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ラインメタル 海上進出 駆逐艦製造元を買収!

投稿日:2025年10月1日 更新日:

ラインメタル 海上進出 駆逐艦製造元を買収!

ドイツ一の軍需産業 ラインメタル が遂に海軍事業にも進出。

海軍向けに駆逐艦や哨戒船を製造している造船所を買収した。

この買収によりラインメタルは、

  • zu Lande(陸)
  • zu Wasser(海)
  • in der Luft(空)
  • im Weltraum(宇宙)

のすべての分野に従事する防衛産業となる。

事の始まり

そもそもの事の始まりは、

「子供でも知っている」

ドイツのかっての大軍需産業

“ThyssenKrupp”(テュッセンクルップ)

の凋落から始まった。

クルップと言えばあのヒトラーが演説で

”Hart wie Kruppstahl”(クルップ鋼のように強靭で!)

と例える程、鉄鋼の代名詞。

そのクルップにはもうかっての面影はなく、慢性的な赤字に悩んでいる

軍産複合体 テユッセン クルップ 倒産は回避できる?

そのテュッセンクルップは数年前、

「金のなる木」

であった

「エレベーター事業」

を売却した。

 

ところがである。

入ってきた大金は定年退職した労働者の年金払いと、借金の返済で消えた。

残ったのは慢性赤字の会社。

そこで今度は、同社の海軍造船事業

“TKMS”

の分社化・上場という話になった。

参照 : TKMS

 

質問
売らないの?

 

防衛産業は国家機密を抱えているので、売れないんです。

ちなみに”TKMS”は先日ここで紹介した

独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争

で入札に参加したドイツ企業だ。

独 vs.日 オーストラリア海軍 駆逐艦 入札競争

仲違い

そこでテュッセンクルップは(前)信号政権に

「国が大株主になって欲しい。」

と持ち掛けた。

が、財務大臣が

家計は火の車。そんな金はない。」

と国の参与を拒否。

金の切れ目が縁の切れ目?信号政権破綻の危機

ここで

「上場の話」

を聞きつけたラインメタルのパッペルガー社長が、参入を持ち掛けた。

が、話し合いは

「物言い」

に終わった。

何しろラインメタルは今、

「飛ぶ鳥を落とす勢い」

の会社。

一方、テュッセンクルップは凋落が止まらず、身売りばかりしている会社。

立場が違い過ぎた。

威張り散らかすパッペルガー社長の言動に、テュッセンクルップのロペス社長は嫌悪感しか覚えなかった。

 

こうしてラインメタル社、厳密に言えばパッペルガー社長の野望、

「海軍事業にも進出して、BAE Systems に追いつく。」

は阻止された。

尚、TKMSの上場は2025年10月に予定されている。

参照 : TKMS上場

海軍造船事業の統合

鉄道分野で世界一の規模(売り上げ)を誇る中国の

“China Railway Rolling Stock Corporation”(略称 CRRC)

の裏には、共産党政権の政策があった。

分散していた鉄道事業を

「勅命」

で、一社にまとめたのだ。

その”CRRC”はドイツにも進出、ドイツで中国の電車が走る日も、そう遠い未来ではない。

日本でも川崎重工と三菱重工が

「交互に」

自衛隊の潜水艦を建造している。

これをひとつにまとめれば、生産コストがぐっと安くなるが、

「言うは易く行うは難し」

で、実現の見込みはない。

ドイツでも事情は似たり寄ったりだ。

今、ドイツの海軍へ装備品を納入している造船所は、

  1. TKMS
  2. Naval Vessels Lürssen
  3. Kieler German Naval Yards

の3社。

しかし黒字なのは、”Platzhirsch”(最大手)の”TKMS”だけ。

2番手、3番手は赤字。

できれば

「不良採算部門」

は手放したいが、国がそれを許さない。

しかし今回の”TKMS”の上場で、

「海軍事業の再編成」

が一気にテーマになった。

その可能性は2つ。

  1. ”TKMS”が小さな造船所を買収する
  2. 二位と三位の造船所が合併する

のどちらかだ。

ラインメタル 海上進出 駆逐艦製造元を買収!

と思っていたら”TKMS”に

「袖をフラれた」

ラインメタル社が、業界2位の”Naval Vessels Lürssen”の買収を発表した。

 

パッペルガー社長の野望、

「海軍事業にも進出して、BAE Systems に追いつく。」

が、これで現実のものとなる。

形の上では寡占局が買収を認可する必要があるが、

「海軍事業の再編成」

は不可欠で政治の後押しもあり、認可はほぼ確実。

“Naval Vessels Lürssen” とは?

その

“Naval Vessels Lürssen”(略称 NVL)はブレーメンに本拠を置く、造船所。

 

もっとも

  • ブレーメン
  • ハンブルク
  • ヴィルヘルムスハーフェン
  • クロアチア
  • オーストラリア
  • ブルガリア
  • ブルネイ

にある造船所の集合体で、

  1. 民間のヨット事業
  2. 海軍事業

の二分野を持っている。

今回、ラインメタル社が買収したのは、その海軍事業だ。

ラインメタルの狙い

駆逐艦や哨戒艇の建造事業の欠点は、注文が不定期にしか入ってこない事。

業界最大手であれば、

「5年先までキャパが空いていない。」

ので問題ないが、NVLの海軍事業は

“Long shot”(伸るか反るかは神次第)

なのだ。

しかしラインメタルはドイツ軍はおろか、世界中の軍隊に

「太いパイプ」

がある。

これを利用してNVLの船舶を売ることが容易になる。

さらに!

ウクライナ軍は独自に開発したドローン船で、ロシアの戦艦を沈めている。

結果、開戦時に海軍を失ったウクライナ軍が、黒海からロシア海軍を駆逐した。

この事実が示す通り、

安く生産できるドローン船で戦艦を沈めれば、その費用対効果はジャブリンで戦車を破壊する比ではない。

 

そしてNVLは8月末に、

「ドローン船の製造を始める。」

と発表したばかり。

ラインメタルはウクライナに大量の兵器を輸出しているので、ここでもコネがある。

ロシア海軍を標的に、開発したドローン船を実戦でテストできる強みがある。

ここでロシアの駆逐艦を沈めれば、世界中の海軍から注文が舞い込んでくる。

果たして?

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執筆者:

nishi

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