
ドイツ第二の私銀行 コメルツバンク 。
もう二年も敵対買収に抵抗してきた。
一時は、
「対抗措置が功を奏したか?」
と思われたが、敵の将は一枚上だった。
この夏が正念場になりそうだ。
そこでドイツの達人が
「一肌脱いで」
日本で報道される前に、その顛末を紹介しておきます。
この記事の目次
永遠の買収候補 コメルツバンク
“Commerzbank”(コメルツバンク)のあだ名は、永遠の買収候補。
何度も合併や買収が噂されたが、実現しなかった。
その
「流れ」
が一気に変わったのは2024年夏。
金欠に悩む最大株主(ドイツ政府)が、保有する株式の売却を決めた。
このチャンスを何年も待っていたイタリアのメガバンク、
“Uni Credit”(ウニ クレデイート)
の頭取
“Andrea Orcel”(アンドレア オセル氏)。
氏には、
「いざ鎌倉!」
の瞬間だった。
そんなことは
「つゆ知らぬ」
ウブなドイツ政府は、ご丁寧にもウニ クレデイートを競売にご招待した。
株式売買の方法は
「一番いいオファーをした銀行が株式を取得する。」
というオークション方式。
数度に分けてオークションが行われたがそのすべてのオークションで
「最高値」
をオファーしたのが、ウニ クレデイートだった。
一晩でコメルツバンクの株式の4.5%を取得した。
ウニ クレデイート 買収攻勢
オークションの結果が公表されると金融業界は、
「ウニ クレデイート、遂にコメルツバンク買収か?」
と大騒ぎ。
「時の人」
になったオセル氏、
「ドイツ政府とコメルツバンクの賛同がない限り、買収はない。」
と明言、市場の期待を一蹴した。
もっともその裏で、密かに
“Derivate”(賭け証券)
を使って持ち株を、11.5%まで大幅に増大させた。
あのマキャベリだってこの二枚舌には、感心したに違いない。
これを見た他の銀行も
「これは儲かるぞ!」
とコメルツバンク株を取得、その株価は
「16年の冬の時代」
を終え高騰した。
コメルツバンク 対抗措置
ここでコメルツバンクが反転攻勢に出た。
そもそも典型的な敵対買収の防御方法は、
というもの。
この方法の欠点は、株価が暴落して関係のない株主が大損をする事。
そしてコメルツバンクの株式を保有しているのは、機関投資家ではなく
“klein Aktionär”(小口投資家)
だった。
加えて株価が暴落すると結局は、敵対買収する側には
「もってこい。」
でもある。
そこでコメルツバンクは
- 自社株の買戻し
- 利益の100%を株主に還元
という常識では考えれられない方法を取った。
「どうせ買収されるなら、利益は敵ではなく、株主に還元する。」
というわけだ。
もっとも本当の目的は、
という、これまで見たこも聞いた事もない防御方法。
結果、コメルツバンクの株価は高騰、40ユーロに迫った。

敵対買収 お預け?
当時、ウニ クレデイートがオークションで
「最高値」
をオファーして株式を取得した時の価格は
「たったの」
12.50ユーロだった。
以来、株価はなんと300%もの上昇である。
流石のメインバンクのウニ クレデイートもこれで一時、
「買収資金難」
に陥った。
「さしものオセル氏も想定外の株価高騰で、敵対買収をあきらめたか?」
と市場が思い始めていたら、
コメルツバンク 俎板の上の鯛
40%近い自社株を取得されてしまうと、もう
「俎板の上の鯛」
の状態である。
煮るも焼くも、好き放題です。
てっきり市場は、
「コメルツ銀行の株式評価額は、ウニ クレデイート買収予算額をはるかに超えた。」
と思っていたのにブルドック並みのオセル氏、一度嚙みついた獲物は放さなかった。
コメルツバンクは、
「事前に知らせるこなく、株式を取得した。」
とウニ クレデイートを非難した。
しかし、どの世界に敵対買収で
「株を買ってもいいですか?」
と許しを請う人が居るだろう?
ここに至りドイツ政府内でも
「コメルツバンクの買収を避ける手段はないか?」
と机上演習が始まった。
そう、2年前に金欠で売り飛ばした株を、買い戻そうというのである。
なんという間抜けぶりだろう。
が、この案は机上演習の域を出なかった。
40ユーロ付近まで高騰したコメルツバンクの株価を大量に買い付ける大金は、金欠のドイツ政府にはなかったらです。
EZB ドイツ政府非難
この顛末を見ていた
”EZB”(欧州中央銀行)
はドイツ政府の
「二枚舌」
を非難した。
これまでは
「米国のメガバンクに対抗できる欧州のチャンピオンが必要だ。」
と度々言っておきながら、
「ドイツの銀行が買収されて、イタリアに欧州のチャンピオンが誕生するのは嫌だ。」
という身勝手ぶり。
この非難を聞いたオセル氏はさぞ、ご満悦だったに違いない。
ウニ クレデイート 王手!
2026年5月4日、ウニ クレデイートは特別株主総会を開いた。
ここでオセル氏はすでに41,81%を超える株式を取得済である事を明かした。
残るたったの8.2%を取得すれば、目標達成である。
もう王手をしたようなもの。
オセル氏は買収を成功裏に終えるため、67億ユーロの増資を株主に問い、株主がこの増資に同意した。
こうしてウニ クレデイートは
「豊富な資金源」
にバックアップされ、コメルツバンクに買収オファーを提示した。
しかしオファーは、現時点の株価よりも低い額だった。
コメルツバンクは当然、このオファーを
「魅力に欠ける。」
として蹴った。
オセル氏は
「買収協議に同意すれば、オファーを水増しする。」
と声明を出すも、頭取のオルロップ女史はウニ クレデイートとの買収協議を拒否。
だが、この拒否がいつまで続くだろう。
というのも株式会社の持ち主は株主である。
この為、
これをしないと背任行為になる。
明らかにオセル氏のほうが、
「てこの長い側」
に座っており、コメルツバンクは遅かれ早かれ、買収協議に同意せざるを得なくなる。