日本は、契約を破る習慣が多い国。

この為、「契約なんて、ごねれば解約できる。」と誤解されている方も多いです。日本ではそうかもしれませんが、ドイツではそうはいきません。契約したからには、契約を守る義務があるのが西欧の常識。しかしその契約の中には、消費者を2年間も束縛するものが多いのが実情です。

消費庁は、「これは消費者に一方的な負担を強いるもの。」として、消費者関連の民法改正案を準備。今後、この法案が閣議決定され、下院、上院で可決されて法律となり、施行されるのは2020年になってから。でもその前に、どんな契約内容が禁止になるのか、紹介しておきたいと思います。

契約内容の確認をすべし!

ドイツで契約書にサインされる方、そこに書かれている内容がわからないのに、サインしては駄目です!トラブルになって当店までご相談いただくケースでは、内容を確認もしないでサインしているケースが圧倒的に多いです。

中にはドイツ語がわかる人でも法律を知らず、「これ合法なのかな?」と、チェックしないでサインしているケースもあります。

契約内容がわからない場合は、ドイツ語が読めて最低限度の法律の知識がある人に読んでもらってから、サインしましょう。幸いドイツでは違法な条項、例えば賃貸契約に「キッチンのリノベーションは4年おきに行うべし。」と書かれており、これにサインしていても、「違法なので、サインしていても無効。」となります。

しかしすべてのケースで契約が無効になるわけではありません。

雇用契約の落とし穴

「知らなかった!」が効かないのは雇用契約。会社側、とりわけ日本企業は人件費を節約するため、さまざまなトリックを雇用契約書に盛り込みます。「残業代は給与に込みとする。」などという項目を加えている企業の多いこと。これにサインすると、残業をすることに同意した上、それもただ働き!に同意したことになります。

そんな契約は嫌ですよね。ですから就職の面接で残業はあるのか、残業がある場合はちゃんとお給料が支払われることを交渉しておきましょう。そして雇用契約書にサインをする前に、この点がちゃんと守られているのかチェックすること。これはドイツでの社会人のA,B,C です。

ドイツでの残業の賃金は、べらぼうに高いです。日本企業の悪式い慣習、「週末にちょっと出てくれ。」をやると、会社側は基本給に50%上増しした給与を払う義務があります。これに税金+社会補償費がさらに加算されるので、会社側にとって通常の倍もの金を払う羽目に。

これは会社にとっても負担なので、残業代を払う雇用契約の場合、そのような残業は最小限度に抑えられます。逆に残業代はお給料に込みですと、それこそ日本のようにコキ使われます。また、「飯を奢ってチャラ。」にしようとするのが日本企業。

騙されてはいけません。飯に加えて、あなたには通常のお給料に50%上増しした給与をもらう権利があります。残業代が支払われる契約を結んでいれば。

消費者契約の落とし穴!自動更新

最近では日本でも増えてきましたが、ドイツの契約は通常、自動更新です。各種保険、インターネット、フィットネスクラブ、それに日本人がよく忘れるバーンカードなど、1年契約の場合は、自動で1年更新されます。これを避けるため、契約を結んだら、同時に解約しておくのはドイツ生活の常識です。

するとドイツでの契約に慣れていない方は、「契約を解約したら、今結んだ契約も解約になりませんか?」と心配されます。冒頭でも書いた通り、契約は契約です。一度結んだ契約は、解約できません。契約満期になるまでは!(注1)

解約できるのは、満期後の新契約のみ。「1年後にすればいいや。」なんて後回しにすると、絶対に忘れます。契約を結んだたら、すぐに満期後の契約を解約すること。それも口頭ではなく、書面で。

私自身、ちゃんと書面で契約を解約、相手から解約の確認を書面でもらっているのに、「契約が自動更新されました。」と通知が届いたことは、一度や二度ではありません。そんなときに口頭での解約では証拠がないので、自動更新になります。

ですから必ず、解約の通知を書面でもらうこと。やり方がわからない方は、当社でサポートいたします(有料)。

参照 : ドイツ生活サポート

ただし!多くの会社は解約を阻止するために、「自動更新を望まぬ場合は、契約満期の半年前(通常は3か月前)までに解約すること。」なんて条項を設けています。「あとで解約すればいいや。」と油断していて、「契約が自動更新されてしまいました!なんとかならんですか?」と、ご相談をいただきます。

何もできません。その場合は、諦めてください。現行の法律では。まさにこれが消費者に一方的な負担を強いるとして、民法が改正されることになりました。

2年拘束する契約は違法なり!- 消費者保護法改正(案)

保険会社からドイツ鉄道まで、この契約の自動更新で大きな儲けを出してきました。1年契約ならまだ我慢できますが、インターネット、携帯、それにフィットネスクラブは、2年契約するケースが多いです。しかし引っ越しでフィットネスクラブに通えない場合でも、2年間の支払い義務が発生していました。

経営する側にとっては、これは非常においしい商売です。2年契約になると(日本円で)10万円近い額になります。何もサービスを提供することなく、10万円もらえるのだから、こんなにおいしい商売はありません。消費者庁が、現在の制度に問題があると判断したのも、無理もありません。

2年拘束する契約は違法なり!

法律案では、今後、消費者を2年間も契約に束縛するのは違法となります。最長でも1年契約になるか、2年契約にする場合、途中での解約が認められるなど、消費者に解約の権利が認められることになりそうです。

一見すると消費者にとってうれしいですが、携帯会社、とりわけフィットネス スタジオなどは、とっくに運動をする気を無くした会員が払う会費で儲けてきました。今後、この分野での収入がなくなると、会員費が上昇するのは避けられないとみられています。

その一方で、ちゃんとジムを利用する人が会費を払い、通わなくなった人は支払いから解放されるので、公平なシステムではありますが。

消費者保護 民法改正(案) – 契約の自動更新

契約の自動更新のシステムは、今後も残ることになりそうです。問題は解約を忘れて、契約がさらに1年間、自動で更新されてしまうケース。このケースでも消費者庁は改善を提案。「解約を忘れてしまった場合、自動更新は3か月まで。」という方向で調整に入ってます。

さらに、「契約の解約は、満期の3か月前までに書面にて。」と書かれていた契約の問題点も指摘されました。ここでは、「解約通知は、満期の1か月前までの通知で十分。」という形になりそうです。すなわち契約を忘れて契約が自動更新になった場合、3か月間、お金を払えば再び解約が可能になるわけです。

今度は解約を忘れないように!さもないとまた3か月契約が延長されますよ!

消費者保護 民法改正(案) – 電話セールスの厳格化

この機会に消費者庁は、電話でのセールスの厳格化も盛り込む予定です。日本と違い、ドイツでは電話のセールスは禁止されています。唯一、「消費者がセールス電話を承諾した場合のみ、可。」となっています。しかし代理店などを使い、セールス電話をしてくる会社が多いのが実情です。

電話口でうっかり(騙されて)承諾してしまうケースもあるので、消費者に再考する機会が与えられることになりまります。電話セールスの契約の成立には、会社側が契約を書面で消費者に郵送、消費者がこれにサインした場合のみ、有効になります。

だから電話でうっかり承諾して契約書が届いても、これをゴミ箱に入れても問題ありません。

参照 : pcgameshardware.de

ただし元々、違法なセールス電話をしてくる業者が、この法律を守るかどうか、大きな疑問が残ります。サインしていないのに勝手に「契約成立」とするケースも生じるでしょうが、この場合は違法なので、契約は無効です。

とは言っても、何もしないのでは、何もおきません。契約書にサインしていないのに、契約成立とされた場合にとるべき行動は以下の通り、

  • 契約を破棄(解約)する手紙を書き留めで送る
  • 警察に詐欺の届け出をする
  • “Bundesnetzagentur”に報告する

例え正式に契約していなくても、相手が契約していると主張する場合は、解約の意思表示をすることが必要です。この辺の手紙の微妙な表現は、ドイツ語がかなりできる人でないと無理。自分で間違った手紙を書くと支払い義務が生じます。自身のない方は、消費者センターまで相談に行きましょう。

このような商売は違法ですから、警察に証拠書類を持っていき、詐欺で告発するのをお忘れなく。

最後の”Bundesnetzagentur”は、違法な電話セールスを取り締まる官庁です(他の仕事もしています。)ここで苦情を上げると、政府機関が事実関係を調査、違法な行為があった場合は罰金を課し、最後には営業許可を取り消す権利も持っている機関です。

苦情はこちから

参照 : bundesnetzagentur.de

民法改正後、、

この改正案が大筋、今の内容で可決され法律になったとしても、施行されるのは2020年から。この為、「今年、2年契約しちゃったけど、来年には解約ができちゃう!」ものではありません。契約は契約です。契約時に合法だった契約は、法律が変わっても、無効にはなりません。

どういう意味ですか?

新しい法律が利くのは、新しい法律の施行後に契約された場合です。古い契約には効きません。2019年に2年間の契約をされた場合、2年間、契約を遵守する必要があります。これが誤って4年間にならないように、今のうちから解約しておきましょう。

2020年にドイツ留学される方は、すでに法律が改定されている筈です。

注1)
ドイツでは雇用契約、保険契約など、2週間以内であれば、理由を述べることなく、契約から辞退する権利を認められています。この2週間を超えたら、「契約は契約」となり解約は不可能です。

-ドイツの達人になる, 規則、法律

執筆者:

nishi

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